「お前の言う通りだよ。俺は今までお前を縛ってた。守ってあげなくちゃいけないと思っていた。でも、もうそうじゃなかった」

 アンリは先程まで逸らしていた目をルイスに向ける。

「ルイス。お前はもう大人だ。いつまで閉じこもってる? いつまで傷ついた『ふり』をしている?」
「──っ!!」
「もうお前は自分の足で歩けるはずだ。怖がるな」

 彼は気づいた。
 兄は自分へ『勇気』を伝えようとしている。
 長年がんじがらめになっていた鎖を引きちぎって兄はここへと来た。
 ならば、今度その鎖を強固なものへと正しく繋ぎ直すのが……。

(僕の役割……兄さんの気持ちを受け取って、そして僕は)

 彼は黒く見える兄の瞳を見つめて頷いた。

「兄さん、ありがとう。守られるんじゃない。僕も自分の足で踏み出すよ。だから、今度は見守っていてほしい」
「ああ、俺が絶対にお前の目を治す。お前がもう一度、夢を見られるように」

 ルイスの頬に一筋の涙が光った。
 そうして兄弟は微笑み合った──


 ルイスの描く絵を見て、アンリは感心する。

「ほお、うまくなったな」
「本当!?」