そこまで言って自分で自分が矛盾していると思った。
ならなぜここから出ない。
どうしてここに居座って外へと出ないのか。
(怖がっているのは自分じゃないか、これじゃあまるで八つ当たりだ)
アンリはおもむろに立ち上がると、テーブルを回り込んで彼のもとへと向かった。
「──っ!」
ゆっくりと彼は自分を責める弟の背中をさする。
そして少しだけ遠慮がちに自分の身体を彼の身体に寄せた。
「俺が来たら、お前を苦しめると思った。お前から大切な全てを奪ったのは俺だから」
「ちがっ……!」
「でも、違った。怖かったんだよ、俺はお前に合うのが。だってお前は絶対に俺を責めない」
一層責めてくれたら楽なのに。
恨まれれば楽なのに。
だが、アンリは知っていた。
自分の弟はどんなに辛い目にあったとしても人のせいにしないことを──
彼のその優しさをわかっているからこそ、自分の罪がどこかに消えてしまうのではないかと怖かった。
アンリは左耳につけたピアスに手をやると、ダイヤの光るそれをはずしてテーブルに置く。
「兄さん?」