そしてアイセルはと言うと、

「スキル『連撃乱舞』! はぁぁぁ――っ!」
 サクラが盾となっている正面以外から乱れ来る極光殲滅魔法を、得意の乱舞スキルで次々と打ち落とし!

 さらには、一つにまとまって向かって来る極光殲滅魔法に対しては、

「全力集中! 剣気解放――! 『《紫電一閃(しでんいっせん)》』!」
 己の誇る最強スキルでもって真正面から弾き返す!

 サクラとアイセル。
 パーティ『アルケイン』の誇る最強ツートップ・フロントアタッカーが、鉄壁の防御を形成した!

 そしてその後ろで、俺とシャーリーは2人で角のところで身を寄せ合って、亀のように小さくうずくまっていた。

 この状況下では、後衛の俺とシャーリーに出来ることは何もない。
 ならば被弾面積を極力減らし、フロントアタッカー組の負担がわずかでも減るようにすることこそが、後衛の俺たちが為すべき最善手なのだ。

 もちろん俺はパーティ最強の防具たる『星の聖衣』を装備しているので、シャーリーを抱きかかえて俺が上になるようにうずくまっている。

 こうして各々がやるべきことを全てやりきり、最大火力であるシャーリーの極光殲滅魔法を、狭い屋内で叩き込む。

 これが、これこそが!
 パーティ『アルケイン』の全ての力を結集した、対神・最終決戦攻撃だ!

 俺とシャーリーが身体を小さくし、サクラが盾となり、アイセルがひたすらに打ち落とす状況は、シャーリーの極光殲滅魔法の効果が消滅するまで続き――。

「ぷは~! やっと終わったし~!」

 古代神殿遺跡内を荒れ狂っていた極光殲滅魔法がほぼ消え去ったと同時に、サクラが腰が抜けたようにガクリと膝をついた。
 床に立てたガングニルアックスに身体を預けるようにもたれかかってバランスを取りながら、大きく息を吐く。

 サクラからは、大きな疲労の色が見て取れた。

「驚異的な回復力を誇るバーサーカーを、こうまで疲れ果てさせるなんてな。さすがというかなんというか……失われた古代秘術ってだけのことはあるな」

 シャーリーが復活させた古の秘術『魔法』。
 その中でも最強を誇る極光殲滅魔法の威力に、俺は改めて脱帽するしかなかった。

 それでもサクラは、最後まで仁王立ちになって俺とシャーリーを守り切ってくれたのだ。

「よく最後まで守ってくれたな、サクラ。ありがとう。さすがだぞ。身体の方は大丈夫か?」
 俺はサクラに感謝の気持ちを伝えるとともに、その頑張りをしっかりと(ねぎら)った。

「うーん、どうだろ? 身体はなんとか大丈夫なんだけど、怒りの精霊『フラストレ』の力をほとんど全部使い果たしちゃったから、戦闘はしばらく無理かなぁ。今は回復もほとんど発動してないし」

 ガングニルアックスを支えに膝をついていたサクラが、顔だけを俺の方へと向けて答える。

「そっか。そんなになるまで本当によく守ってくれたよ」
「へへっ、まぁね!」
「改めてありがとな」
「うん!」
 年相応に嬉しそうに笑うサクラの頭を、俺は優しく撫でてあげた。

 おおっ?

『ケイスケはゴミカスクズザコバッファーなんだから、私が守らないと死んじゃうでしょ!』とか、いつもみたいに好き放題言われると思ったんだけどな。

 そんな余裕もない程に疲弊しているのかな?
 ほんと、サクラはよくやってくれたもんな。
 うんうん――、

「だいたいケイスケはゴミカスクズザコバッファーなんだから、私が守らないと死んじゃうでしょ!」

 サクラがいつもの調子であっけらかんと言った。
 つまりは俺の考えすぎのようだった。 
 やれやれまったく。
 ま、サクラはこうでないとな。

 それはそれとして。
 俺は続けてシャーリーに声をかけた。