「……え?」
無表情とは言えど、碧瞳の奥からは困惑の気配が滲み出ている。それに気付いていながらも、彼はここぞとばかりに畳み掛けた。
「嗚呼! まさか再び、こうして巡り会えるなんて……。これは神のお導きに違いナァイ!」
亮の熱い語りにちょっと引いたと言わんばかりに、その眉間に皺が寄りかかった。だけど、彼は怖気づくこともなく、手の平を伸ばして意気揚々と名乗りを上げる。
「私は鶴喜亮! 麗しいお嬢さんよ、どうか貴女の名前を教えてもらいたい」
「……頭大丈夫?」
一見辛辣な言葉ではあるが、その落ち着いた口調から察するにそれは侮蔑ではなく、単純に心配で発したものだろう。
大体の人は亮のアプローチを無視するかあしらうかの二択を取るのに、彼女は有り体のままで対応する。そのこと自体が驚きなのに面と向かってそう言われたのが初めてだ。
二つの驚きを直面して、亮は思いっきり「ハァーハハハ」と笑い飛ばした。
「ご覧の通り、私は両足を骨折している身でしてね。だから、両足以外は全然大丈夫ですヨ!」
はあ、と少女は呆れたように声を漏らし、俯く。
短い沈黙の後、彼女は「一つ忠告しておく」と前置きする。
「……私とあんまり関わらない方が身のためよ。それに名乗るほどの価値の名前でもないんだし」
「じゃあ、私はこれから全身全霊で貴女のことを『姫』と呼ばせていただきます!」
「……え」
少女は意外な展開に驚き、小さく口を開いた。
いつの間にか二人は見つめ合う形になっていた――。
無表情とは言えど、碧瞳の奥からは困惑の気配が滲み出ている。それに気付いていながらも、彼はここぞとばかりに畳み掛けた。
「嗚呼! まさか再び、こうして巡り会えるなんて……。これは神のお導きに違いナァイ!」
亮の熱い語りにちょっと引いたと言わんばかりに、その眉間に皺が寄りかかった。だけど、彼は怖気づくこともなく、手の平を伸ばして意気揚々と名乗りを上げる。
「私は鶴喜亮! 麗しいお嬢さんよ、どうか貴女の名前を教えてもらいたい」
「……頭大丈夫?」
一見辛辣な言葉ではあるが、その落ち着いた口調から察するにそれは侮蔑ではなく、単純に心配で発したものだろう。
大体の人は亮のアプローチを無視するかあしらうかの二択を取るのに、彼女は有り体のままで対応する。そのこと自体が驚きなのに面と向かってそう言われたのが初めてだ。
二つの驚きを直面して、亮は思いっきり「ハァーハハハ」と笑い飛ばした。
「ご覧の通り、私は両足を骨折している身でしてね。だから、両足以外は全然大丈夫ですヨ!」
はあ、と少女は呆れたように声を漏らし、俯く。
短い沈黙の後、彼女は「一つ忠告しておく」と前置きする。
「……私とあんまり関わらない方が身のためよ。それに名乗るほどの価値の名前でもないんだし」
「じゃあ、私はこれから全身全霊で貴女のことを『姫』と呼ばせていただきます!」
「……え」
少女は意外な展開に驚き、小さく口を開いた。
いつの間にか二人は見つめ合う形になっていた――。