「ええっと? なんていうかその、2人とも近すぎないか?」

 一緒に入るにしても、さすがにこれは距離感がおかしいのでは?

「だって捕まえておかないと、ケースケは逃げちゃうでしょ?」
 シャーリーが右側から、ことさらにギュッとくっつきなが言ってくる。

「それはまぁ、な」
「いい男は、逃げられないようにこうやってしっかりと捕まえておかないとね」

「それ、物理的に捕まえておくってのとは、微妙に使い方が違うような?」
「そうかしら?」

 分かっているくせに、スッとボケるように、わずかに目を見開きながら、俺の肩に頭を乗せるように、こてんと小首をかしげるシャーリー。

 なにせ美人なので、ちょっとした仕草も狙ったように様になっていた。
 というか間違いなく狙ってやっているよな。
 こうすれば魅力的に見えるってのを分かった上で、俺にそれをアピールしているのだ。

 かくいう俺も男なので、シャーリーみたいな絶世の美女にそんなアピールをされてしまうと、まんざらでもないというか、素直に嬉しく感じてしまう。

「それにこれはケースケ様のためでもあるんですよ」
 と、今度はアイセルが、左からくっつきながらそんなことを言ってきた。

 アイセルはアイセルで、シャーリーに対抗するかのように、ふにゅんふにゅんと胸をわざとらしく押し付けてくる。

 俺も男なので(以下略

「俺のため?」

「はい。ケースケ様がもう一度、性的興奮を感じることができるように、わたしたちもパーティの一員として切磋琢磨して頑張ることにしたんです」

「別にそこまでしてもらわなくても、順調に改善傾向にはあるんだぞ? 皆のおかげで、心身ともに充実した日々が送れているからな。そのことには本当に感謝しているんだ。それにこれは俺の個人的な問題だし」

 最近の俺はパーティ『アルケイン』の実質リーダーとして――対外的なリーダーはアイセルだ――充実の日々を送っている。

 アイセル、サクラ、シャーリーが俺に冒険者としての自信と、男としての自信の、どちらも与えてくれることが、俺の心の傷を着実に癒してくれていた。

「まぁまぁそう仰らずに、少しだけ話を聞いてくださいな」
「そりゃ話くらいは聞くけども」

「では説明しますね。今回のミトラ神のクエストを攻略したことで、シャーリーさんのお父さんから出されたクエストも一区切りつきましたよね?」

「シャーリーの理不尽なお見合いを破棄するためとはいえ、高難度クエストをたて続けに攻略して、ほんと頑張ったよなぁ、俺たち」

「アタシのためにありがとうね、ケースケ、アイセル、サクラ」
「水臭いこと言うなよ、パーティの仲間のために頑張るのは当然だっての」

「そうなんです!」
「え?」

 突然アイセルが、我が意を得たりとばかりに、力強く言った。

「仲間のために頑張るのは、当然なんですよ」
「お、おう。そうだな」

「だからシャーリーさんのプライベートな問題のためにみんなで頑張ったように、これからはケースケ様のプライベートな男性機能改善のために頑張ろうって、シャーリーさんに言われて、なるほどと意気投合したんです」

「アタシのためにこれだけ頑張ってくれたんだもん。今度はケースケのために頑張りたいって思っちゃうのは当然でしょう?」

「なにせ、わたしたちはパーティの仲間なんですから。公私に関係なく、助け合っていくのがパーティというものです」

「なるほどな。そういう理屈か」

 こんな風に言われてしまうと、なかなか遠慮はしづらいな。

「納得してくれたみたいね」
「とりあえず理屈は分かったよ」

「それで意気投合したら、後はもう善は急げですよね?」
「つまり元凶はシャーリーか」

「元凶とは失礼ね? アタシの素敵な提案に、アイセルが快く賛同してくれて、サクラも特に異論はなくて、よって速やかに実行に移したのよ」

「物は言いようだな……ま、言いたいことは分かったよ。でも、それにしてもこれは、ちょっと急すぎないか?」

 いきなり温泉で全裸サンドイッチされるとは思っても見なかったぞ。

「いいえケースケ様。だからこそですよ」
「だからこそ?」