嗚咽まじりに涙を流す彼女は、ベッドに自分の顔を伏せて何度も謝罪をする。
 まるで呪いの呪文のように繰り返されるそれは、彼女の心の崩壊が近いことを示していた。

(ロラを許すことはできない、でも、もう一度やり直してほしい。それで、また……)

 エリーヌの脳内に昔遊んだ野原の光景が思い浮かぶ。
 おままごとをした幼少期、花で冠を作っていた時、一緒に街のカフェにいった思い出、それから──

 彼女の中であふれんばかりの楽しい思い出が広がっていく。
 最後に見た勝ち誇った顔の裏に隠された寂しそうな表情が、今再びエリーヌの記憶の底から呼び出される。

(あなたも苦しんだの?)

 そっと手を握ってみると、ロラは勢いよくエリーヌに抱き着いた。

「大好きだったの! ゼシフィード様が! 羨ましかった!! 二人が! あなたが!!」
「うん」
「誰からも一番に愛されるあなたが、羨ましくて羨ましくて! 私も愛されたいと願ってしまった……私は愛されるべき人間ではないのに」
「それは違うわ」

 エリーヌはそっとロラの髪をなでて、顔を見つめる。