トモとリリアナは長閑な小麦畑の中を歩いていた。
シュリングの街をでて三か月、季節は秋に差し掛かろうとしている。
この世界の主食は小麦らしく、街を離れた農村の近くにはこういった小麦畑が広がっているのをよく見かける。
シュリングを出るときは大変だった。
マリーは思った以上にトモを気に入ってたらしく別れの挨拶を切り出すのに、四日もかかったのだ。
その間、ドライアドに詳しく情報を聞いたり、妖精の小道の使い方を習ったりと旅の準備を進めた。
魔法少女らしく空を飛ぼうとしたが、これは大気中のマナの濃さが影響し実用には解析が必要とのことで、現在も徒歩での移動がメインとなっていた。
国家を飛び越え移動を続けたが、集まったアメーバは10にも満たなかった。
予想以上に人里に集中しているのかもしれないなと、クーリガーと話し合った。
表向き与えられた身分はギルド査察官という役職。冒険者という個人よりは都合がいいだろうとのことで、与えられた内部監査官という肩書だ。
人間国家であれば特に問題なく通行が可能な便利な役職だった。
人間国家というのは、この大陸の西側国家ということだ。
なんでも、この世界は中央大陸の左右に人間国家と魔族国家が分かれており長年対立をしてきたそうだ。
そのほか中小規模の種族もいるが、それぞれその二大種族の情勢に左右されながら、独自の歴史を紡いできた。
そして何よりも特殊なのが、恩寵(ステータス)の存在である。
なんでもすべての種族はそれぞれの神に力を恩寵という形で与えられ、東西の種族同士で覇権を争い神の威光を打ち立てるのが主命とされた世界なのだという。
おとぎ話のような話が未だに連綿と紡がれた結果未だに決着を見ずに世界は停滞したというのが現状のようである。
リリアナが話してくれたこの世界の成り立ちはあまりに救いがないようにトモは感じた。
終わりなき戦乱の地という宿命を背負っているようにしか感じなかったのだ。
現状西側国家をいくつか回り山間部やへき地中心で探索したがやはり東側国家への侵入は必要になってくるだろう。あとは、市街地の探索も必要か、そういった探索方法の変更も視野に入れる頃合いであった。
「リリアナさん次の街では何か情報入りそう?」
「うーん。どうだろうね。 正直歩いて探すのはもう頭打ちな気がするんだよね。確保したやつらが地下に潜ってる可能性が高い。 そもそも海とか、秘境なんかに落ちてたらそれこそもう手の出しようがない」
「やっぱりもう少し人手が必要な気はするね。 どうにかならないの?」
「おそらくもう国単位で確保に動いてるみたいなのよ。それこそ魔族国家なんか大っぴらに集めてる」
「うへぇ……。あんな危ないもんよく使う気になるね……」
「これが初めてじゃないからね。 まぁ予想できたよ」
「初めてじゃないって? なんかあったの?」
「まぁ……知ってたほうがいいか。 魔剣戦争ってのが100年ぐらい前にあってね。そんときも世界中にやばい代物があふれたんだよ。 私らエルフは迷い人の仕業とみてる。 犯人はわからずじまいだけどね。まぁそん時は20年ぐらいで魔剣が粗方回収されて戦乱が収まったんだ」
「へぇ、だれが回収したの? てかつまり、それって今回は私が原因と思ってます?」
「そりゃぁね。 別にわざわざつるし上げたりはしないから気にしないでいいよ。巻き込まれた事は理解してるし、逃げられるともっと困る。 というのも魔剣がどこに消えたかは定かじゃないってのが厄介でね。そういう事態を避けたいのさ」
そういうと得意げな笑みを見せてリリアナは鼻歌を歌いだす。
三か月間一緒に旅をしてきたが、この少女のような外見のエルフは見た目とは裏腹に相当に頭が切れる。
のんびりとした性格をしているが、基本的にトモに釘を刺すのが上手いのだ。
全力でおいていく事もできたが、それをさせない手腕を何度も見せている。
数千年単位で生きているという噂を立ち寄った街のギルドで聞いたが本当のことのようだ。
知識の幅も使い方も老獪といえる域に達していた。
話をしながら歩いていると農村の中心部が見えてきた。
酒場に宿があるらしい。今日はここで一晩休もうと決め、部屋に案内される。
こじんまりとした宿だったが、酒場は盛況なようだ。
まだ日が傾いたばかりというのに空いた席は一つもない。食事は部屋に持ってきてもらうことにした。
食事をまつあいだ身体を濡れタオルで拭うと、気持ちが落ち着くのを感じた。
異世界の日常が過ぎていく。終わりが見えない旅路にため息が出そうになるがトモは日々を楽しみながら、なんとか異世界に溶け込み始めていた。
シュリングの街をでて三か月、季節は秋に差し掛かろうとしている。
この世界の主食は小麦らしく、街を離れた農村の近くにはこういった小麦畑が広がっているのをよく見かける。
シュリングを出るときは大変だった。
マリーは思った以上にトモを気に入ってたらしく別れの挨拶を切り出すのに、四日もかかったのだ。
その間、ドライアドに詳しく情報を聞いたり、妖精の小道の使い方を習ったりと旅の準備を進めた。
魔法少女らしく空を飛ぼうとしたが、これは大気中のマナの濃さが影響し実用には解析が必要とのことで、現在も徒歩での移動がメインとなっていた。
国家を飛び越え移動を続けたが、集まったアメーバは10にも満たなかった。
予想以上に人里に集中しているのかもしれないなと、クーリガーと話し合った。
表向き与えられた身分はギルド査察官という役職。冒険者という個人よりは都合がいいだろうとのことで、与えられた内部監査官という肩書だ。
人間国家であれば特に問題なく通行が可能な便利な役職だった。
人間国家というのは、この大陸の西側国家ということだ。
なんでも、この世界は中央大陸の左右に人間国家と魔族国家が分かれており長年対立をしてきたそうだ。
そのほか中小規模の種族もいるが、それぞれその二大種族の情勢に左右されながら、独自の歴史を紡いできた。
そして何よりも特殊なのが、恩寵(ステータス)の存在である。
なんでもすべての種族はそれぞれの神に力を恩寵という形で与えられ、東西の種族同士で覇権を争い神の威光を打ち立てるのが主命とされた世界なのだという。
おとぎ話のような話が未だに連綿と紡がれた結果未だに決着を見ずに世界は停滞したというのが現状のようである。
リリアナが話してくれたこの世界の成り立ちはあまりに救いがないようにトモは感じた。
終わりなき戦乱の地という宿命を背負っているようにしか感じなかったのだ。
現状西側国家をいくつか回り山間部やへき地中心で探索したがやはり東側国家への侵入は必要になってくるだろう。あとは、市街地の探索も必要か、そういった探索方法の変更も視野に入れる頃合いであった。
「リリアナさん次の街では何か情報入りそう?」
「うーん。どうだろうね。 正直歩いて探すのはもう頭打ちな気がするんだよね。確保したやつらが地下に潜ってる可能性が高い。 そもそも海とか、秘境なんかに落ちてたらそれこそもう手の出しようがない」
「やっぱりもう少し人手が必要な気はするね。 どうにかならないの?」
「おそらくもう国単位で確保に動いてるみたいなのよ。それこそ魔族国家なんか大っぴらに集めてる」
「うへぇ……。あんな危ないもんよく使う気になるね……」
「これが初めてじゃないからね。 まぁ予想できたよ」
「初めてじゃないって? なんかあったの?」
「まぁ……知ってたほうがいいか。 魔剣戦争ってのが100年ぐらい前にあってね。そんときも世界中にやばい代物があふれたんだよ。 私らエルフは迷い人の仕業とみてる。 犯人はわからずじまいだけどね。まぁそん時は20年ぐらいで魔剣が粗方回収されて戦乱が収まったんだ」
「へぇ、だれが回収したの? てかつまり、それって今回は私が原因と思ってます?」
「そりゃぁね。 別にわざわざつるし上げたりはしないから気にしないでいいよ。巻き込まれた事は理解してるし、逃げられるともっと困る。 というのも魔剣がどこに消えたかは定かじゃないってのが厄介でね。そういう事態を避けたいのさ」
そういうと得意げな笑みを見せてリリアナは鼻歌を歌いだす。
三か月間一緒に旅をしてきたが、この少女のような外見のエルフは見た目とは裏腹に相当に頭が切れる。
のんびりとした性格をしているが、基本的にトモに釘を刺すのが上手いのだ。
全力でおいていく事もできたが、それをさせない手腕を何度も見せている。
数千年単位で生きているという噂を立ち寄った街のギルドで聞いたが本当のことのようだ。
知識の幅も使い方も老獪といえる域に達していた。
話をしながら歩いていると農村の中心部が見えてきた。
酒場に宿があるらしい。今日はここで一晩休もうと決め、部屋に案内される。
こじんまりとした宿だったが、酒場は盛況なようだ。
まだ日が傾いたばかりというのに空いた席は一つもない。食事は部屋に持ってきてもらうことにした。
食事をまつあいだ身体を濡れタオルで拭うと、気持ちが落ち着くのを感じた。
異世界の日常が過ぎていく。終わりが見えない旅路にため息が出そうになるがトモは日々を楽しみながら、なんとか異世界に溶け込み始めていた。