「ああ、陰影もそうだが、なんだか生き生きしている」
「ふふ、ありがとう。ねえ、覚えてる? この花」

 ルイスは小さな白い花を撫でてアンリの顔を伺う。
 彼は腕を組んで天井を眺めながら、う~んと唸って考える。

「もう、忘れたの!?」
「見たことあるような……?」
「ほら、兄さんが昔出会ったあの子がくれたって僕に見せてくれたじゃないか!」

 そこまで聞いて、アンリの中に少しずつ当時の記憶がよみがえってくる。


『ねえ~これ、おにわにあったのですが、アンリさま、よかったら』
『ああ、可愛いね。なんて花なんだい?』
『おなまえはわからなく……すみません』
『いいや、じゃあ次に会った時までに俺が調べておくよ』
『ほんとうですか!?』
『ああ、楽しみにしていてくれ……』


「──っ!!」

 鮮明に光景と声が呼び起こされて彼はぞくりとした。
 彼はにわかには信じがたく、思わずその場で硬直してしまう。

「兄さん?」
「ルイス、ありがとう。お前のおかげで大事な記憶を思い出せたよ」
「え?」

 そう、淡い青のドレスに身を包んだ金髪のその少女に言った最後の言葉を、アンリは思い出した。