サクラがパーティに加入してから早1か月半。
俺とアイセルの指導に加えて、サクラのパパさんから適切なクエストを次々に差配してもらったこともあって、ぐんぐんと成長を続けたサクラは既にレベル25に達していた。
もう少ししたら怒りの精霊『フラストレ』の力を、自分だけでコントロールできるようになるはずだ。
今日もゴーレムと言われる、古代文明の残した無人戦闘兵器の討伐クエストに挑戦する予定だった。
ゴーレムは単体Aランクの強敵だ。
そのほとんどが地下深くに埋まったままで長い年月眠り続けているんだけど、時々思い出したように目を覚ます個体がいて、討伐が必要になるのだ。
馬車に乗ってゴーレムの出現エリアに向かいながら、
「今日からは連携戦闘を解禁する」
俺はサクラにそう言った。
「連携戦闘?」
「今まではサクラに経験を積ませるために、基本的にサクラ1人で戦ってただろ? でも今日からはアイセルと協力して戦うんだ」
「えっとケイスケは? あ、ごめん、ケイスケは開幕バフしたら仕事が終わりの後衛不遇職のバッファーだもんね。仲間と連携すること自体ないよね……」
「相変わらずお前は一言多いんだよ……」
いい加減、慣れてきたけどな。
しかもそれが事実なのが地味にツラい……。
「でもでもこれで前衛が2枚になりますし、一気にパーティらしくなってきますよね」
そんな俺とサクラのやりとりにさらりとアイセルが割って入り、すっかり慣れた様子で話を進めていく。
もうパーティのリーダーはアイセルに任せても良いんじゃないだろうか?
マルチな才能を見せるアイセルを前に、そんな気すらしてくる最近の俺だった。
「連携戦闘って具体的にはどうやるの? 私がアイセルさんの動きに合わせればいいのかしら?」
「いいや逆だ、サクラの動きにアイセルが合わせる方向で行く」
「でもアイセルさんの方が強いんだから、アイセルさんを軸にした方がよくない?」
「なら聞くけど、サクラはいきなりアイセルの動きに合わせられるか?」
「えっと、そんないきなりは無理だし……」
「だろ? でもアイセルなら合わせられるんだ。なにせこの1カ月半、アイセルには連携戦闘することを前提に、サクラの動きをしっかり見ておくように言ってたからな」
「アイセルさん、そうだったの?」
「はい、ばっちり見てきましたので、サクラの動き方や判断基準なんかもほぼ理解できてますよ」
「すごいですアイセルさん!」
連携戦闘は実質ソロで戦い続けてきたアイセルにとっても初めての経験だ。
でもこの先パーティが大きくなれば、協力して戦う場面がどんどんと増えていく。
だからサクラを育成する期間を利用して、アイセルにはそのイメージトレーニングをしてもらっていた。
サクラの育成にかまけて、アイセルを暇させることだけは絶対にできなかったしな。
そういう意味でも、アイセルが一人前になったこのタイミングでサクラが加入したのは、アイセルにとっても良いことだったのかもしれない。
「今日の相手はゴーレムだ。ゴーレムってのは無機物で、生物とは違って頭や心臓が弱点じゃないから気をつけるように。頭や手足が無くなっても怯むことなく攻撃してくるからな」
「じゃあどうやって倒すのよ?」
「体の内部、ちょうど腹のあたりに『カクユーゴーロ』っていう力の源があるんだ。それを破壊すれば動かなくなる」
「腰の『カクユーゴーロ』を破壊ね、分かったわ」
「前衛の指揮はアイセルに任せるから、サクラを上手いこと使ってゴーレムを倒してくれ」
「了解です。ではいくつか簡単に打ち合わせをしておきましょう」
「うん!」
「基本的にはサクラはいつも通り自由に戦ってくれていいから。でもほんの少しだけわたしに意識を向けておいて」
「それくらいならできると思う」
「あとは――」
みたいなことをあれこれ意見を出し合って理解を深める2人を、俺はそっと見守っていた。
少し寂しいけど、サクラの言うとおりバッファーの俺は連携すること自体がないから、仕方ない……。
俺とアイセルの指導に加えて、サクラのパパさんから適切なクエストを次々に差配してもらったこともあって、ぐんぐんと成長を続けたサクラは既にレベル25に達していた。
もう少ししたら怒りの精霊『フラストレ』の力を、自分だけでコントロールできるようになるはずだ。
今日もゴーレムと言われる、古代文明の残した無人戦闘兵器の討伐クエストに挑戦する予定だった。
ゴーレムは単体Aランクの強敵だ。
そのほとんどが地下深くに埋まったままで長い年月眠り続けているんだけど、時々思い出したように目を覚ます個体がいて、討伐が必要になるのだ。
馬車に乗ってゴーレムの出現エリアに向かいながら、
「今日からは連携戦闘を解禁する」
俺はサクラにそう言った。
「連携戦闘?」
「今まではサクラに経験を積ませるために、基本的にサクラ1人で戦ってただろ? でも今日からはアイセルと協力して戦うんだ」
「えっとケイスケは? あ、ごめん、ケイスケは開幕バフしたら仕事が終わりの後衛不遇職のバッファーだもんね。仲間と連携すること自体ないよね……」
「相変わらずお前は一言多いんだよ……」
いい加減、慣れてきたけどな。
しかもそれが事実なのが地味にツラい……。
「でもでもこれで前衛が2枚になりますし、一気にパーティらしくなってきますよね」
そんな俺とサクラのやりとりにさらりとアイセルが割って入り、すっかり慣れた様子で話を進めていく。
もうパーティのリーダーはアイセルに任せても良いんじゃないだろうか?
マルチな才能を見せるアイセルを前に、そんな気すらしてくる最近の俺だった。
「連携戦闘って具体的にはどうやるの? 私がアイセルさんの動きに合わせればいいのかしら?」
「いいや逆だ、サクラの動きにアイセルが合わせる方向で行く」
「でもアイセルさんの方が強いんだから、アイセルさんを軸にした方がよくない?」
「なら聞くけど、サクラはいきなりアイセルの動きに合わせられるか?」
「えっと、そんないきなりは無理だし……」
「だろ? でもアイセルなら合わせられるんだ。なにせこの1カ月半、アイセルには連携戦闘することを前提に、サクラの動きをしっかり見ておくように言ってたからな」
「アイセルさん、そうだったの?」
「はい、ばっちり見てきましたので、サクラの動き方や判断基準なんかもほぼ理解できてますよ」
「すごいですアイセルさん!」
連携戦闘は実質ソロで戦い続けてきたアイセルにとっても初めての経験だ。
でもこの先パーティが大きくなれば、協力して戦う場面がどんどんと増えていく。
だからサクラを育成する期間を利用して、アイセルにはそのイメージトレーニングをしてもらっていた。
サクラの育成にかまけて、アイセルを暇させることだけは絶対にできなかったしな。
そういう意味でも、アイセルが一人前になったこのタイミングでサクラが加入したのは、アイセルにとっても良いことだったのかもしれない。
「今日の相手はゴーレムだ。ゴーレムってのは無機物で、生物とは違って頭や心臓が弱点じゃないから気をつけるように。頭や手足が無くなっても怯むことなく攻撃してくるからな」
「じゃあどうやって倒すのよ?」
「体の内部、ちょうど腹のあたりに『カクユーゴーロ』っていう力の源があるんだ。それを破壊すれば動かなくなる」
「腰の『カクユーゴーロ』を破壊ね、分かったわ」
「前衛の指揮はアイセルに任せるから、サクラを上手いこと使ってゴーレムを倒してくれ」
「了解です。ではいくつか簡単に打ち合わせをしておきましょう」
「うん!」
「基本的にはサクラはいつも通り自由に戦ってくれていいから。でもほんの少しだけわたしに意識を向けておいて」
「それくらいならできると思う」
「あとは――」
みたいなことをあれこれ意見を出し合って理解を深める2人を、俺はそっと見守っていた。
少し寂しいけど、サクラの言うとおりバッファーの俺は連携すること自体がないから、仕方ない……。