「シャーリーが完全回復したので、今日から新しいクエストに取り掛かろうと思う」
俺の言葉に、戦略会議室(屋敷の居間のことね)に集まったパーティ『アルケイン』の面々が神妙な顔をして頷いた。
「次のクエストは既に伝えているように、彷徨う鎧――リヴィング・メイルだ。しかもかなりの数が群れて出る」
俺のその言葉にパーティの3人の女の子たちは、三者三様の反応を見せた。
「リヴィング・メイルってことは、またゴーストなんですよね……」
まずアイセルがちょっとだけ沈んだ声で言った。
「アイセルはゴーストと戦うのは苦手か?」
「そうですね……前回キング・オー・ランタン相手に苦戦させられたので、少し苦手意識があると思います。普通の生物相手とは戦い方が全然違うのが、とても難しかったです」
なるほどな、そういう不安か。
冒険者はやはりまず第一に慎重であるべきだ。
周到に準備を重ね、問題点を洗い出し、しかしいざ行動に移す時は大胆不敵に。
そういう意味でアイセルは自己分析もできてるし、俺から見る限りはなんの問題もないはずだった。
つまりアイセルの不安ってのは、とても高いレベルでの不安なんだよな。
『できないかも……』ではなく、『多分できるけど、慣れてないし、上手くやれないかも……』という類の不安なのだ。
「そのことが分かってれば十分だと思うぞ? しっかりと準備していつも通りやれば、アイセルなら何の問題もないよ」
なので俺はアイセルを安心させるように、そう優しく言ってあげた。
アイセルについては、俺は全幅の信頼を置いている。
普通にやってくれれば何の問題もない。
逆に。
一番ダメなのはすぐに調子に乗るヤツだ。
「ふふん、そこは精霊攻撃をマスターした私に任せなさいってば! ばっちこーい!」
こういうサクラみたいなタイプな。
アイセルとは対照的に、サクラはむやみやたらとやる気満々だった。
この前やった精霊攻撃をもう一度実戦で試したくて試したくて、うずうずしているんだろう。
驚異の回復力でミスしても大怪我しにくいバーサーカーとはいえ、その力も無尽蔵ではないわけで。
サクラに関しては好き勝手突っこんでいかないように、俺が少し手綱を締めておかないといけないかな。
「前衛リーダーはアイセルだから、ちゃんとアイセルの指示を聞いて動くんだぞ。チームプレーが大事だからな? ワン・フォー・オール、一人はみんなのためにだ」
「もう分かってるってば。ほんとケイスケは心配性なんだから、ノープロブレム!」
ああ、こんな信用のない「分かってる」はないだろうな、うん。
俺は心のメモに「サクラに自重するよう頻繁に声掛け」と書きこんだ。
「でもどうしてリヴィング・メイルが? 単体Bランク、群れA+ランクだけど、遭遇例があまり多くない珍しいゴーストよね?」
そしてシャーリーは発生原因について気になるようだった。
「ここの郊外に大きな墓地があるんだけどさ。そこで派手な盗掘騒ぎがあったらしいんだよ」
「それって、昔の戦争で死んだ兵隊さんのお墓がある国立墓苑ですか?」
「お、アイセル詳しいな」
「ケースケ様と過ごす中で、情報がいかに大事かということを学んだので、最近はどんなことでもなるべく気にするようにしてるんです」
「偉いなぁアイセル。お前は冒険者の鑑だよ……」
俺はアイセルの成長の早さ&旺盛な意欲をまざまざと見せつけられて、思わず目頭が熱くなっていた。
打てば響くとは、こういうことを言うんだろうなぁ。
「えへへ、それもこれもケースケ様のおかげですから。でも何に注目したらいいか、情報の取捨選択がなかなか難しいんですよね。全部が全部チェックするのは無理ですし」
「それも込みで日々勉強だな。分からないことがあったら何でも聞いてくれよ、遠慮はいらないからな」
「はい!」
「で、話を戻すんだけど。その盗掘があった時に、ちょっと死者を冒涜する感じのアレがあったらしいんだよ。それで――」
「あ、なんか話が見えてきたかも! あれでしょ、盗掘した犯人たちは全員死体で見つかって、それと前後して墓地にリヴィング・メイルが出るようになった! 的な感じでしょ?」
「おおむね正解だサクラ」
言葉をかぶせられた上に、さぁ話そうとした内容をさらっと横から言われても笑って流す俺、えらい。
俺もいい年した大人だからね。
「ふふん、どんなもんよ!」
でもだめだ、サクラがまたさらに調子に乗ってしまった。
見事な推理ではあったのでもう少しだけ褒めてあげようと思ったけど、これ以上調子に乗らないようにここは褒めないでおこう。
「まったく、盗掘したあげくにリヴィング・メイルを呼びだしちゃって、しかも本人たちは死亡だなんて、どうしようもないわね」
「まあそういうわけなんで、荒ぶる御霊の鎮魂の意味も込めて討伐にいこうと思う」
俺の締めの言葉に、
「了解です」
「はーい!」
「オッケー」
3人がしっかりと頷いた。
俺の言葉に、戦略会議室(屋敷の居間のことね)に集まったパーティ『アルケイン』の面々が神妙な顔をして頷いた。
「次のクエストは既に伝えているように、彷徨う鎧――リヴィング・メイルだ。しかもかなりの数が群れて出る」
俺のその言葉にパーティの3人の女の子たちは、三者三様の反応を見せた。
「リヴィング・メイルってことは、またゴーストなんですよね……」
まずアイセルがちょっとだけ沈んだ声で言った。
「アイセルはゴーストと戦うのは苦手か?」
「そうですね……前回キング・オー・ランタン相手に苦戦させられたので、少し苦手意識があると思います。普通の生物相手とは戦い方が全然違うのが、とても難しかったです」
なるほどな、そういう不安か。
冒険者はやはりまず第一に慎重であるべきだ。
周到に準備を重ね、問題点を洗い出し、しかしいざ行動に移す時は大胆不敵に。
そういう意味でアイセルは自己分析もできてるし、俺から見る限りはなんの問題もないはずだった。
つまりアイセルの不安ってのは、とても高いレベルでの不安なんだよな。
『できないかも……』ではなく、『多分できるけど、慣れてないし、上手くやれないかも……』という類の不安なのだ。
「そのことが分かってれば十分だと思うぞ? しっかりと準備していつも通りやれば、アイセルなら何の問題もないよ」
なので俺はアイセルを安心させるように、そう優しく言ってあげた。
アイセルについては、俺は全幅の信頼を置いている。
普通にやってくれれば何の問題もない。
逆に。
一番ダメなのはすぐに調子に乗るヤツだ。
「ふふん、そこは精霊攻撃をマスターした私に任せなさいってば! ばっちこーい!」
こういうサクラみたいなタイプな。
アイセルとは対照的に、サクラはむやみやたらとやる気満々だった。
この前やった精霊攻撃をもう一度実戦で試したくて試したくて、うずうずしているんだろう。
驚異の回復力でミスしても大怪我しにくいバーサーカーとはいえ、その力も無尽蔵ではないわけで。
サクラに関しては好き勝手突っこんでいかないように、俺が少し手綱を締めておかないといけないかな。
「前衛リーダーはアイセルだから、ちゃんとアイセルの指示を聞いて動くんだぞ。チームプレーが大事だからな? ワン・フォー・オール、一人はみんなのためにだ」
「もう分かってるってば。ほんとケイスケは心配性なんだから、ノープロブレム!」
ああ、こんな信用のない「分かってる」はないだろうな、うん。
俺は心のメモに「サクラに自重するよう頻繁に声掛け」と書きこんだ。
「でもどうしてリヴィング・メイルが? 単体Bランク、群れA+ランクだけど、遭遇例があまり多くない珍しいゴーストよね?」
そしてシャーリーは発生原因について気になるようだった。
「ここの郊外に大きな墓地があるんだけどさ。そこで派手な盗掘騒ぎがあったらしいんだよ」
「それって、昔の戦争で死んだ兵隊さんのお墓がある国立墓苑ですか?」
「お、アイセル詳しいな」
「ケースケ様と過ごす中で、情報がいかに大事かということを学んだので、最近はどんなことでもなるべく気にするようにしてるんです」
「偉いなぁアイセル。お前は冒険者の鑑だよ……」
俺はアイセルの成長の早さ&旺盛な意欲をまざまざと見せつけられて、思わず目頭が熱くなっていた。
打てば響くとは、こういうことを言うんだろうなぁ。
「えへへ、それもこれもケースケ様のおかげですから。でも何に注目したらいいか、情報の取捨選択がなかなか難しいんですよね。全部が全部チェックするのは無理ですし」
「それも込みで日々勉強だな。分からないことがあったら何でも聞いてくれよ、遠慮はいらないからな」
「はい!」
「で、話を戻すんだけど。その盗掘があった時に、ちょっと死者を冒涜する感じのアレがあったらしいんだよ。それで――」
「あ、なんか話が見えてきたかも! あれでしょ、盗掘した犯人たちは全員死体で見つかって、それと前後して墓地にリヴィング・メイルが出るようになった! 的な感じでしょ?」
「おおむね正解だサクラ」
言葉をかぶせられた上に、さぁ話そうとした内容をさらっと横から言われても笑って流す俺、えらい。
俺もいい年した大人だからね。
「ふふん、どんなもんよ!」
でもだめだ、サクラがまたさらに調子に乗ってしまった。
見事な推理ではあったのでもう少しだけ褒めてあげようと思ったけど、これ以上調子に乗らないようにここは褒めないでおこう。
「まったく、盗掘したあげくにリヴィング・メイルを呼びだしちゃって、しかも本人たちは死亡だなんて、どうしようもないわね」
「まあそういうわけなんで、荒ぶる御霊の鎮魂の意味も込めて討伐にいこうと思う」
俺の締めの言葉に、
「了解です」
「はーい!」
「オッケー」
3人がしっかりと頷いた。