「ふーん、なにここ。えらく小さいんだけど掃除用具入れ?」
ついて早々、サクラが若干不敬なことを言ってくる。
「お前はほんと正直だな……こう見えてここも神殿なんだよ」
「だって向こうの神殿はでっかいのに、こっちはメチャクチャちっちゃいじゃん! 賽銭箱だってないし、なにここ超貧乏くさいし! どうせ神頼みするならあっちでしようよ?」
「貧乏くさいとか言うな。あくまでここの寺院のメインは二大主神のオルディンとアテナイなんだ。それでこっちはおまけみたいなもんらしい。ほら一番奥にちゃんと小さな神像があるだろ?」
言いながら、俺は薄暗い奥に安置されている神像を手で指し示した。
「あれ、これって――」
それを見たアイセルが何かに気付いたように言って、
「へぇ、冒険の神ミトラじゃない、珍しいわね」
シャーリーが少し驚いたように目を見張った。
「そうだ、ここに祭られているのは冒険の神ミトラなんだ」
「つまりケースケ様は冒険の神ミトラに神頼みにきたというわけですね?」
「そういうこと」
「へー、ここって冒険の神ミトラの神殿なんだ。でもやっぱりウサギ小屋みたいに小さいよね。あははっ、ウケる!」
「だからウサギ小屋とか言うなっての」
「だって事実だし」
「ま、冒険の神だけあってミトラ神を信仰しているのはほとんど冒険者だけに限られているからな。冒険者の人口割合を考えればまぁこんなもんだろ?」
ついでに言うと冒険者はお布施とか浄財とか、そういう宗教的金銭支援をほとんどしないからな。
そもそも金持ちもあまり多くはないし。
そして先立つものないと寺院も運営ができないわけで、それを考えればこの寺院はむしろ小さいとはいえよく実入りの少ないミトラ神の神殿を置いてくれているって話である。
「でもここにミトラの神殿があるってよくケースケは知ってたわね?」
「この前、傭兵王グレタのクエストの時に、墓荒らしにあった墓の主が誰なのか調べていたんだけどさ」
「あの時は蘇った傭兵王グレタを相手に大苦戦していたのを、ケースケ様がグレタを倒してパーティの皆を救ってくれたんですよね!」
「いや、そんな大層なもんじゃなかったと思うんだけど……」
「またまた御謙遜を」
アイセルはそう言うけど、あれは本当にただの結果オーライだった。
ゴースト系には塩が効くって聞いて撒いてみたんだけど、さっぱり効果がなかったうえに、塩袋ごとあわや斬られて殺されそうになり。
でも斬られた塩袋からこぼれた大量の塩を、傭兵王グレタが踏んで勝手にこけてくれて、それで頭を打って成仏しただけだ。
そんな俺の恥ずかしい戦いっぷりが、アイセルの中ではそんな風に美化されていたなんて、もはや驚きを通り越して怖いまである……。
「まぁそれはそれとして話を戻すんだけど。その時に、昔から埋葬に関わっている地元の寺院なら何か分かるかもって思ってここに来たんだよ。残念ながら特に参考になる資料はなかったんだけど、その時に神官長の人にミトラ神の小さな神殿があるって教えてもらったんだ」
「そうだったんですね、納得です」
「ってわけで俺は今から冒険の神ミトラにお願いをする。せっかくだしみんなも祈っておこうぜ。せっかくここまで来たんだ、祈るだけならタダだしな」
俺はそう言うと目をつぶって手を合わせ、心の中で切実にお願いをした。
偉大なる冒険の神ミトラよ、お願いなのでどうか雪だけは勘弁してください。
もうあんな思いをするのは嫌なんです。
あと、できれば雨もやめて欲しいです。
なにとぞ晴天をお願いします。
この願い、どうかお聞き届けください……
その後。
俺たち4人は町でご飯を食べて、明日のクエスト出発に向けて英気を養った。
ついて早々、サクラが若干不敬なことを言ってくる。
「お前はほんと正直だな……こう見えてここも神殿なんだよ」
「だって向こうの神殿はでっかいのに、こっちはメチャクチャちっちゃいじゃん! 賽銭箱だってないし、なにここ超貧乏くさいし! どうせ神頼みするならあっちでしようよ?」
「貧乏くさいとか言うな。あくまでここの寺院のメインは二大主神のオルディンとアテナイなんだ。それでこっちはおまけみたいなもんらしい。ほら一番奥にちゃんと小さな神像があるだろ?」
言いながら、俺は薄暗い奥に安置されている神像を手で指し示した。
「あれ、これって――」
それを見たアイセルが何かに気付いたように言って、
「へぇ、冒険の神ミトラじゃない、珍しいわね」
シャーリーが少し驚いたように目を見張った。
「そうだ、ここに祭られているのは冒険の神ミトラなんだ」
「つまりケースケ様は冒険の神ミトラに神頼みにきたというわけですね?」
「そういうこと」
「へー、ここって冒険の神ミトラの神殿なんだ。でもやっぱりウサギ小屋みたいに小さいよね。あははっ、ウケる!」
「だからウサギ小屋とか言うなっての」
「だって事実だし」
「ま、冒険の神だけあってミトラ神を信仰しているのはほとんど冒険者だけに限られているからな。冒険者の人口割合を考えればまぁこんなもんだろ?」
ついでに言うと冒険者はお布施とか浄財とか、そういう宗教的金銭支援をほとんどしないからな。
そもそも金持ちもあまり多くはないし。
そして先立つものないと寺院も運営ができないわけで、それを考えればこの寺院はむしろ小さいとはいえよく実入りの少ないミトラ神の神殿を置いてくれているって話である。
「でもここにミトラの神殿があるってよくケースケは知ってたわね?」
「この前、傭兵王グレタのクエストの時に、墓荒らしにあった墓の主が誰なのか調べていたんだけどさ」
「あの時は蘇った傭兵王グレタを相手に大苦戦していたのを、ケースケ様がグレタを倒してパーティの皆を救ってくれたんですよね!」
「いや、そんな大層なもんじゃなかったと思うんだけど……」
「またまた御謙遜を」
アイセルはそう言うけど、あれは本当にただの結果オーライだった。
ゴースト系には塩が効くって聞いて撒いてみたんだけど、さっぱり効果がなかったうえに、塩袋ごとあわや斬られて殺されそうになり。
でも斬られた塩袋からこぼれた大量の塩を、傭兵王グレタが踏んで勝手にこけてくれて、それで頭を打って成仏しただけだ。
そんな俺の恥ずかしい戦いっぷりが、アイセルの中ではそんな風に美化されていたなんて、もはや驚きを通り越して怖いまである……。
「まぁそれはそれとして話を戻すんだけど。その時に、昔から埋葬に関わっている地元の寺院なら何か分かるかもって思ってここに来たんだよ。残念ながら特に参考になる資料はなかったんだけど、その時に神官長の人にミトラ神の小さな神殿があるって教えてもらったんだ」
「そうだったんですね、納得です」
「ってわけで俺は今から冒険の神ミトラにお願いをする。せっかくだしみんなも祈っておこうぜ。せっかくここまで来たんだ、祈るだけならタダだしな」
俺はそう言うと目をつぶって手を合わせ、心の中で切実にお願いをした。
偉大なる冒険の神ミトラよ、お願いなのでどうか雪だけは勘弁してください。
もうあんな思いをするのは嫌なんです。
あと、できれば雨もやめて欲しいです。
なにとぞ晴天をお願いします。
この願い、どうかお聞き届けください……
その後。
俺たち4人は町でご飯を食べて、明日のクエスト出発に向けて英気を養った。