私は国道沿いの雑貨屋、星降堂に足を運ぶ。
魔女にお礼がしたかった。惑星のペンダントのお代も払っていないし。
店内に足を踏み入れると、煌めく雑貨の光から湧き出るように、魔女が姿を現した。
魔女は青い宝石を手の中で転がしながら、私に近付いてくる。
「いらっしゃい。健一君の調子はどうだい?」
魔女は何でもお見通しらしい。私は微笑んで魔女に言う。
「おかげ様で。健一は元気です」
「それはよかった。死なれたら後味わるいしね」
魔女は引き笑いをしながら、洒落にならないことを言う。私はため息をつきながら、魔女に封筒を差し出した。
その中に入っているのは謝礼金。諭吉が十枚。私にとっては大金である。健一の治療費に充てる予定だったこのお金。彼を助けてくれた魔女に渡すのが相応しいと、私は考えた。
魔女は封筒を見る。しかし、受け取ることもせずに首を振って拒否をした。
「君たちの世界のお金、私には使えないよ」
「そんなこと言わずに」
私は食い下がる。どうか受け取ってほしかった。だけど、魔女は言うのだ。
「私は世界を渡る魔女。一所に定住しているわけじゃない。だから、お金なんていう価値が不確かな物、意味がないんだよ」
魔女の不可解な言葉に、つい首を傾げてしまった。彼女は何を言っているのだろうと。
「もうお代は貰ったよ。君達の『諦めない心』という、価値あるものをね」
魔女は微笑む。
その言葉の意味がわからず、私は口を開きかけた。
次の瞬間、魔女の姿が消え始めた。
「諦めない心。それは君達の財産だ」
そう言い残して。
霧が晴れるように、魔女も星降堂も消えていく。
後に残ったのは、工事中の看板が立てられた空き地。マンションの建設予定地だった。
今までの出来事は夢だったのだろうか。でも、スマホの画面には健一からのメッセージが表示されている。
健一が生きている。これは決して夢ではない。
私は、健一が待つ家へと帰り始めた。
✧︎*。
『異世界転移はかくありき』
魔女にお礼がしたかった。惑星のペンダントのお代も払っていないし。
店内に足を踏み入れると、煌めく雑貨の光から湧き出るように、魔女が姿を現した。
魔女は青い宝石を手の中で転がしながら、私に近付いてくる。
「いらっしゃい。健一君の調子はどうだい?」
魔女は何でもお見通しらしい。私は微笑んで魔女に言う。
「おかげ様で。健一は元気です」
「それはよかった。死なれたら後味わるいしね」
魔女は引き笑いをしながら、洒落にならないことを言う。私はため息をつきながら、魔女に封筒を差し出した。
その中に入っているのは謝礼金。諭吉が十枚。私にとっては大金である。健一の治療費に充てる予定だったこのお金。彼を助けてくれた魔女に渡すのが相応しいと、私は考えた。
魔女は封筒を見る。しかし、受け取ることもせずに首を振って拒否をした。
「君たちの世界のお金、私には使えないよ」
「そんなこと言わずに」
私は食い下がる。どうか受け取ってほしかった。だけど、魔女は言うのだ。
「私は世界を渡る魔女。一所に定住しているわけじゃない。だから、お金なんていう価値が不確かな物、意味がないんだよ」
魔女の不可解な言葉に、つい首を傾げてしまった。彼女は何を言っているのだろうと。
「もうお代は貰ったよ。君達の『諦めない心』という、価値あるものをね」
魔女は微笑む。
その言葉の意味がわからず、私は口を開きかけた。
次の瞬間、魔女の姿が消え始めた。
「諦めない心。それは君達の財産だ」
そう言い残して。
霧が晴れるように、魔女も星降堂も消えていく。
後に残ったのは、工事中の看板が立てられた空き地。マンションの建設予定地だった。
今までの出来事は夢だったのだろうか。でも、スマホの画面には健一からのメッセージが表示されている。
健一が生きている。これは決して夢ではない。
私は、健一が待つ家へと帰り始めた。
✧︎*。
『異世界転移はかくありき』