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何人もの友達から友達へと伝言ゲームのように、「この学校の願いを叶えてくれるっていう幽霊知ってる?」とメッセージが回っていく。好きな人が誰かも言えないのに、友達たちは私の恋のためなら、と調べてくれた。
先生の言葉を聞いてもう一度薬学部に行きたいのという夢も、真剣に伝えた時は「私には無理だなんて茶化してごめん」って謝ってくれた子達。
みんなが集めてくれた情報によれば、学校の幽霊は、音楽室に現れるらしい。願いを叶えてくれるどうかはわからないけど……ということだった。そして、幽霊が現れる条件は判明していない。私の学年も、それから卒業していった先輩達からも実際に見たと言う体験談が何個か聞けた。
その中で一つだけわかったことがある。それは幽霊を見かけた子達はみんな音楽室でピアノの練習をしていた、と言うことだった。でも、私は……ピアノを弾けない……。楽器なんて今までやったことも、なかったから。
でも先生との恋を叶えるならなんだってする! そう決めたから……。残り時間も少ないからと、ピアノのアプリをダウンロードした。
音楽ゲームのようになっていて、鍵盤が光る場所をタイミングよくタップすれば、音楽を奏でてくれる。
先生には幽霊の居場所がわかったことを内緒にしている。驚かせたいから。
一週間、家での時間は全てピアノアプリに費やしたおかげでなんとなく弾けるようにはなっていた。私が一番好きな音楽。先生への恋心を表したような、叶わない恋を思い浮かべる曲を、特に練習した。
ふぅーっと深呼吸して、音楽室のピアノに触れる。アプリでは何度も弾いたけど本物のピアノを弾くのは、初めてだ。
アプリの画面に表示された鍵盤と同じところに人差し指を置く。ゆっくりと拙いながらに、音楽を奏でていく。