エリーヌの歌声を奪った原因と、アンリの弟であるルイスの目を奪った原因が同じ毒草であるかもしれないと判明してから数日後──
 アンリの研究室では机を二つ置き、その間にエリーヌとアンリは座っていた。

「アンリ様、この植物は細かく切ればよろしいでしょうか?」
「ああ、必ず手袋をつけてね」
「かしこまりました」

「エリーヌ、これを水に浸しておいてもらえるか?」
「はい、再び10分ほどで大丈夫でしょうか」
「いや、今度は1時間にしてほしい」
「かしこまりました」

 背中合わせで二人は何度か振り返って声をかけながら、作業を進めていく。
 アンリがいつものように研究を進めつつも、エリーヌがサポートできることをおこなっていた。
 まさに二人三脚で進めている『毒』の研究──

 エリーヌとアンリが例の毒草を特定した後、すぐにアンリは行動に出た。
 次の日に馬車を走らせてルイスが目を患った場所にもう一度向かったのだが、すでに当時と生態系が変わっていたのか一日がかりで探しても見つからなかった。