男と女はいつも通りに柱に背を預けている。

「お二人は何事もありませんでしたか?」
「はい、エリーヌ様がルイス様に……」
「私も驚きました。ルイス様はエリーヌ様を受け入れたのですね」
「はい、食事をお持ちした際に少し話した感じだと、かなり信頼されている様子でした」
「さすがエリーヌ様でございますわ」
「あの方は自然と心をほぐす。そんな力があるように思います」

 女はちらりと見えない彼に視線を送ると、少し笑った。

「あなたも絆されたのでは?」
「言い方がよくないですね。私はアンリ様の側近として信頼しているだけで」
「わかりましたよ。でも、エリーヌ様といると癒されます。真っすぐででもどこか」
「ええ、そうですね。彼女はふと寂しそうな表情をお見せになる」

 女は胸元からあるものを取り出すと、それを愛おしそうに見つめながらいいました。

「……ありがとうございました」
「あの方はご息災でしたか?」
「はい、フェリシー様は少しほっそりなさっていましたが、だいぶ落ち着かれたようでした」
「療養を理由にブランシェ家を実質追い出された……彼女は恨んでいましたか?」