討伐指令――――『強欲』

 魔導書に刻まれた文字。 しかし、それ以上の詳細は不明。

「これは一体……どういうことだ?」と困惑するユウトとメリスだったが、

 唐突に2つの人影が飛び込んできた。思わず武器を構えるユウトたちだったが、その人影の正体は知り合いだった。

「話は聞かせてもらったわよ、詳細はこれに書かれている」

「シルキアとニクシアか。どうしてここが?」

 もしかして、魔導書で居場所がバレているのか? そんな考えが頭に過ぎる。

「討伐指令ね。詳細はここに書いているわ」とシルキア。

「手紙? 手渡しなのか…… 魔導書に文字を表示させられるなら、もっと、こう……」

「効率を求めるのは魔法使い癖よ」

 それだけを言い残して、シルキアとニクシアは慌ただしく去って行った。

「なんだったんだ? あの2人は……」

「いつも通りじゃない? とにかく、それを開いてみてよね」

 メリスの言う通り、渡された手紙を開いた。

 しかし、そこに書かれていたのは場所を示す地図。 それから日時だけだった。

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 手紙に書かれた日時にユウトたち――――ユウト、メリス、メイヴの3人は地図に書かれた場所に到着した。

「廃墟になった教会……使徒たちが指定した場所としては相応しいですね」

 メイヴは観察するように教会を睨みつける。 

「罠はないようですね。既に中に入ってる者も入れば、離れてコチラを観察してる者もいますね」

 上位冒険者ともなれば、隠れている人の気配がわかるのだろう。

 探知魔法を使うユウトにしてみたら、便利そうで複雑だった。

「それで私たちは、どうするの? 招待状を持って中に入る? それとも外で様子を見守るの?」

「その質問だと、まるで俺が頭目(リーダー)みたいだが、俺が決めて良いのか、メリス?」

「何を今さら言ってるの? ずっと頭目みたいな感じだったじゃないの」

「そう……だったかな? それじゃ」とユウトは考えだした。

 この手紙、そのものが罠の可能性はない。 魔導書に直接刻まれた文字。その直後に直接現れた使徒たち。

(罠の可能性を排除できると思えば、あながち使徒たちが現れて手紙で伝えるってのも、馬鹿にできないな)

「うん、俺たちは中に入ろう」と決断する。

 中に入れば、外にいる勢力から建物ごと攻撃を受ける可能性もある。

 しかし、この手紙が本物である。ならば、教会への攻撃は魔導書大戦を取り仕切る使徒たち――――それどころか神に対して反逆になるだろう。

 薄暗い教会内部。 崩れた天井の隙間から木漏れ日のように光が差している。

 神秘的な光景。 そこで待ち構えている人物は、きっと使徒なのだろう。

 神の意思を伝えるための使徒。 

「お待ちしていました」と一礼する彼女の背中には白い羽が生えていた。