「ル、ルイス……!」

 アンリの零した声を合図にエリーヌは駆け寄る。

「ルイスさん!」

 少し冷たくて震えている彼の手を掬いあげて、エリーヌは歓迎した。

「一緒に食べましょうか、朝食を」
「はい、お姉様!」

 ディルヴァールとロザリアは目を合わせて、珍しく微笑んで頷いた──



◆◇◆



 冷たい地下室の牢屋では、意識をもうろうとさせたロラの姿があった。
 小さな小窓から差し込むわずかな光を見つめているが、その瞳は酷く濁っている。

『お前の嫉妬深さは普通じゃない! お前は私にふさわしくない』
『ゼシフィード様っ!!! お願いです! 出してください!!』
『知らん! 私はエリーヌだけを愛しているんだ、お前なんぞ本当に愛すか!』

 ロラにとって絶望の言葉だけが降り注いだ。
 ゼシフィードに殴られて蹴られて血の滲んだ頬や腕──
 健康的だった身体もここでの牢屋生活のせいで一気に生気を失った。

「助けて……誰か……」

 彼女の脳内にふと親友であったエリーヌの笑顔がよみがえった。
 自分が裏切ったのだから、彼女が来るわけない。
 そう思い、涙を流した。