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 高校生活も残り少ない。大学が決まった三年生の冬なんて無為に過ごすばかりだ。だから、私は授業で会えない分、先生に会いに来ようと決めている。

 先生と過ごせる時間も限られているし、できることなら先生の特別になりたい。もう卒業するから、この気持ちを伝えてもいいよね?

 そんな淡い想いに気づかないまま、先生は相変わらず本を手に取っては戻してを繰り返している。

 勉強机に座って、頬杖をつきながら先生を見つめることが日課になってしまった。

「暇なの?」
「ぜんぜん?」
「じゃあなんで毎日図書室に来て本も読まずに……それともなに、また、なんかあった?」

 私の視線に気づいてそっと近づいてくる先生に、手を伸ばしたくなった。ねぇ、もっと近づいてほしい。先生の心の声が聞こえてくればいいのに。

 でも、めんどくさいなとか聞こえたら嫌だな。

「何もないですけど、先生とももう残り少ないので」
「そういうことか! じゃあ、この学校の面白い話してあげようか?」

 唐突に始まった先生の学校の怪談は、全く怖くなかった。
 この学校には幽霊がいて、その幽霊に出会えた人は願い事を一つだけ叶えてもらえるらしい。私の聞いたことのない怪談は、怖さを一個も含んでいないのに、先生はわざとらしくおどろおどろしい言い方をする。

 願い事を叶えてくれるなら、先生と両思いにしてほしい。

「先生も探したんですか?」
「見つからなかったんだよね、幽霊が校舎内にいるってことはわかってるんだけど」
「夜とか?」
「夜にも色々見回ってみたんだけどな」

 先生が首を横に振って、それでもダメだったと肩をすくめた。先生が叶えたい願い事は、何なんだろう?

「先生の願いごとって」
「秘密」
「ケチー」
「まぁ、暇なら探してみてよ」

 先生の言葉にSNSを開く。検索窓に「学校名」「幽霊」を入力してみた。答えなんて得られるはずも、願い事を叶えてくれる幽霊なんていないこともわかってるのに。

 検索したところで、当たり前に何も投稿がない画面が表示された。当たり前なのに。先生が作った適当な嘘だとわかってるのに、信じてしまうのは、私が先生を絶対的に信頼してるからだろうか。