翌日。
この観光地の象徴たるアイセルご本人の到来を知った観光協会の偉い人から、直々に、
「どうかお願いします、なにとぞこの通り!」
と懇願されたアイセルは、様々な緊急イベントに顔を出すことになった。
まず最初に行われた『地元初開催! アイセル講演会!』では、観光地となっている地元開催と言うこともあって話が盛り上がりに盛り上がったあげく、アイセルが歌まで披露させられて。
「ううっ、こんなに大勢の前で歌うのは初めて緊張しました……変じゃなかったですか?」
おかげで顔を真っ赤にして涙目で報告してくる可愛いアイセルを見ることができたのだった。
「安心しろ、すごく上手だったぞ。みんなすごく盛り上がってたし、俺も聞きほれた」
「そうですか? ケースケ様が喜んでくれたならいいんですけど……」
「冒険者って普段から身体を動かしてて肺活量も多いし、戦闘中は大きな声も出すから、歌うのに向いてる職業ではあるんだよな」
「ほんとほんと、すごく上手かったよ! また今度聞かせてね!」
「歌って戦える冒険者として、さらに有名になりそうね」
「なるほどそうか、今度からアイセルの講演会をする時は生歌有りにするのもありかもな。歌姫冒険者アイセルの誕生だ」
「えっとあの。ほ、ほどほどでお願いします……」
次に行われた『世界初開催! アイセル演武会!』では。
「こちらに用意しましたるは高さ3メートル、幅4メートルを優に超える大岩。この通り、とても硬いこの大岩を今からアイセルさんが斬ってみせます」
司会の人が大岩を棒でこんこんと叩いて硬さをアピールしながら言うと、
観衆からは『いくらSランクパーティのエースとはいえ、さすがにこの大きな岩は斬れないんじゃ……』『ちょっと無理じゃない……?』などといった、いぶかしむ声がちらほら聞こえてきた。
しかしアイセルはというと、恥ずかしそうに歌を歌っていた時とは一転、自信に満ちあふれた顔で岩の前まで歩いていくと、
「では行きます、『剣気帯刃・オーラブレード』!」
抜刀と同時にスキルを発動した。
「「「「「おおおっ!!」」」」」
アイセルの魔法剣リヴァイアスが上位スキルによって美しいオーラをまとうと、観衆からは大きな歓声が上がる。
そしてアイセルは一度大きく深呼吸をして集中力を高めると上段に振りかぶり、
「ハァッ!」
魔法剣リヴァイアスを袈裟斬りに鋭く振り抜いた!
チン――ッ!
とても岩を斬ったとは思えない、鈴が鳴ったような澄んだ高い音がして――しかし大岩には一見何の変化も現れなかった。
すぐに観衆がざわざわしはじめて、
「すみません、ちょっと失敗しました」
アイセルが申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
観衆からは『やっぱ無理か』『さすがにこれはね』『気にする必要ないよ!』という温かい声が飛んでくる。
「あ、いえ、そういう意味ではなくてですね。綺麗に斬り過ぎて、上手く上の部分が滑り落ちなかったんです」
言いながらアイセルがコンコンと軽く大岩のてっぺんを剣で叩くと、その上半分がスッと斜めに滑り落ちた。
大岩の上半分は、そのまま地面に落下してドスンと大きな音をたてる。
一瞬の静寂の後、
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおっっ!!??」」」」」」
地鳴りのようなどよめきが巻き起こった。
「すっげぇぇぇぇえええ!? っていうか綺麗に斬り過ぎたってなに!?」
もちろん俺も一緒になって驚いていた。
俺も一般観衆同様、何が起こったのかちっとも見えておりませんでしたので。
後衛不遇職のバッファーなめんなよ?
この観光地の象徴たるアイセルご本人の到来を知った観光協会の偉い人から、直々に、
「どうかお願いします、なにとぞこの通り!」
と懇願されたアイセルは、様々な緊急イベントに顔を出すことになった。
まず最初に行われた『地元初開催! アイセル講演会!』では、観光地となっている地元開催と言うこともあって話が盛り上がりに盛り上がったあげく、アイセルが歌まで披露させられて。
「ううっ、こんなに大勢の前で歌うのは初めて緊張しました……変じゃなかったですか?」
おかげで顔を真っ赤にして涙目で報告してくる可愛いアイセルを見ることができたのだった。
「安心しろ、すごく上手だったぞ。みんなすごく盛り上がってたし、俺も聞きほれた」
「そうですか? ケースケ様が喜んでくれたならいいんですけど……」
「冒険者って普段から身体を動かしてて肺活量も多いし、戦闘中は大きな声も出すから、歌うのに向いてる職業ではあるんだよな」
「ほんとほんと、すごく上手かったよ! また今度聞かせてね!」
「歌って戦える冒険者として、さらに有名になりそうね」
「なるほどそうか、今度からアイセルの講演会をする時は生歌有りにするのもありかもな。歌姫冒険者アイセルの誕生だ」
「えっとあの。ほ、ほどほどでお願いします……」
次に行われた『世界初開催! アイセル演武会!』では。
「こちらに用意しましたるは高さ3メートル、幅4メートルを優に超える大岩。この通り、とても硬いこの大岩を今からアイセルさんが斬ってみせます」
司会の人が大岩を棒でこんこんと叩いて硬さをアピールしながら言うと、
観衆からは『いくらSランクパーティのエースとはいえ、さすがにこの大きな岩は斬れないんじゃ……』『ちょっと無理じゃない……?』などといった、いぶかしむ声がちらほら聞こえてきた。
しかしアイセルはというと、恥ずかしそうに歌を歌っていた時とは一転、自信に満ちあふれた顔で岩の前まで歩いていくと、
「では行きます、『剣気帯刃・オーラブレード』!」
抜刀と同時にスキルを発動した。
「「「「「おおおっ!!」」」」」
アイセルの魔法剣リヴァイアスが上位スキルによって美しいオーラをまとうと、観衆からは大きな歓声が上がる。
そしてアイセルは一度大きく深呼吸をして集中力を高めると上段に振りかぶり、
「ハァッ!」
魔法剣リヴァイアスを袈裟斬りに鋭く振り抜いた!
チン――ッ!
とても岩を斬ったとは思えない、鈴が鳴ったような澄んだ高い音がして――しかし大岩には一見何の変化も現れなかった。
すぐに観衆がざわざわしはじめて、
「すみません、ちょっと失敗しました」
アイセルが申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
観衆からは『やっぱ無理か』『さすがにこれはね』『気にする必要ないよ!』という温かい声が飛んでくる。
「あ、いえ、そういう意味ではなくてですね。綺麗に斬り過ぎて、上手く上の部分が滑り落ちなかったんです」
言いながらアイセルがコンコンと軽く大岩のてっぺんを剣で叩くと、その上半分がスッと斜めに滑り落ちた。
大岩の上半分は、そのまま地面に落下してドスンと大きな音をたてる。
一瞬の静寂の後、
「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおっっ!!??」」」」」」
地鳴りのようなどよめきが巻き起こった。
「すっげぇぇぇぇえええ!? っていうか綺麗に斬り過ぎたってなに!?」
もちろん俺も一緒になって驚いていた。
俺も一般観衆同様、何が起こったのかちっとも見えておりませんでしたので。
後衛不遇職のバッファーなめんなよ?