「まさかこれほどとはな。正直、サクラの力を見誤っていたよ」
「ふふん、分かればいいのよ、分かれば」

「ああ、もうお前は、どこに出しても恥ずかしくない超一流のバーサーカーだよ」
「そ、そう? まぁ? アイセルさんの尊敬するケースケに言ってもらえたら、満更でもないかな?」

 サクラが照れたように視線をプイっと俺から外した。

「今のは本気で助かったよ。ありがとうなサクラ」

「別にそんなのいいってば。バーサーカーはアタッカーでもあるけど、やっぱり一番の役目は盾役(タンク)だもん。後衛を守るのは当然なんだから。それに今はアイセルさんがアイツとの戦いでかかりっきりだから、アイセルさんの分まで後衛を守るのが私の役目だしね」

「ほんと頼りになるし、これからも頼りにさせてもらうな」
 俺はバーサーカーとしての力を使いこなすだけでなく、その精神性もすっかり一人前になったサクラを、手放しで褒め称えた。

「でもでも、よそ見はやめてよね。アタシだっていつも助けに入れるわけじゃないんだから。こいつマジ強いから、気を抜いたら死んじゃうんだからね?」

重々(じゅうじゅう)気をつけるよ」

「それで? 何か思いついたの? ケイスケのことだから、ただボーっとしてたんじゃなくて、作戦を考えてたんでしょ?」

 サクラが信頼と期待のこもった視線を向けてくる。

「ごめん、それについては実はまだ何も――」
 と、俺が言いかけたところで、

「ご無事ですかケースケ様!」
 冒険の神ミトラを鬼の形相で牽制しながら、スルスルと俺たちの位置まで下がってきたアイセルが合流した。

「アイセルにも心配かけたな、ごめん。ちょっと考え事に没頭し過ぎてた。でもサクラが守ってくれたおかげで、この通り無傷だよ」

「それは良かったです。それと助けにいけなくて申し訳ありませんでした」

「アイセルは冒険の神ミトラと1対1で戦ってたんだから仕方ないさ」
 俺のその言葉を聞いて、

「? ええっと? 冒険の神ミトラ……ですか?」
 アイセルがこてんと首を傾げた。

「ああ、ちょうどいいタイミングだから2人にも説明しておくよ。エンジェルの正体は、冒険の神ミトラなんだ」

「ええっ!? 神様ですか!?」
「どういうことなの、ケイスケ?」
「簡単に説明するとだな――」

 俺はアイセルとサクラの2人に、ここまでに解明できたエンジェルの正体について説明をした。

「ふへぇ……まさかエンジェルが神様だったなんて。どうりで桁違いに強いはずです」
 俺の説明を聞いたアイセルが感心したようにこくこくと頷いた。

「ふーん、アイツって神様なんだ……マジムカつく!」
 しかしサクラが意味不明なことを言う。

「なんでだよ? サクラのその脈絡のない思考回路に、俺は時々ついていけないんだが……」

 これが年の差って奴か?
 やだなぁもう。

「だって! アイツなんか笑ってるんだもん! 神様のくせにこっちが必死に戦ってるのを見て笑うとか、感じ悪すぎだし!」
 と、サクラがなにやら妙なことを言い出した。