神の使徒と言うならば、彼女以上に相応しい人材はいないかも知れない。
彼女は天使だった。 決して、比喩ではない。それを証明するかのように白い翼が生えていた。
「初めまして、『暴食』の魔導書使いさま。それに、『色欲』の魔導書使いさま」
彼女は深々と頭を下げて、自己紹介を始めた。
「私の名前はゼロス。恐れ多くも神の意思を伝える代理人として指名された使徒でございます」
立ち振る舞いですら神秘的な彼女、ゼロス。
そんな彼女を見たユウトとメリスは、雰囲気に呑まれたようだ。
呆気に取られたように反応が遅れる。
「……いかがされましたか?」とゼロスの言葉にようやく2人は正気を取り戻した。
「えっと……それで『強欲』の討伐指令ってのは?」
「申し訳ありません。その具体的内容は、参加者全員がそろってからの情報公開を厳命されています」
「そうですか。えっと、俺たち以外の魔導書使いは――――まだ?」
「いいえ、先に1人。あちらに――――『怠惰』の魔導書使いさまが到着されています」
ゼロスが彼女のいる場所を指すよりも速く、ユウトは駆け出していた。
「レイン! おまえ――――よくも!」
「あら、ユウト! 久しぶり――――って! いきなり何をするつもりよ!」
既に杖をレインに向けているユウト。 彼は杖先に魔力を込めて――――
『炎剣』
炎の魔剣がレインに向けて放たれた。手加減は――――なしだ。
全力の一撃がレインに直撃する寸前だ。 彼女の目前に飛び込んだ人影が華麗に剣を振るい、ユウトの魔法を切り裂いた。
「――――」と無言で剣を振るった男。その表情には意思を思えるものが抜け落ちていた。
「ミカエル。やはり、今も意識がないまま操られているのか」
「ちょっと、今回の敵は私じゃなくて『強欲』って人でしょ? なんで攻撃してきたの? あっ、もしかして私たちが先に到着していたから『強欲』と勘違いしたの?」
「――――」とユウトは怒りが沸き立つ反面、戦闘意欲というものが失せていく。
彼女、レイン・アーチャーは、意欲が枯渇するように話す。
意図してではない。自然と――――そもそも自分の何が悪いのか? 本気でわかっていない。
そういう異常性が戦闘を回避して見せたのだ。
「――――ッ(かつて仲間だった頃のレインは、違っていた。 魔導書が彼女の人格に影響を与えているのか? それとも、何年も俺たちを欺いて生きてきたのか?)」
ジロリとユウトはレインを睨み続ける。 もしも、彼女が続けて妙な事を口走れば――――
しかし、そうはならなかった。
「『怠惰』さまの言う通りです。今回は『強欲』の討伐のために強力を要請させていただくためにお呼びしました。少なくとも、この教会内での死闘は禁止させていただきます」
神の使徒であるゼロスが仲裁を行う。
「あぁ、わかっている」とユウトは杖を納めた。
(今まで、いろいろな使徒とも戦ってきたけれでも――――ゼロス。彼女は、別格のような強さを感じる。このまま戦えば、俺1人くらいなら簡単に葬り去ってもおかしくないほどの強者)
「それも――――面白いな」とユウトは己の考えが口に出ていた事に驚いた。
強者と戦う事を『面白い』と言う感覚。 かつてのユウトにはなかった感覚だった。
(やはり、魔導書が持ち主に影響を――――)
そんな事を考えている時だった。 朽ちかけていた門が開き、人が入って来る。
その人物は――――
「なんだ? 喧嘩か……喧嘩は俺がいる時にやれ」
彼は『憤怒』のインファ
魔導書使いの中で単純な戦闘力ならば『最強』とも言える人物だった。
彼女は天使だった。 決して、比喩ではない。それを証明するかのように白い翼が生えていた。
「初めまして、『暴食』の魔導書使いさま。それに、『色欲』の魔導書使いさま」
彼女は深々と頭を下げて、自己紹介を始めた。
「私の名前はゼロス。恐れ多くも神の意思を伝える代理人として指名された使徒でございます」
立ち振る舞いですら神秘的な彼女、ゼロス。
そんな彼女を見たユウトとメリスは、雰囲気に呑まれたようだ。
呆気に取られたように反応が遅れる。
「……いかがされましたか?」とゼロスの言葉にようやく2人は正気を取り戻した。
「えっと……それで『強欲』の討伐指令ってのは?」
「申し訳ありません。その具体的内容は、参加者全員がそろってからの情報公開を厳命されています」
「そうですか。えっと、俺たち以外の魔導書使いは――――まだ?」
「いいえ、先に1人。あちらに――――『怠惰』の魔導書使いさまが到着されています」
ゼロスが彼女のいる場所を指すよりも速く、ユウトは駆け出していた。
「レイン! おまえ――――よくも!」
「あら、ユウト! 久しぶり――――って! いきなり何をするつもりよ!」
既に杖をレインに向けているユウト。 彼は杖先に魔力を込めて――――
『炎剣』
炎の魔剣がレインに向けて放たれた。手加減は――――なしだ。
全力の一撃がレインに直撃する寸前だ。 彼女の目前に飛び込んだ人影が華麗に剣を振るい、ユウトの魔法を切り裂いた。
「――――」と無言で剣を振るった男。その表情には意思を思えるものが抜け落ちていた。
「ミカエル。やはり、今も意識がないまま操られているのか」
「ちょっと、今回の敵は私じゃなくて『強欲』って人でしょ? なんで攻撃してきたの? あっ、もしかして私たちが先に到着していたから『強欲』と勘違いしたの?」
「――――」とユウトは怒りが沸き立つ反面、戦闘意欲というものが失せていく。
彼女、レイン・アーチャーは、意欲が枯渇するように話す。
意図してではない。自然と――――そもそも自分の何が悪いのか? 本気でわかっていない。
そういう異常性が戦闘を回避して見せたのだ。
「――――ッ(かつて仲間だった頃のレインは、違っていた。 魔導書が彼女の人格に影響を与えているのか? それとも、何年も俺たちを欺いて生きてきたのか?)」
ジロリとユウトはレインを睨み続ける。 もしも、彼女が続けて妙な事を口走れば――――
しかし、そうはならなかった。
「『怠惰』さまの言う通りです。今回は『強欲』の討伐のために強力を要請させていただくためにお呼びしました。少なくとも、この教会内での死闘は禁止させていただきます」
神の使徒であるゼロスが仲裁を行う。
「あぁ、わかっている」とユウトは杖を納めた。
(今まで、いろいろな使徒とも戦ってきたけれでも――――ゼロス。彼女は、別格のような強さを感じる。このまま戦えば、俺1人くらいなら簡単に葬り去ってもおかしくないほどの強者)
「それも――――面白いな」とユウトは己の考えが口に出ていた事に驚いた。
強者と戦う事を『面白い』と言う感覚。 かつてのユウトにはなかった感覚だった。
(やはり、魔導書が持ち主に影響を――――)
そんな事を考えている時だった。 朽ちかけていた門が開き、人が入って来る。
その人物は――――
「なんだ? 喧嘩か……喧嘩は俺がいる時にやれ」
彼は『憤怒』のインファ
魔導書使いの中で単純な戦闘力ならば『最強』とも言える人物だった。