「たった1日で総額270万ゴールド……すごい金額になりましたね。正直ビックリしました」
昨日と同じく宿の1階で食事をしながら、アイセルが心底驚いたって顔をして言った。
Bランククエストの討伐報奨金と、イービル・イノシシのキバを薬屋に売りさばいたことで、俺たちはかなりまとまったお金を手にすることができたからだ。
2人で山分けしても135万ゴールド。
節約すれば1年は暮らせる金額だ。
「イービル・イノシシは勝てさえすれば儲かる魔獣なんだ。またクエストが出たら優先して倒しに行こう」
「勉強になります……!」
「まぁ実際はもっと捜索に時間がかかるものなんだけどな。今回は近場の平地に下りてきてたから探すのも比較的楽だったし。なにより1キロ以上も先のイービル・イノシシを確認できるアイセルの目があったおかげだ」
「えへへ、ケースケ様のお役に立てて光栄です」
「次も頼むぞ、相棒」
「はわっ!? 相棒……、わたしがケースケ様の相棒……! これはがんばらないとですよ!」
アイセルがやる気マックス!って顔をした。
うんうん、若者がやる気を見せる姿を見るのはいいもんだね――って、こんな感想が出るってことは、俺もいつの間にか年をとったってことか……はぁ。
「ははっ、アイセルの『アイ』は相棒の『相』――なんてな」
俺は初クエストが100点満点で終えられて気分が良かったってのもあって、ついつい口が軽くなってそんな親父ギャグを言ったんだけど、
「え? あ、はい。そうですね」
アイセルは特に反応することなく、それをさらっと流した。
「……」
ううっ。
寒いギャグを言ったせいで、急にアイセルに冷めた目で見られちゃった気がするよ……ぐすん。
なんで人間ってチヤホヤされると、面白くもないギャグを言いたくなるのかな?
うん、今後は気をつけよう……。
俺は大いに反省をした。
「それにしてもバフスキルって本当に凄いんですね。発動した瞬間に頭の中がキュピーンってクリアになって、本当にこれがわたしなのかなって思ったくらいですもん」
「なんだかんだで『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』はS級スキルだからな」
「本当ですよ、さすがS級スキルです!」
「ただまぁそうは言ってもだ。突き詰めれば『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』は補助スキル、アイセルの能力があればこそのバフスキルなんだよ」
いくら『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』がS級のバフスキルだとしても、効果対象がまるっきりの素人ではさすがに話にならないわけで。
「えへへ、ケースケ様にそう言ってもらえると励みになります」
「俺の方こそ、いい前衛職を仲間にできて良かったよ。改めてよろしくな、アイセル。期待してるぞ」
「こちらこそよろしくお願いしますね! 期待に応えられるよう頑張りますので!」
俺たちは初クエストの成果にほくほくしながら、互いに健闘を称えあってガッチリと握手をかわしたのだった。
「さてと、まとまった金が入ったから明日は装備を買いに行こうと思うんだけど。ほら、ぶっちゃけ俺とか普段着だろ? さすがにこれで冒険を続けるのは心もとないんだよな」
俺はシャツの胸元を軽く引っ張ってみせた。
防御力ゼロの、どこにでもある日常生活で使う普通の服だ。
「あ、単に装備がなかったからなんですね。わたしてっきり元・勇者パーティの余裕かなと思ってたんですけど」
「余裕?」
「『ふふん、これくらいのクエストなら普段着のままこなせるぜ。よーく見とけよ新入り』みたいなマウンティングかと思ってました」
「あはは、バリバリの前衛職ならそういう風に先輩風吹かせるのもあるかもだけど。なんせ俺の場合は開幕バフったら終わりの後衛職だからなぁ……」
「レベルが超一流をはるかに超える120あっても、バッファーという職業はそこまで戦闘が苦手なんでしょうか?」
アイセルが少し言いづらそうに、でも興味深そうに尋ねてきた。
昨日と同じく宿の1階で食事をしながら、アイセルが心底驚いたって顔をして言った。
Bランククエストの討伐報奨金と、イービル・イノシシのキバを薬屋に売りさばいたことで、俺たちはかなりまとまったお金を手にすることができたからだ。
2人で山分けしても135万ゴールド。
節約すれば1年は暮らせる金額だ。
「イービル・イノシシは勝てさえすれば儲かる魔獣なんだ。またクエストが出たら優先して倒しに行こう」
「勉強になります……!」
「まぁ実際はもっと捜索に時間がかかるものなんだけどな。今回は近場の平地に下りてきてたから探すのも比較的楽だったし。なにより1キロ以上も先のイービル・イノシシを確認できるアイセルの目があったおかげだ」
「えへへ、ケースケ様のお役に立てて光栄です」
「次も頼むぞ、相棒」
「はわっ!? 相棒……、わたしがケースケ様の相棒……! これはがんばらないとですよ!」
アイセルがやる気マックス!って顔をした。
うんうん、若者がやる気を見せる姿を見るのはいいもんだね――って、こんな感想が出るってことは、俺もいつの間にか年をとったってことか……はぁ。
「ははっ、アイセルの『アイ』は相棒の『相』――なんてな」
俺は初クエストが100点満点で終えられて気分が良かったってのもあって、ついつい口が軽くなってそんな親父ギャグを言ったんだけど、
「え? あ、はい。そうですね」
アイセルは特に反応することなく、それをさらっと流した。
「……」
ううっ。
寒いギャグを言ったせいで、急にアイセルに冷めた目で見られちゃった気がするよ……ぐすん。
なんで人間ってチヤホヤされると、面白くもないギャグを言いたくなるのかな?
うん、今後は気をつけよう……。
俺は大いに反省をした。
「それにしてもバフスキルって本当に凄いんですね。発動した瞬間に頭の中がキュピーンってクリアになって、本当にこれがわたしなのかなって思ったくらいですもん」
「なんだかんだで『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』はS級スキルだからな」
「本当ですよ、さすがS級スキルです!」
「ただまぁそうは言ってもだ。突き詰めれば『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』は補助スキル、アイセルの能力があればこそのバフスキルなんだよ」
いくら『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』がS級のバフスキルだとしても、効果対象がまるっきりの素人ではさすがに話にならないわけで。
「えへへ、ケースケ様にそう言ってもらえると励みになります」
「俺の方こそ、いい前衛職を仲間にできて良かったよ。改めてよろしくな、アイセル。期待してるぞ」
「こちらこそよろしくお願いしますね! 期待に応えられるよう頑張りますので!」
俺たちは初クエストの成果にほくほくしながら、互いに健闘を称えあってガッチリと握手をかわしたのだった。
「さてと、まとまった金が入ったから明日は装備を買いに行こうと思うんだけど。ほら、ぶっちゃけ俺とか普段着だろ? さすがにこれで冒険を続けるのは心もとないんだよな」
俺はシャツの胸元を軽く引っ張ってみせた。
防御力ゼロの、どこにでもある日常生活で使う普通の服だ。
「あ、単に装備がなかったからなんですね。わたしてっきり元・勇者パーティの余裕かなと思ってたんですけど」
「余裕?」
「『ふふん、これくらいのクエストなら普段着のままこなせるぜ。よーく見とけよ新入り』みたいなマウンティングかと思ってました」
「あはは、バリバリの前衛職ならそういう風に先輩風吹かせるのもあるかもだけど。なんせ俺の場合は開幕バフったら終わりの後衛職だからなぁ……」
「レベルが超一流をはるかに超える120あっても、バッファーという職業はそこまで戦闘が苦手なんでしょうか?」
アイセルが少し言いづらそうに、でも興味深そうに尋ねてきた。