ホームに降りた時も思ったけど、学生が多い。やっぱりこれ、皆発表見にきている受験生かな。
駅前の道を少し歩くと、大学の入り口が見えた。こうして街中にいきなり大学があるのって不思議な感じ。もっとビル郡から離れた場所にあるものかと思っていたけど、東京にあるのだからそれはそうか。
同じくらいの学生が入口に吸い込まれていく。やっぱり皆受験生だった。平日の中途半端な時間に繁華街じゃない駅に降りる人たちだもんね。
胸を押さえながら大学に入る。
うわぁ、貼り出されてる掲示板がもう見える。帰ろうかな。
横を見る。夏希がいる。うん、大丈夫。大丈夫じゃないけど、大丈夫。
至るところから悲鳴が聞こえてくる。小さなものから大きなものまで。一分後には僕もその仲間入りだ。
覚悟を決め、番号が書かれた紙を上から順番に確認する。僕の番号はもっと後ろの方だけれども、すぐにそこへ目を通す程僕の心臓は頑丈じゃない。
「四百五十、四百五十三……」
あと少し、もう少しで僕の。
「………‥お」
「お……?」
「……落ちた」
がっくり肩を落とす僕の周囲を夏希がくるくる回る。
きっとなんて慰めたらいいのか分からないのだろう。
すごいショックだった。だって、第一志望だから。一年間必死に頑張ってきた。でも、夏希の方がずっと大変そうな顔をしているから、つい笑ってしまった。
「あは……! ありがとう、がっかりしたけど第二志望は受かってるから大丈夫」
「そ、そう!? ほんとに!? まだ顔色悪そうだけど」
「うん、平気」
人生はそんなに上手くいかない。そういうことだ。
受け入れてしまえば、自分で勝ち取った分の土俵で次の目標を探すだけ。落ち込んでいる暇は無い。
周りは自分の合否に夢中で僕のことなんか気にする人はいない。
だけれども、僕の人生は僕が主役だ。どんな状況でも楽しもう。
「さて、学校と親に報告行こ」
「私も付き合う」
「ありがと」
夏希がいてくれるからか、自分でも驚く程あっさり現状を受け止めることが出来た。夏希に感謝だ。
学校へ行き、全ての合否を報告する。第二志望も第一とあまり変わらない偏差値の大学なので、先生は大いに喜んでくれた。
滑り止めも二校受けたけれど、やっぱり第一か第二に行きたかったから頑張ってよかった。
親は夕方まで戻ってこない。これでひとまず休憩出来る。
高校を出て、家の近くの公園でベンチに座る。滑り台に一組の親子がいるだけの、穏やかな光景を見つめた。
「ちょっとずつ春になってきたね」
「そうだね」
まだ桜が咲くには早いが、間もなく三月が来る。卒業の季節だ。
「卒業式っていつだっけ?」
「三月一日だよ」
「結構早いね」
「ね。引っ越しとか準備があるからかなぁ」
のんびりとした会話。こんなことを夏希と出来るとは思わなかった。
「夏希、卒業式はさ」
一つ風が吹いて瞬きをする。
次に開けた時には、夏希の姿は無かった。
駅前の道を少し歩くと、大学の入り口が見えた。こうして街中にいきなり大学があるのって不思議な感じ。もっとビル郡から離れた場所にあるものかと思っていたけど、東京にあるのだからそれはそうか。
同じくらいの学生が入口に吸い込まれていく。やっぱり皆受験生だった。平日の中途半端な時間に繁華街じゃない駅に降りる人たちだもんね。
胸を押さえながら大学に入る。
うわぁ、貼り出されてる掲示板がもう見える。帰ろうかな。
横を見る。夏希がいる。うん、大丈夫。大丈夫じゃないけど、大丈夫。
至るところから悲鳴が聞こえてくる。小さなものから大きなものまで。一分後には僕もその仲間入りだ。
覚悟を決め、番号が書かれた紙を上から順番に確認する。僕の番号はもっと後ろの方だけれども、すぐにそこへ目を通す程僕の心臓は頑丈じゃない。
「四百五十、四百五十三……」
あと少し、もう少しで僕の。
「………‥お」
「お……?」
「……落ちた」
がっくり肩を落とす僕の周囲を夏希がくるくる回る。
きっとなんて慰めたらいいのか分からないのだろう。
すごいショックだった。だって、第一志望だから。一年間必死に頑張ってきた。でも、夏希の方がずっと大変そうな顔をしているから、つい笑ってしまった。
「あは……! ありがとう、がっかりしたけど第二志望は受かってるから大丈夫」
「そ、そう!? ほんとに!? まだ顔色悪そうだけど」
「うん、平気」
人生はそんなに上手くいかない。そういうことだ。
受け入れてしまえば、自分で勝ち取った分の土俵で次の目標を探すだけ。落ち込んでいる暇は無い。
周りは自分の合否に夢中で僕のことなんか気にする人はいない。
だけれども、僕の人生は僕が主役だ。どんな状況でも楽しもう。
「さて、学校と親に報告行こ」
「私も付き合う」
「ありがと」
夏希がいてくれるからか、自分でも驚く程あっさり現状を受け止めることが出来た。夏希に感謝だ。
学校へ行き、全ての合否を報告する。第二志望も第一とあまり変わらない偏差値の大学なので、先生は大いに喜んでくれた。
滑り止めも二校受けたけれど、やっぱり第一か第二に行きたかったから頑張ってよかった。
親は夕方まで戻ってこない。これでひとまず休憩出来る。
高校を出て、家の近くの公園でベンチに座る。滑り台に一組の親子がいるだけの、穏やかな光景を見つめた。
「ちょっとずつ春になってきたね」
「そうだね」
まだ桜が咲くには早いが、間もなく三月が来る。卒業の季節だ。
「卒業式っていつだっけ?」
「三月一日だよ」
「結構早いね」
「ね。引っ越しとか準備があるからかなぁ」
のんびりとした会話。こんなことを夏希と出来るとは思わなかった。
「夏希、卒業式はさ」
一つ風が吹いて瞬きをする。
次に開けた時には、夏希の姿は無かった。