「将軍、あれをどう思う?」と空を指すモンド王。そして、こう続けた。
「今の兵力で勝てるか?」
「専用の装備。練兵に3日……いえ、1日下されば可能でしょう」
「うむ……すると、現時点では、勝ち目はないという事じゃな?」
「……」と将軍は無言の肯定。
「撤退じゃ」とモンド王は、静かに、それでいて兵に届くように声は発した。
「父王、あれは……なぜ、このタイミングで」
「このタイミングだからこそよ、ルオン。あれが『憤怒』の正体よ」
「あれが魔導書使いの『憤怒』 しかし、あれは……人ではなく……」
「うむ、この魔導書大戦において『憤怒』こそ、余も認める最強……討伐するならば、もっと力をつけてからじゃな」
「父上は、アレに勝って――――いや、勝ち続けてきたのですか!?」
「今は時期尚早であるがな。ルオン王子、お前もあれに勝てるようになれ」
「あれに……」
「うむ、その前に――――」
「その前に?」
「にげるぞ!」とモンド王は用意された馬に飛び乗り、後ろを振り返る事もなく走って行った。
取り残されたルオン王子も馬に飛び乗り、その後に続いた。
そして、モンド王が勝てぬと言った巨大な影――――『憤怒』
『憤怒』は撤退する兵士たちに見向きもせず、ダンジョンへ落下した。
破壊音。 その内部にいるユウト達は――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
―――少し前―――
「なんだ、魔導書の輝きが増している?」とユウト。
その様子に「あれ?」とハーピーのセリアは首を傾げた。
「皆さん、仲間じゃないのですか?」
「うん、仲間だけど――――」
「仲間じゃないわよ」とメリスは調子が良くなったのだろう。否定を口にした。
「どっちかわからないので周囲にいる皆さん全員に攻略条件を付加しておいたのですが、よかったのですかね?」とセリア。
その言葉に「――――いや、待てよ」と違和感を覚えたユウト。
「皆さん、全員? もしかして、俺たち以外にも魔導書使いが近くにいるのか?」
「はい、いますよ。あなた達以外に――――外に2人。空から飛んできているのが1人……合計で5人ですかね」
「なに!」とユウトは驚く。 魔導書使いは7人――――
ユウトは8人目がいる事は知らない。そして、退場した『嫉妬』のグリムロックの事も知らない。
「ほとんどの魔導書使いが集結してるじゃないか……なぜ?」
そのタイミングだった。
衝撃。 ダンジョンそのものが縦に揺れる。
そして、天井が破壊され、崩落が始まる。
開けた空。 人影が落ちて来る。
それはモンド王が撤退を決めた巨影とは、似ても似つかぬ――――
「お前たちが『暴食』と『色欲』か?」
着地した存在は、蒼い男だった。 蒼い髪が長く、服も蒼い――――手にした武器は、大鎌まで蒼い。
なんとなく、全身を身に纏っているオーラのような物ですら蒼く漂っているようにすら見える。
「……」とユウトとメリス、それからメイヴは無言で肯定する。
すると――――
「いや、待てよ。もう1人いるのは冒険者……メイヴ・ブラックウッドか」
「私を知っているのですか?」
「趣味なんだ……強い奴と戦うのが、暇すぎてね」
「――――戦闘中毒。 あなたの名前は?」
「俺か? 俺はインファ。 『憤怒』のインファだ」
そう言うと蒼い男――――インファは魔導書を取り出した。
「お前等は運がいい。最初は戦いを楽しませてもらう」
「……なに?」とユウトが口にする。
「わからないか? 手加減すると宣言している」
その直後、インファが動く――――いや、ユウトは彼が動くのを見る事すらできなかった。
彼の動きは瞬間移動のように速く、既に目前に立っていた。
(速い! 初動が見えなかったどころか、動きの全てが見えなかった……いや、感じ取ることすら――――)
次にユウトは、明確な殺気を遅れて感じた。
自身の背後、後頭部にインファの鎌――――その刃が首を刈取ろうと迫って来るのを――――
「――――っ!」と回避のためにしゃがみ込む。 頭上に刃が通過していく。
「……ほう、これに反応できるのか。さすが『暴食』の魔導書使いだな」
「なんで高評価なのか知らないけど、いきなり殺しに来るのかよ」
ユウトの額に血が流れ落ちた。 どうやら、完全に避けれたわけではないらしい。
「悪く思うな。3対1だからな」
「よく言おうよ。顔が笑ってるぜ?」
「うむ?」とインファが確認するように自分の顔をなぞる。
隙を見せるのは強者だからこその余裕か? しかし、余裕から来るものでも隙は隙――――
「余裕を見せすぎね」
いつの間にか、インファの背後に周っていたのは――――メリスだった。
「今の兵力で勝てるか?」
「専用の装備。練兵に3日……いえ、1日下されば可能でしょう」
「うむ……すると、現時点では、勝ち目はないという事じゃな?」
「……」と将軍は無言の肯定。
「撤退じゃ」とモンド王は、静かに、それでいて兵に届くように声は発した。
「父王、あれは……なぜ、このタイミングで」
「このタイミングだからこそよ、ルオン。あれが『憤怒』の正体よ」
「あれが魔導書使いの『憤怒』 しかし、あれは……人ではなく……」
「うむ、この魔導書大戦において『憤怒』こそ、余も認める最強……討伐するならば、もっと力をつけてからじゃな」
「父上は、アレに勝って――――いや、勝ち続けてきたのですか!?」
「今は時期尚早であるがな。ルオン王子、お前もあれに勝てるようになれ」
「あれに……」
「うむ、その前に――――」
「その前に?」
「にげるぞ!」とモンド王は用意された馬に飛び乗り、後ろを振り返る事もなく走って行った。
取り残されたルオン王子も馬に飛び乗り、その後に続いた。
そして、モンド王が勝てぬと言った巨大な影――――『憤怒』
『憤怒』は撤退する兵士たちに見向きもせず、ダンジョンへ落下した。
破壊音。 その内部にいるユウト達は――――
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
―――少し前―――
「なんだ、魔導書の輝きが増している?」とユウト。
その様子に「あれ?」とハーピーのセリアは首を傾げた。
「皆さん、仲間じゃないのですか?」
「うん、仲間だけど――――」
「仲間じゃないわよ」とメリスは調子が良くなったのだろう。否定を口にした。
「どっちかわからないので周囲にいる皆さん全員に攻略条件を付加しておいたのですが、よかったのですかね?」とセリア。
その言葉に「――――いや、待てよ」と違和感を覚えたユウト。
「皆さん、全員? もしかして、俺たち以外にも魔導書使いが近くにいるのか?」
「はい、いますよ。あなた達以外に――――外に2人。空から飛んできているのが1人……合計で5人ですかね」
「なに!」とユウトは驚く。 魔導書使いは7人――――
ユウトは8人目がいる事は知らない。そして、退場した『嫉妬』のグリムロックの事も知らない。
「ほとんどの魔導書使いが集結してるじゃないか……なぜ?」
そのタイミングだった。
衝撃。 ダンジョンそのものが縦に揺れる。
そして、天井が破壊され、崩落が始まる。
開けた空。 人影が落ちて来る。
それはモンド王が撤退を決めた巨影とは、似ても似つかぬ――――
「お前たちが『暴食』と『色欲』か?」
着地した存在は、蒼い男だった。 蒼い髪が長く、服も蒼い――――手にした武器は、大鎌まで蒼い。
なんとなく、全身を身に纏っているオーラのような物ですら蒼く漂っているようにすら見える。
「……」とユウトとメリス、それからメイヴは無言で肯定する。
すると――――
「いや、待てよ。もう1人いるのは冒険者……メイヴ・ブラックウッドか」
「私を知っているのですか?」
「趣味なんだ……強い奴と戦うのが、暇すぎてね」
「――――戦闘中毒。 あなたの名前は?」
「俺か? 俺はインファ。 『憤怒』のインファだ」
そう言うと蒼い男――――インファは魔導書を取り出した。
「お前等は運がいい。最初は戦いを楽しませてもらう」
「……なに?」とユウトが口にする。
「わからないか? 手加減すると宣言している」
その直後、インファが動く――――いや、ユウトは彼が動くのを見る事すらできなかった。
彼の動きは瞬間移動のように速く、既に目前に立っていた。
(速い! 初動が見えなかったどころか、動きの全てが見えなかった……いや、感じ取ることすら――――)
次にユウトは、明確な殺気を遅れて感じた。
自身の背後、後頭部にインファの鎌――――その刃が首を刈取ろうと迫って来るのを――――
「――――っ!」と回避のためにしゃがみ込む。 頭上に刃が通過していく。
「……ほう、これに反応できるのか。さすが『暴食』の魔導書使いだな」
「なんで高評価なのか知らないけど、いきなり殺しに来るのかよ」
ユウトの額に血が流れ落ちた。 どうやら、完全に避けれたわけではないらしい。
「悪く思うな。3対1だからな」
「よく言おうよ。顔が笑ってるぜ?」
「うむ?」とインファが確認するように自分の顔をなぞる。
隙を見せるのは強者だからこその余裕か? しかし、余裕から来るものでも隙は隙――――
「余裕を見せすぎね」
いつの間にか、インファの背後に周っていたのは――――メリスだった。