危なかった。
 咆哮と共に放たれた無差別な範囲攻撃はジェイル達一行を紙のように巻き上げ、辺り一面を木々の生えていない剝き出しの大地に変えてしまっていた。
 トモはその一撃を察知すると広範囲の防御術式を発動したが、トモ本人はまだしもジェイル達を完全に守ることはできなかった。
 近くにいたマリーとゲラルトはある程度効果はあったのか腹ばいから少しでも立ち上がろうとしているようだが、少し離れた位置にいたジェイルとキリアンは相当の深手のようでうめき声をあげているが動く様子がない。

(なんとか全員生存してる? どうしててこんな防御術式の効果薄いの? ひどい怪我……)

(マイスター。 申し訳ありません。 大気中のマナの干渉が強く既存の術式では広範囲をカバーしきれません。 現状彼らを守りながらの戦闘は不可能と思われます)

 魔法少女として戦う時、周りに被害が出ないように防御術式はかなり強固に組んだはずだが被害の大きさにトモはいらだっていた。
 その原因について即座に分析した相棒は暗に進言した。
 彼らを見捨てろ。そう言外に伝えたのだった。
 その言葉にトモは気づいていたが敢えて無視を決め込む。

(短期決戦でいくよ! 収束魔力砲で焼き尽くす!)

(マイスター。 残念ながらその案は何があっても却下です。周辺一帯が吹き飛びます)

「はぁ? それどうゆうこと?」

 酷い被害予想に、思わず日本語が漏れてしまう。

(マナの干渉が強いため、連鎖的に周囲のマナを取り込んで爆発を繰り返して超広範囲に飛び火します。逆に収束を抑えれば霧散することでしょう)

「いやいや……。 じゃあどうすりゃいいのよ! 言っとくけど見捨てて逃げるはなしだからね!」

(はぁ……。まったく、こう土壇場になると引かなくなるのは悪い癖ですね。 現状取れる策は一つだけです。近接で殴りあうだけですね。小手先の魔力弾はおそらく無駄です)

「OK。 ところでマジックコート出せる? ぼろぼろだったけど、修復はしてるんでしょ?」

(以前の物については修復不可でした。これも外部干渉されているようです。 ですが、新しいスーツがすでに作成済みです。これも干渉された形跡がありますが性能的には問題ないかと思われます)

「なーんか引っかかるなぁ。 でも仕方ないからそれだして。 あまり時間もないし」

 そういうと、子熊があたりを徘徊し始めていた。
 とどめを刺すつもりなのだろう。執念深い。

「さぁいくよ! 魔導生命体(クーリガー)起動開始(ゲシュタルレット)!」