少女は庭を駆けまわっていた。
 まだ幼い少女は無邪気に母親の元に駆け寄って摘んだ花を渡しては、また奥庭園のほうへと向かう。

「もう、エリーヌったらあんなにはしゃいで」
「ふふ、可愛いじゃない。女の子だけど活発! うちも負けてないんだけどね」

 庭にあるテーブルにお茶とケーキがおかれており、優雅に一口食べてはおしゃべりが尽きない。
 夫たちは仕事なので、子供と母親で避暑地であるこの場所にやってきた。
 彼女たちは小さい頃にこの地域で住んでおり、エリーヌの母親であるフェリシーの実家で数日過ごすことになった。

「でも、アンリ様はもう見目麗しいし、それに頭脳明晰で次期国王と言われてるんでしょ?」
「そんなっ! あの子には無理よ!」

 実際に第一王子であるゼシフィードが生まれるまでは、あまりのアンリの優秀さに皆舌を巻いていた。
 今もそれは変わりなく、研究者と肩を並べるほどの知識を有している。
 まあ、彼にも悪戯好きで大人を困らせた過去もあるのだが……。

「あ、そういえばアンリ様は?」