「あなたの明るいところに憧れてた。二人で歩いていたらいつも最初に話しかけられるのはあなた。そんなあなたが、羨ましいと思った。私は人見知りだから、思ったことを口にできないし、よく誤解もされる。そんな素敵な人間じゃないのよ」
「そんな……あなたはみんなから憧れられて」
「ここに来て、アンリ様に出会って、私は救われた。段々、自分の感情を伝えられるようになった。あなたを恨んでいないことはない、しっかり恨むわ」
「ええ……わかってる」
「だけど、でも……憎み切れないのよ。あなたの魅力に気づいているから」
「──っ!!」
「だから、もう一度、昔のように笑ってほしい。無邪気に私の手をいつも引いてくれた、あなたのその笑顔をもう一度みたい」

 エリーヌは笑顔を見せながら笑って彼女の両手を握る。
 唇を噛んでロラは泣きながら、何度もありがとうと呟いた──



 しばらくエマニュエル邸にて療養したのち、ロラは彼女の祖母の領地にて静養することとなった。
 二人はまた再会を願って、手を振った。

 ロラを見送ったエリーヌは、その足で研究室へと向かう。
 するとなにやら様子のおかしい夫の姿があった。