100体を越えるリヴィング・メイルをあらかた片づけ終わった頃。
パーティ『アルケイン』の勝利の目前で――次なる異変が発生した。
「ちょっとケイスケ、なんか今までのとぜんぜん違う、ちょお強そうなのが出てきたんだけど!?」
1体のリヴィング・メイルがゆらりと地中から姿を現したのだ。
そのまとっているオーラはサクラが一目見てビビるほどに、今までのリヴィング・メイルとは明らかに違っていた。
言うなればそれは歴戦の猛勇。
右手には、大きく曲がった漆黒の曲刀――シャムシールをだらりと下げ、鎧の音も立てずにまるで自然体で近づいてくるのだ。
「どうもボスっぽいのが出てきちゃったみたいね」
「ケースケ様、シャーリーさんと下がっていてください。サクラ、連携攻撃です。一気の攻撃で撃破――は無理でも、まずは機先を制します」
「う、うん! 分かった!」
アイセルが前衛リーダーらしく鋭い声で指示を出すと、素早く斬りかかった。
さらにサクラもいつも通りに連携してバトルアックスを打ちこもうとして、
「うっ、このっ!? アイセルさんを盾にして――」
しかし全く近づけずに手を出しかねていた。
サクラは何度か攻撃参加しようとして、しかしどうしても攻撃に入れないでいるのだ。
「立ち回りでアイセルの位置を絶妙にコントロールすることで、アイセルをサクラに対する盾として使って連携攻撃させないようにしてるのね、やるわね」
俺の隣で一緒に戦況を見守っていたシャーリーが、拳を口元に当てながら小さくつぶやいた。
シャーリーの見立て通り、サクラが攻撃しようとしても、どうしてもアイセルが間に入ってしまって上手く攻撃に入れないようだ。
「つまりあのリヴィング・メイルはアイセルよりも戦闘技術で上回っていて、2対1なのに常に1対1の局面を作り出してるってわけか。アイセルが自由に戦えないくらいとなると、かなりの上位種だぞ、これ」
リヴィング・メイルの強さは、生前の強さに比例すると言われている。
正規の騎士剣術を学び、接近戦ではSランク相手にもまず負けたことがないアイセルが、こうもやすやすと手玉に取られるのだ。
下手をしたら歴史上の剣の達人の可能性のまであるぞ……!
「でもケースケ。ここって傭兵や一般兵士向けの国立墓苑よね? そんなに有名な剣士が眠ってるとは思えないんだけど?」
「いや、そうとも言いきれないさ」
「さすがケースケ、心当たりがありそうね?」
「確証はないんだけど、あの黒光りする曲刀……もしかして傭兵王グレタじゃないかな?」
「傭兵王グレタって、一介の傭兵から小さな国とはいえ自分の国を作って王にまで上りつめた、『国盗り物語』の主人公よね? あ、そう言えば黒い曲刀を武器にしてたかも」
「だろ? しかも傭兵王グレタは、王にまでなったのに墓が残っていないんだ。その代わりに、先に逝った仲間たちと同じ場所に埋葬してほしいと言い残したって伝説が、たしかあったはずなんだよ」
「あらまぁ、いろいろバッチリ当てはまっちゃうわね」
「なによりあの剣の技だろ? 剣神とまで言われた傭兵王グレタなら、アイセルがいいようにあしらわれるのにも納得できる」
「つまり傭兵王グレタが仲間たちと静かに眠っていたところを盗掘されて、怒り心頭でゴーストになっちゃったってわけね」
「確証はないけど、その可能性は高いと思う」
「ちなみになにか策はあったりする?」
「いや、そこまではまだ……」
俺はそこで言葉に詰まってしまった。
「まああれだけ正攻法で強いと、少々の策じゃあ意味はなさそうだもんね」
シャーリーの言うとおりで、傭兵王グレタのリヴィング・メイル――長いんでリヴィング・グレタと呼ぼう――は圧倒的な剣の技でもって、真っ向勝負の正攻法で攻めてきている。
正攻法ってのはそれが正しいとされているだけあって、突き詰めればやっぱり強いのだ。
生半可な作戦じゃ、かえってアイセルの足を引っ張ってしまうだろう。
パーティ『アルケイン』の勝利の目前で――次なる異変が発生した。
「ちょっとケイスケ、なんか今までのとぜんぜん違う、ちょお強そうなのが出てきたんだけど!?」
1体のリヴィング・メイルがゆらりと地中から姿を現したのだ。
そのまとっているオーラはサクラが一目見てビビるほどに、今までのリヴィング・メイルとは明らかに違っていた。
言うなればそれは歴戦の猛勇。
右手には、大きく曲がった漆黒の曲刀――シャムシールをだらりと下げ、鎧の音も立てずにまるで自然体で近づいてくるのだ。
「どうもボスっぽいのが出てきちゃったみたいね」
「ケースケ様、シャーリーさんと下がっていてください。サクラ、連携攻撃です。一気の攻撃で撃破――は無理でも、まずは機先を制します」
「う、うん! 分かった!」
アイセルが前衛リーダーらしく鋭い声で指示を出すと、素早く斬りかかった。
さらにサクラもいつも通りに連携してバトルアックスを打ちこもうとして、
「うっ、このっ!? アイセルさんを盾にして――」
しかし全く近づけずに手を出しかねていた。
サクラは何度か攻撃参加しようとして、しかしどうしても攻撃に入れないでいるのだ。
「立ち回りでアイセルの位置を絶妙にコントロールすることで、アイセルをサクラに対する盾として使って連携攻撃させないようにしてるのね、やるわね」
俺の隣で一緒に戦況を見守っていたシャーリーが、拳を口元に当てながら小さくつぶやいた。
シャーリーの見立て通り、サクラが攻撃しようとしても、どうしてもアイセルが間に入ってしまって上手く攻撃に入れないようだ。
「つまりあのリヴィング・メイルはアイセルよりも戦闘技術で上回っていて、2対1なのに常に1対1の局面を作り出してるってわけか。アイセルが自由に戦えないくらいとなると、かなりの上位種だぞ、これ」
リヴィング・メイルの強さは、生前の強さに比例すると言われている。
正規の騎士剣術を学び、接近戦ではSランク相手にもまず負けたことがないアイセルが、こうもやすやすと手玉に取られるのだ。
下手をしたら歴史上の剣の達人の可能性のまであるぞ……!
「でもケースケ。ここって傭兵や一般兵士向けの国立墓苑よね? そんなに有名な剣士が眠ってるとは思えないんだけど?」
「いや、そうとも言いきれないさ」
「さすがケースケ、心当たりがありそうね?」
「確証はないんだけど、あの黒光りする曲刀……もしかして傭兵王グレタじゃないかな?」
「傭兵王グレタって、一介の傭兵から小さな国とはいえ自分の国を作って王にまで上りつめた、『国盗り物語』の主人公よね? あ、そう言えば黒い曲刀を武器にしてたかも」
「だろ? しかも傭兵王グレタは、王にまでなったのに墓が残っていないんだ。その代わりに、先に逝った仲間たちと同じ場所に埋葬してほしいと言い残したって伝説が、たしかあったはずなんだよ」
「あらまぁ、いろいろバッチリ当てはまっちゃうわね」
「なによりあの剣の技だろ? 剣神とまで言われた傭兵王グレタなら、アイセルがいいようにあしらわれるのにも納得できる」
「つまり傭兵王グレタが仲間たちと静かに眠っていたところを盗掘されて、怒り心頭でゴーストになっちゃったってわけね」
「確証はないけど、その可能性は高いと思う」
「ちなみになにか策はあったりする?」
「いや、そこまではまだ……」
俺はそこで言葉に詰まってしまった。
「まああれだけ正攻法で強いと、少々の策じゃあ意味はなさそうだもんね」
シャーリーの言うとおりで、傭兵王グレタのリヴィング・メイル――長いんでリヴィング・グレタと呼ぼう――は圧倒的な剣の技でもって、真っ向勝負の正攻法で攻めてきている。
正攻法ってのはそれが正しいとされているだけあって、突き詰めればやっぱり強いのだ。
生半可な作戦じゃ、かえってアイセルの足を引っ張ってしまうだろう。