「もうね、なんだか最近は、肌の張りも落ちてきた気がするのよねぇ」
 シャーリーがいじけたように呟いた。

 シャーリーは割と自己肯定感が高く、イケイケの自信家なので、こんな弱気な姿を見るのはかなり珍しい。
 でもシャーリーも女の子なんだし、年齢とか結婚とかがどうしても気になっちゃうんだろうな。

「そんなことありませんってば。シャーリーさんの肌はすごく綺麗ですから。それにスタイルも抜群じゃないですか。ボン、キュッ、ボンですごく羨ましいんですよ? ね、ケースケ様だってそう思いますよね?」

「シャーリーはとても魅力的な女の子だよ。美人だしスタイルもいいし、はっきりした性格で何でも素直に言い合えるから、すごく自然体でいられる。ストレートに好意を伝えてくれるのも嬉しい。だから自信を持ってくれ」

 俺はシャーリーを元気づけたい一心で、柄にもなく歯の浮くようなセリフを言った。
 普段はあまり言わないでいるが、これが俺の、シャーリーに対する嘘偽りのない本心である。

「ですって、シャーリーさん。でもいいなぁ、ケースケ様にこんなにはっきり気持ちを伝えてもらって」

 アイセルが嬉しそうに――だけどちょっとだけ羨ましそうに――言ったのだが、

「……」
 シャーリーは急に下を向いて沈黙してしまった。
 さらには、なぜだか俺から顔も背けている。

「どうしたんだ、シャーリー?」
「どうしたんです、シャーリーさん?」

「……」

「シャーリー?」
「シャーリーさん?」

 急に一言も発しなくなったシャーリーを心配する俺とアイセル。
 特に俺はまた気付かないうちに

「――なり――たら……」
「え、なんだって?」

 口を開いたものの、あまりに小声過ぎて聞き取れなかった俺が聞き返すと、

「いきなりそんなこと言われたら照れるでしょ!」
 真っ赤にした顔を俺に向けたシャーリーが、突然ガーっと盛大にキレた。

「珍しく本音で語ったのに、なんでキレられるんだよ」

「はっ!? ケースケ様ケースケ様。これは照れ隠しというものです」
「照れ隠し? シャーリーが、俺にか?」

「間違いありません! ふふっ、普段は大人びたシャーリーさんも、ケースケ様に面と向かって愛を(ささや)かれたら、こんな風に照れちゃうんですね~」

 アイセルはこれ以上なく嬉しそうだった。

「……別に愛は囁いてなくないか?」
「いえいえ、囁いていましたよ? ラブ満載でしたよ? いいなぁ、シャーリーさん。ケースケ様に愛を囁いてもらって。羨ましいなぁ」

「そうよケースケ。アタシばっかりに言ってないで、ちゃんとアイセルにも言わないと不公平でしょ」

「あ! シャーリーさんはいいこと言いますね! というわけでケースケ様、よろしくお願いしますね」

「なんでそうなる」

「2人を同時に愛するなら、不公平は絶対にダメよ。ね、アイセル」
「そうですよ! 不公平の『不』は不幸の『不』なんですから」

「ああもう、分かったよ――」

 その後、俺はアイセルとシャーリーにラブっぽいことを何度も言わされてしまった。
 アイセルに言えば、今度はシャーリーがアタシにもと要求し、逆もまた然り。
 2人が満足するまで、俺は愛の言葉をささやき続けた。

 この様子を見ている限り、どうやら2人は、俺が思っている以上に仲良しになっているようだ。

 いや、いいんだけどな?
 むしろ俺を巡ってケンカになったりするよりは、2人仲良く俺を好きでいてくれる方が、はるかに平和でいいんだけども。