「では、これではどうか?」
「──っ! そ、それは王族第一級証……」

(第一級……!?)

 それは王族内の身分で最も上である国王と王妃に次ぐ身分証だった。
 アンリは若い頃の才覚、実績を評価されてその地位にいた。

「申し訳ございません!」

 衛兵は見るのは初めてであっただろう王族証に思わず後ずさる。

「さあ、ロラの牢屋を開けてくれるね?」
「も、もちろんでございます!」

(す、すごい……)

「ほら、行くよ」

 ぼうっとしてしまったエリーヌの手を引いてロラのもとに向かった。


「ロラっ!!」
「エ……エリーヌ……?」

 髪は乱れ、身体は痩せこけてその目はようやく光を受けている。
 その身体を支えてエリーヌは抱きしめた。

「ロラ、あなたに言いたいことも聞きたいこともある! でも、ここから逃げましょう。ゼシフィード様から」
「でも……」
「私はもう一度あなたときちんと話したい! 話させてほしい!」
「──っ!!」

 ロラはそっとエリーヌの頬に手をあてると、ふっと笑った。

「変わったわね、あなた」


 ロラを地下室から救出した二人はエマニュエル邸へと急ぎ戻った──