「ほんっとに! もう二度とやらないからね!」
トモとは大理石の風呂場でぷりぷりと怒りを露わにしていた。
紅潮した頬は、湯の暖かさだけで変じたものだけではないだろう。
隣ではマリーが甲斐甲斐しく愚痴を聞いていた。
交渉をしていたと思えばあれよあれよと腕試しになるなど聞いていない。
戦闘狂、いやあの容赦のなさは殺人狂とでも言うべきか――
腕試しで首を取ろうとするような狂人のあいてなどもうこりごりであった。
「ほんとごめんなさいね……。でもあのギルマス相手じゃ遅かれ早かれああなっていたから、交渉の材料にできただけマシだったの」
「それはまぁ……」
(いきなり殺し合いが勃発してもおかしくなかった、か)
心底いやそうな顔を浮かべトモは湯船に肩まで浸かる。
マリーの言うことは間違いないのだろう。
完全な敵対をするよりは幾分マシなのは間違いない。
だが、あの殺人狂と戦うまではいいとしても見世物にされたことには納得がいかないのだ。
ちなみにマリーはしっかりとトモに賭けていたいたようだ。
物言いした本人がどうやって配当を貰ったかといえば、ギルマスに勝ったことに盛り上がった群衆の群れにまぎれちゃっかりといただいたようだ。
おっとりとした雰囲気のあるマリーだが、案外抜け目ない。
トモは後から聞いたが、ジェイル他二人はギルマスに賭けたらしい。薄情なやつらだと白い目を向けたのだった。
「風呂上りにはコーヒー牛乳が欲しくなるわね」
湯から上がったトモは火照った身体を乾かしながら、ぼんやりとつぶやいた。
マリーはそれを聞いてなぁにそれ?と聞き返す。
「あ、いや冷えた甘い飲み物が欲しいなって……」
やはりこちらの世界にはないのだろう。迂闊な発言で変な疑いをこれ以上持たれるのは得策ではない。
クーリガーも小言を告げている。
「ふーん。確かにそうね。じゃあ食事とデザート両方いきましょう!」
「うん! ありがと」
無理やりごまかすと、脱衣場を後にした。
公衆浴場は大通り沿いにある。屋台街は東西南北の目抜き通りの中央にあり、浴場は東側だ。
元来た道を戻り、二人は屋台街についた。ジェイル達はおそらく今もギルドで飲んでることだろう。
「トモちゃんは何食べたい?」
辺りは香辛料の香りに包まれていた。
どうやらこの街は北国といえる程度には気温が低いらしく。寒さに負けぬよう全体的に食事は辛口なようだ。
トモは辛い物が案外好みなこともあり、いろいろと目移りする。
周囲をぐるりと見渡すと一軒の屋台に目が留まる。
どうやら小麦の麺に、肉みそを和えた料理のようだ。
近づくと一際強く山椒のような香りが鼻腔をくすぐる。
だがマリーはあまり食指が動かないようだ。
「あれマリーさん? どしたの?」
「トモちゃん……。そこかなり辛いわよ?」
「大丈夫! マリーさんは別のにする?」
「そうするわね。 これお金、食べられなかった無理しなくてもいいからね?」
どうやら相当に辛いらしい。銅貨を何枚か渡しながら、マリーは念を押すようにいう。
「一杯ください!」
「あーお嬢ちゃん。大丈夫かい? かなり辛いよ?」
小太りの店主はトモの姿を見ると心配そうな目を向ける。
スープの蓋を開けるとむせるような熱気がもうもうと立ち上っている。
その暴力的な香りに周囲で食べるか様子を見ていた客が逃げていく。
しかしトモはその香りを一嗅ぎすると、
「大丈夫だと思う。おいしそうだから一杯ちょうだい」
「へぇ……嬢ちゃんいける口みたいだね。少しまっててね」
麺を茹でスープを器にスープと共に盛るとすぐに出してくれた。
食器は箸だった。材質は竹のような木とは違う材質だった。
ありがとうとお礼を言い屋台を離れると、あとで器は返してくれとのことだった。
マリーの元へ戻ると席を確保してくれていた。
マリーの手には木のコップが二つとバゲット風のパンのサンドイッチが入ったバスケットを肘に掛けていた。
「ほんとに買ってきたんだ?」
湯気がたちのぼる器をみて若干越しが引けている。
席に着き早速食べてみるとむせてしまう。
赤々としたスープは予想通りの激辛だが、肉みその甘辛いうまみが中和する。のど越しのいい麵がするすると入っていくのも手伝い辛みが喉を焼いたのだ。
「これおいしいね。 確かに辛いけど」
「あそこのお店常連多いとは聞いたけどトモちゃんも常連になりそうね」
「有名なお店なの?」
「一応街の名物扱いよ。 街の屋台で一番辛い店らしいわ。 一度は試した方がいい店ってことらしいわ」
「そういえばマリーさんってこの街の出身じゃないの?」
「あーそうか、記憶ないんだもんね。 私たちエルフってあんまり他国に住むことないからそういうこと言われるの初めてだわ」
(へぇ……やっぱエルフなんだ)
トモは確かに街の様子を見てもマリーと同じような長い耳の種族を見てないなと考える。
大体がトモと同じような人間、あとは獣人といえばいいのだろうか耳や尾が獣の形をした種族、トモの腰ほどしか身長がない小人のような種族あとは、ゲラルトみたいな小柄でがっちりとした種族ばかりだ。
「私はこの街に来て3年ぐらいね。 まだまだ新参って感じ。 あのギルマスについてきたというか連れられてって感じね」
「あのギルマスとの付き合いは長いんだ。 だから扱い方わかってる感じなんだね」
「ふふふ……、そうね。 まぁ止まらないときは止まらないんだけど」
マリーは笑顔で話していたが、だんだんと疲れたような表情を見せる。
普段から相当振り回されているいるようだ。
トモは内心で合掌した。
食事を終えると、別の屋台で冷たいプリンのような食べ物を買ってきたマリーと食べ、服を見て回りマリーの下宿先に案内される。
ベッドを用意されると夕食は食べずに眠りについてしまった。
この数日の疲れが出たようだ。
久しぶりに充実した休みを満喫し、しっかりと英気を養うことに成功した様だった。
トモとは大理石の風呂場でぷりぷりと怒りを露わにしていた。
紅潮した頬は、湯の暖かさだけで変じたものだけではないだろう。
隣ではマリーが甲斐甲斐しく愚痴を聞いていた。
交渉をしていたと思えばあれよあれよと腕試しになるなど聞いていない。
戦闘狂、いやあの容赦のなさは殺人狂とでも言うべきか――
腕試しで首を取ろうとするような狂人のあいてなどもうこりごりであった。
「ほんとごめんなさいね……。でもあのギルマス相手じゃ遅かれ早かれああなっていたから、交渉の材料にできただけマシだったの」
「それはまぁ……」
(いきなり殺し合いが勃発してもおかしくなかった、か)
心底いやそうな顔を浮かべトモは湯船に肩まで浸かる。
マリーの言うことは間違いないのだろう。
完全な敵対をするよりは幾分マシなのは間違いない。
だが、あの殺人狂と戦うまではいいとしても見世物にされたことには納得がいかないのだ。
ちなみにマリーはしっかりとトモに賭けていたいたようだ。
物言いした本人がどうやって配当を貰ったかといえば、ギルマスに勝ったことに盛り上がった群衆の群れにまぎれちゃっかりといただいたようだ。
おっとりとした雰囲気のあるマリーだが、案外抜け目ない。
トモは後から聞いたが、ジェイル他二人はギルマスに賭けたらしい。薄情なやつらだと白い目を向けたのだった。
「風呂上りにはコーヒー牛乳が欲しくなるわね」
湯から上がったトモは火照った身体を乾かしながら、ぼんやりとつぶやいた。
マリーはそれを聞いてなぁにそれ?と聞き返す。
「あ、いや冷えた甘い飲み物が欲しいなって……」
やはりこちらの世界にはないのだろう。迂闊な発言で変な疑いをこれ以上持たれるのは得策ではない。
クーリガーも小言を告げている。
「ふーん。確かにそうね。じゃあ食事とデザート両方いきましょう!」
「うん! ありがと」
無理やりごまかすと、脱衣場を後にした。
公衆浴場は大通り沿いにある。屋台街は東西南北の目抜き通りの中央にあり、浴場は東側だ。
元来た道を戻り、二人は屋台街についた。ジェイル達はおそらく今もギルドで飲んでることだろう。
「トモちゃんは何食べたい?」
辺りは香辛料の香りに包まれていた。
どうやらこの街は北国といえる程度には気温が低いらしく。寒さに負けぬよう全体的に食事は辛口なようだ。
トモは辛い物が案外好みなこともあり、いろいろと目移りする。
周囲をぐるりと見渡すと一軒の屋台に目が留まる。
どうやら小麦の麺に、肉みそを和えた料理のようだ。
近づくと一際強く山椒のような香りが鼻腔をくすぐる。
だがマリーはあまり食指が動かないようだ。
「あれマリーさん? どしたの?」
「トモちゃん……。そこかなり辛いわよ?」
「大丈夫! マリーさんは別のにする?」
「そうするわね。 これお金、食べられなかった無理しなくてもいいからね?」
どうやら相当に辛いらしい。銅貨を何枚か渡しながら、マリーは念を押すようにいう。
「一杯ください!」
「あーお嬢ちゃん。大丈夫かい? かなり辛いよ?」
小太りの店主はトモの姿を見ると心配そうな目を向ける。
スープの蓋を開けるとむせるような熱気がもうもうと立ち上っている。
その暴力的な香りに周囲で食べるか様子を見ていた客が逃げていく。
しかしトモはその香りを一嗅ぎすると、
「大丈夫だと思う。おいしそうだから一杯ちょうだい」
「へぇ……嬢ちゃんいける口みたいだね。少しまっててね」
麺を茹でスープを器にスープと共に盛るとすぐに出してくれた。
食器は箸だった。材質は竹のような木とは違う材質だった。
ありがとうとお礼を言い屋台を離れると、あとで器は返してくれとのことだった。
マリーの元へ戻ると席を確保してくれていた。
マリーの手には木のコップが二つとバゲット風のパンのサンドイッチが入ったバスケットを肘に掛けていた。
「ほんとに買ってきたんだ?」
湯気がたちのぼる器をみて若干越しが引けている。
席に着き早速食べてみるとむせてしまう。
赤々としたスープは予想通りの激辛だが、肉みその甘辛いうまみが中和する。のど越しのいい麵がするすると入っていくのも手伝い辛みが喉を焼いたのだ。
「これおいしいね。 確かに辛いけど」
「あそこのお店常連多いとは聞いたけどトモちゃんも常連になりそうね」
「有名なお店なの?」
「一応街の名物扱いよ。 街の屋台で一番辛い店らしいわ。 一度は試した方がいい店ってことらしいわ」
「そういえばマリーさんってこの街の出身じゃないの?」
「あーそうか、記憶ないんだもんね。 私たちエルフってあんまり他国に住むことないからそういうこと言われるの初めてだわ」
(へぇ……やっぱエルフなんだ)
トモは確かに街の様子を見てもマリーと同じような長い耳の種族を見てないなと考える。
大体がトモと同じような人間、あとは獣人といえばいいのだろうか耳や尾が獣の形をした種族、トモの腰ほどしか身長がない小人のような種族あとは、ゲラルトみたいな小柄でがっちりとした種族ばかりだ。
「私はこの街に来て3年ぐらいね。 まだまだ新参って感じ。 あのギルマスについてきたというか連れられてって感じね」
「あのギルマスとの付き合いは長いんだ。 だから扱い方わかってる感じなんだね」
「ふふふ……、そうね。 まぁ止まらないときは止まらないんだけど」
マリーは笑顔で話していたが、だんだんと疲れたような表情を見せる。
普段から相当振り回されているいるようだ。
トモは内心で合掌した。
食事を終えると、別の屋台で冷たいプリンのような食べ物を買ってきたマリーと食べ、服を見て回りマリーの下宿先に案内される。
ベッドを用意されると夕食は食べずに眠りについてしまった。
この数日の疲れが出たようだ。
久しぶりに充実した休みを満喫し、しっかりと英気を養うことに成功した様だった。