王宮から距離を置いているにしろ、王族関係者の公務やエマニュエル公爵としての仕事からは逃れられずアンリは翌日から仕事に忙殺されてしまう。
 さらに運の悪いことに王国が加盟している同盟国との三年に一度の会議である『四か国会談』の開催が来月に迫っており、その準備の仕事もあった。

 こうしたアンリの多忙さに立ち上がったのがエリーヌだった。
 公務や仕事をすぐに手伝うことは難しいため、夫妻に届く各お茶会や夜会の招待状の返事や管理を請け負うことにした。
 人付き合いがあまり得意ではない夫に代わり、角が立たぬようさらにアンリの負担も減らせるように日程も調整して手紙を書く。

 夜会に出席できない代わりに、自分が詫びの贈り物を相手に送るなどの気遣い。
 そしてお茶会には自ら進んで参加して、社交界の縁を切れぬように心掛けた。

 そんな彼女をさらにロザリアがサポートし、ディルヴァールがアンリを助けた。
 まさに一家総出で忙しさに立ち向かった。
 そうして出来たわずかな時間を毒草の研究にあてて、二人は寝る間も惜しんで作業を進めていく──

「エリーヌ、君は少し寝たほうがいい」