「お前な、やり直しって言葉知ってるか。前回の間違いを書き写したものをやり直しとは言わん。きちんと考えて正解で埋めなさい」
「ええー!? ケチぃ!」
「ケチじゃない! 卒業前だからってなんでも甘くなると思ったら大間違いだ。コピペで済むなら〜なんてありきたりの説教する気もないが、お前のはな、ただ間違いをエンドレスリピートしてるだけだよ」

卒業するなら俺を安心させてくれ、とげっそりした担任に連行されて行く芽衣は、振り向きざまに両手を合わせて「ごめん、先帰ってて」と言ってきた。
何のためにこの時間まで付き合っていたのか、と芽衣本人よりも千結が呆然としている。
しかし担任は千結に「お前も気をつけて帰るんだぞ」とおざなりかつお決まりの台詞ひとつを残して、芽衣と共に職員室に入ってしまった。
おそらく職員室内の空き机で、お説教プラスアルファの補習コースだろう。右から左に聞き流して臆面もなく大あくびをする芽衣が目に浮かぶ。
卒業直前まで親身になってくれる担任は教師の鑑なのだろうが、少し──いや、正直なところ、かなり鬱陶しい。
心に溜まったモヤモヤを振り払うように、千結は勢いよく踵を返す。リュックにつけたチャームが遠心力で大きく弧を描いた。