『──っ! ですが、エリーヌ様はずっとあなたを心配なさっておいでです』
『ふふ、この場所も教えなくていいわ。ねえ、ロザリア』
『はい、奥様』
『あの子は今、幸せ?』


 女はその言葉を思い出して、男に問いかける。

「エリーヌ様は、今、幸せなのでしょうか?」
「私にはわかりかねます」

 ふっと女は笑うと、男に再度問いかけた。

「フェリシー様のご実家には?」
「ええ、もう没落なさった後に王国によって整地された状態でした。クロエ様とフェリシー様がお茶をした場所もおそらくは。ただ、倉庫を整理していたら、これが出てきました」

 女は古い手紙のようなものを受け取る。
 宛名には「深愛なるクロエ」と書かれていた。

 もう劣化で封筒が薄くなり、中身がうっすらと見えた。

「──っ!!」
「気づきましたか?」
「はい、あのお二人がご結婚されたのは、運命だったのです」


『クロエへ

 先日はうちの家へ来てくれてありがとう。
 私も久々にエリーヌを連れて里帰りできてよかったわ!
 ああ、そうそう!
 エリーヌがこれをアンリ様に渡してほしいって。