口元に手をあてて笑いながら、エリーヌは小さな声で呟いた。
「可愛いです、アンリ様」
「──っ!!」
彼女は嬉しそうに微笑んでいたが、野菜をとる手を止めて少しバツが悪そうに両手を膝に置いた。
(思わず口をついてしまったけど、よく考えたら男の人が可愛いと言われて喜ばないわよね)
「ごめんなさ……」
素直に謝ろうと夫に身体を向けて頭を下げようとした時、テーブルの向かいから声が響く。
「そうですよね! 可愛いですよね!!」
「「え?」」
思わず夫婦揃って声の主を見た。
その彼は自らの兄を敬愛する気持ちと共に、いやむしろそれ以上にどうやら愛らしいという気持ちを持っていたらしく、なんとも揚々と話し出した。
「そうなんですよ! 兄さんは可愛いんです!! 素直に言えなくて不器用で、それでいて優しくて、でもやっぱり不器用で……!」
「お、おい、ルイス……」
「ルイスさん……?」
「本に夢中になりすぎて壁にぶつかったりすることも可愛いし、社交界の大事な挨拶の時に限って緊張で噛んだり、それに動物が好きなのに、いつも逃げられて落ち込んでるところとか……もう可愛くて可愛くて!」
「可愛いです、アンリ様」
「──っ!!」
彼女は嬉しそうに微笑んでいたが、野菜をとる手を止めて少しバツが悪そうに両手を膝に置いた。
(思わず口をついてしまったけど、よく考えたら男の人が可愛いと言われて喜ばないわよね)
「ごめんなさ……」
素直に謝ろうと夫に身体を向けて頭を下げようとした時、テーブルの向かいから声が響く。
「そうですよね! 可愛いですよね!!」
「「え?」」
思わず夫婦揃って声の主を見た。
その彼は自らの兄を敬愛する気持ちと共に、いやむしろそれ以上にどうやら愛らしいという気持ちを持っていたらしく、なんとも揚々と話し出した。
「そうなんですよ! 兄さんは可愛いんです!! 素直に言えなくて不器用で、それでいて優しくて、でもやっぱり不器用で……!」
「お、おい、ルイス……」
「ルイスさん……?」
「本に夢中になりすぎて壁にぶつかったりすることも可愛いし、社交界の大事な挨拶の時に限って緊張で噛んだり、それに動物が好きなのに、いつも逃げられて落ち込んでるところとか……もう可愛くて可愛くて!」