「それで、理由ってのは?」
『最近この泉の伝説について知ってる人間が減ってきたから、ちょっと箔でも付けようかなって思いたったのよ。ほら、こうやったらまた人間たちの間で大きく話題になるかなって思ったわけ』
「話題作りってことか。でもそれで盟約の更新がされなくなったら、それこそ本末転倒じゃないのか?」
『うーん、いい案だと思ったんだけど、ちょっと難易度高くしすぎたかなぁ。難しい方がレジェンド感高くなるかなって思ったんだけど……』
「レジェンド感って……なんか言葉が軽いなぁ。こんなの普通に危な過ぎて近づけないだろ? Aランクパーティが逃げ帰って、俺たちSランクパーティに依頼が回ってきたくらいだぞ?」
『難しい方があーしようこうしようって考えるから、より話題になると思ったんだけどなぁ。こうワールドワイドな感じで。名をあげたい冒険者がブワァッ!って押し寄せるかなって』
「それにしても通常のパーティランクじゃ最上位のAランクパーティが、まったく歯が立たないのはさすがにやり過ぎだろ」
昔の人は言いました、過ぎたるはなお及ばざるが如しだと。
『しょぼーん』
ウンディーネが肩を落とした。
「あはは、ウケる!」
『しかも一番アホそうなのに笑われた……マジつらい。せっかく看板まで立ててアピールしたのに』
「ああ、あの看板ってウンディーネが自分で用意してたんだな……」
入り口にあった『こちら⇦精霊の森/精霊の泉』と書かれた立て看板の謎が、期せずして解けてしまったよ。
『ふふん、一目瞭然で分かりやすかったでしょ? 私ってばユーザーフレンドリーがモットーの精霊だから』
「いや俺たちは知ってたから気にならなかったけど、事前情報がなければ余計なことを考えさせる心理戦の一環――つまり罠かと思ったかも?」
『がーん!?』
「ま、そんな高難度仕様なのに、ここまで怪我人が出なかったのは幸いだったよ。大きな被害がなければ、冒険者ギルドへの報告書にもその辺りのことは適当にごまかして書けるからさ」
もし死人が出てたりするとね。
悪性精霊ってことで最悪討伐の話も出てくるだろうし、俺も見聞きしたことを正直に書かざるを得ないからさ。
『ああそれは、ドリアード達には人間に怪我はさせないようにって言っておいたからよ。逆にドリアード達にもヤバそうになったら、逃げても降伏してもいいって言っておいたし』
「ああ、それで調査チームは全員無傷で帰れたし、ドリアードもすぐに黒幕について白状したのか……」
またまた謎が一つ解けてしまったよ。
ほんとなんでも素直に答えてくれる精霊さんは素敵だね。
俺は正直な相手はとても好きだよ。
『でもぉ、最近の人間ってばほんと根性なしよね。怪我させるつもりなんてないのに、すぐ逃げ帰っちゃうんだもん』
「だからウンディーネたちがそんな意図だったなんて、こっちは知りようがないからな?」
『それくらい察しなさいよね。忖度しないと偉くなれないのが、人間の社会なんでしょ?』
「いや察するのはさすがに無理だろ……あと人間社会はそういう側面は多々あるけど、もうちょっとはまともだからな?」
『ふむ、つまり高位の精霊たる私の超スゴい考えを察するのは、浅薄な人間には無理だったということね……スゴすぎるってのも罪よね……』
ほんとウンディーネは素直なんだけど、自己評価の高さもほんと半端ないなぁ……時々会話がすれ違ってます。
と、
「あの、すみませんウンディーネさん。質問よろしいでしょうか?」
ここまで聞きに徹していたアイセルが、授業でも受けているみたいに律義に手をあげて発言した。
『なーに、エルフの可愛い子』
「そもそもの話として、どうして箔を付けたり話題になるようにとしようと思ったんでしょうか?」
『それはもちろん人々からの信仰心を集めるためよ』
「信仰心ですか?」
アイセルがこてんと可愛らしく首をかしげた。
『最近この泉の伝説について知ってる人間が減ってきたから、ちょっと箔でも付けようかなって思いたったのよ。ほら、こうやったらまた人間たちの間で大きく話題になるかなって思ったわけ』
「話題作りってことか。でもそれで盟約の更新がされなくなったら、それこそ本末転倒じゃないのか?」
『うーん、いい案だと思ったんだけど、ちょっと難易度高くしすぎたかなぁ。難しい方がレジェンド感高くなるかなって思ったんだけど……』
「レジェンド感って……なんか言葉が軽いなぁ。こんなの普通に危な過ぎて近づけないだろ? Aランクパーティが逃げ帰って、俺たちSランクパーティに依頼が回ってきたくらいだぞ?」
『難しい方があーしようこうしようって考えるから、より話題になると思ったんだけどなぁ。こうワールドワイドな感じで。名をあげたい冒険者がブワァッ!って押し寄せるかなって』
「それにしても通常のパーティランクじゃ最上位のAランクパーティが、まったく歯が立たないのはさすがにやり過ぎだろ」
昔の人は言いました、過ぎたるはなお及ばざるが如しだと。
『しょぼーん』
ウンディーネが肩を落とした。
「あはは、ウケる!」
『しかも一番アホそうなのに笑われた……マジつらい。せっかく看板まで立ててアピールしたのに』
「ああ、あの看板ってウンディーネが自分で用意してたんだな……」
入り口にあった『こちら⇦精霊の森/精霊の泉』と書かれた立て看板の謎が、期せずして解けてしまったよ。
『ふふん、一目瞭然で分かりやすかったでしょ? 私ってばユーザーフレンドリーがモットーの精霊だから』
「いや俺たちは知ってたから気にならなかったけど、事前情報がなければ余計なことを考えさせる心理戦の一環――つまり罠かと思ったかも?」
『がーん!?』
「ま、そんな高難度仕様なのに、ここまで怪我人が出なかったのは幸いだったよ。大きな被害がなければ、冒険者ギルドへの報告書にもその辺りのことは適当にごまかして書けるからさ」
もし死人が出てたりするとね。
悪性精霊ってことで最悪討伐の話も出てくるだろうし、俺も見聞きしたことを正直に書かざるを得ないからさ。
『ああそれは、ドリアード達には人間に怪我はさせないようにって言っておいたからよ。逆にドリアード達にもヤバそうになったら、逃げても降伏してもいいって言っておいたし』
「ああ、それで調査チームは全員無傷で帰れたし、ドリアードもすぐに黒幕について白状したのか……」
またまた謎が一つ解けてしまったよ。
ほんとなんでも素直に答えてくれる精霊さんは素敵だね。
俺は正直な相手はとても好きだよ。
『でもぉ、最近の人間ってばほんと根性なしよね。怪我させるつもりなんてないのに、すぐ逃げ帰っちゃうんだもん』
「だからウンディーネたちがそんな意図だったなんて、こっちは知りようがないからな?」
『それくらい察しなさいよね。忖度しないと偉くなれないのが、人間の社会なんでしょ?』
「いや察するのはさすがに無理だろ……あと人間社会はそういう側面は多々あるけど、もうちょっとはまともだからな?」
『ふむ、つまり高位の精霊たる私の超スゴい考えを察するのは、浅薄な人間には無理だったということね……スゴすぎるってのも罪よね……』
ほんとウンディーネは素直なんだけど、自己評価の高さもほんと半端ないなぁ……時々会話がすれ違ってます。
と、
「あの、すみませんウンディーネさん。質問よろしいでしょうか?」
ここまで聞きに徹していたアイセルが、授業でも受けているみたいに律義に手をあげて発言した。
『なーに、エルフの可愛い子』
「そもそもの話として、どうして箔を付けたり話題になるようにとしようと思ったんでしょうか?」
『それはもちろん人々からの信仰心を集めるためよ』
「信仰心ですか?」
アイセルがこてんと可愛らしく首をかしげた。