アイセルの疑問はもっともだった。
なにせバッファーは不遇職で不人気のため、成り手がほとんどいない。
それはつまり、バッファーという職業を知る機会がほとんどないということだ。
実際、今俺たちがいる冒険者ギルドもバッファー登録者は俺の他には1人もいないからな。
下手したらそんなマイナー職業があることすら、知られてないんじゃないだろうか?
「んー、苦手って言うか戦闘スキルは1つも持ってないんだよな」
「1つもですか? ほとんどの職業にある『体力強化』とかもないんですか?」
「ないよ。バッファーの習得するスキルはたった1つ、バフスキルだけだ。そしてその唯一のバフスキルの性能が、ひたすら伸びていくだけなんだよ」
「ふへぇ、そうなんですね」
「だから戦闘で下手に余計なことをすると、返って戦闘専門職の味方の足を引っ張っちゃうのがバッファーって職業なんだよな」
俺はしみじみとつぶやいた。
冒険を始めた最初の頃は、アンジュにいいとこ見せようとしていつも失敗していたなぁ……。
「バッファーって大変なんですね……」
「そうなんだよ、ほんと大変なんだよ。しかもだぞ? レベル30くらいまでは効果範囲があまり広くないからさ。味方がバフスキルの効果範囲から外れないように、ひたすらパーティのメンバーから等間隔の場所に移動する、ってのが役目だったからなぁ……」
「と、等間隔の場所に移動するのが役目……それは辛いですね、その冒険者として……」
冒険者は多かれ少なかれ、自分が自分が!って目立ちたがりのタイプが多い。
だからアイセルみたいな万能前衛ともよばれる魔法戦士は、誰もがなりたがるんだけど。
悲しいかな、職業というものは冒険者ギルドにある特殊な水晶に触れることで、本人の意思に関係なく自動で決まってしまうのだ。
『世界の真理を解き明かさんとする者(=冒険者のことね)』は、世界を作った創造神から自動的に『世界の真理に挑むための特別な力(=職業のことね)』を授けられる。
――だのなんだのと言われているものの、誰もその創造神とやらを見たことがないので本当のところはわからない。
そして自分の職業が後衛不遇職のバッファーだと分かった瞬間に、冒険者を諦める人間がほとんどだった。
創造神なる者はいったい何を思ってこのバッファーとか言う超絶後衛不遇職をお作りになられたのか。
機会があったら聞いてみたいよ。
「そういうわけだから、ガチガチのアタッカーのアイセルと戦ったら、レベル差が10倍近くあっても負ける、確実に負ける。100回やったら100回負ける。『もしも』なんてものはない」
俺のできる「なんちゃって護身術」で、アイセルの剣技と身のこなしに対応できるとは思えない。
「またまたご冗談を――」
「いやいや、これが全然冗談じゃないんだよな」
「え――」
「もし俺がまともに戦えると思ってるなら、その考えは今すぐ改めておいて欲しい。でないと俺が死ぬから。あ、これは本気でマジな話な」
「マジな話ですか……(;´・ω・)」
「魔法戦士みたいな普通の職業はレベルアップごとにステータスが上昇して、戦闘や冒険に必要なスキルや耐性なんかを習得していくだろ?」
「はい、わたしも色んな戦闘補助スキルが増えてます。『疲労軽減』とか『集中』とかそんな感じで」
「それに対してバッファーはさ、さっきも言ったけどレベルが上がってもひたすらバフスキルの性能が上がっていくだけなんだ。効果が上がって、持続時間が長くなって、範囲が広くなる。それだけなんだ」
「そ、そうなんですね」
「だから味方の援護がないバッファーは、一般人より気持ちマシくらいだと思っててくれ」
なにせバッファーときたら開幕バフったら本当にすることがない、不遇職の代名詞なのだから。
「わ、わかりました……」
俺の言葉に、アイセルが神妙な顔でうなずいた。
なにせバッファーは不遇職で不人気のため、成り手がほとんどいない。
それはつまり、バッファーという職業を知る機会がほとんどないということだ。
実際、今俺たちがいる冒険者ギルドもバッファー登録者は俺の他には1人もいないからな。
下手したらそんなマイナー職業があることすら、知られてないんじゃないだろうか?
「んー、苦手って言うか戦闘スキルは1つも持ってないんだよな」
「1つもですか? ほとんどの職業にある『体力強化』とかもないんですか?」
「ないよ。バッファーの習得するスキルはたった1つ、バフスキルだけだ。そしてその唯一のバフスキルの性能が、ひたすら伸びていくだけなんだよ」
「ふへぇ、そうなんですね」
「だから戦闘で下手に余計なことをすると、返って戦闘専門職の味方の足を引っ張っちゃうのがバッファーって職業なんだよな」
俺はしみじみとつぶやいた。
冒険を始めた最初の頃は、アンジュにいいとこ見せようとしていつも失敗していたなぁ……。
「バッファーって大変なんですね……」
「そうなんだよ、ほんと大変なんだよ。しかもだぞ? レベル30くらいまでは効果範囲があまり広くないからさ。味方がバフスキルの効果範囲から外れないように、ひたすらパーティのメンバーから等間隔の場所に移動する、ってのが役目だったからなぁ……」
「と、等間隔の場所に移動するのが役目……それは辛いですね、その冒険者として……」
冒険者は多かれ少なかれ、自分が自分が!って目立ちたがりのタイプが多い。
だからアイセルみたいな万能前衛ともよばれる魔法戦士は、誰もがなりたがるんだけど。
悲しいかな、職業というものは冒険者ギルドにある特殊な水晶に触れることで、本人の意思に関係なく自動で決まってしまうのだ。
『世界の真理を解き明かさんとする者(=冒険者のことね)』は、世界を作った創造神から自動的に『世界の真理に挑むための特別な力(=職業のことね)』を授けられる。
――だのなんだのと言われているものの、誰もその創造神とやらを見たことがないので本当のところはわからない。
そして自分の職業が後衛不遇職のバッファーだと分かった瞬間に、冒険者を諦める人間がほとんどだった。
創造神なる者はいったい何を思ってこのバッファーとか言う超絶後衛不遇職をお作りになられたのか。
機会があったら聞いてみたいよ。
「そういうわけだから、ガチガチのアタッカーのアイセルと戦ったら、レベル差が10倍近くあっても負ける、確実に負ける。100回やったら100回負ける。『もしも』なんてものはない」
俺のできる「なんちゃって護身術」で、アイセルの剣技と身のこなしに対応できるとは思えない。
「またまたご冗談を――」
「いやいや、これが全然冗談じゃないんだよな」
「え――」
「もし俺がまともに戦えると思ってるなら、その考えは今すぐ改めておいて欲しい。でないと俺が死ぬから。あ、これは本気でマジな話な」
「マジな話ですか……(;´・ω・)」
「魔法戦士みたいな普通の職業はレベルアップごとにステータスが上昇して、戦闘や冒険に必要なスキルや耐性なんかを習得していくだろ?」
「はい、わたしも色んな戦闘補助スキルが増えてます。『疲労軽減』とか『集中』とかそんな感じで」
「それに対してバッファーはさ、さっきも言ったけどレベルが上がってもひたすらバフスキルの性能が上がっていくだけなんだ。効果が上がって、持続時間が長くなって、範囲が広くなる。それだけなんだ」
「そ、そうなんですね」
「だから味方の援護がないバッファーは、一般人より気持ちマシくらいだと思っててくれ」
なにせバッファーときたら開幕バフったら本当にすることがない、不遇職の代名詞なのだから。
「わ、わかりました……」
俺の言葉に、アイセルが神妙な顔でうなずいた。