『怠惰』のレインVS『色欲』のメリス
互いに操作系の魔導書使い。
――――とは言え、2人の性質はまるで違う。
レインの『怠惰』は、魔導書に更新される薬物を使い、対象を洗脳しての操作。
一方、メリスの『色欲』は――――
(私の『色欲』は魔法による操作。同じ操作系として純度が低い)
彼女は魔導書に書かれた素材を手に入れ、研究するする事で自身の操作系魔法を強化。
操作するのも、対象の感情――――敵意や悪意を操作する。
だから、2人が真っ向勝負でぶつかれば――――
(でも、ここは私の工房。あのユウト・フィッシャーに負けて魔導書が弱体したばかりの私でも――――レインに勝機はある)
互いに召喚した従者を動かした。
『怠惰』のレインはA級冒険者 ミカエル・シャドウ。
『色欲』のメリスはエルフの剣士 ダレス・ブラックウッド。
2人の剣士は衝突した。
エルフとは思えぬほど荒々しい剣士になったダレス。
魔導書による効果。それに他ならぬ対戦相手『怠惰』のレインが作った強化の薬によるもの……
彼が身に纏うのは野性的な気迫そのもの。
その気迫のままに力強い一撃を繰り出す。
彼の剣は荒々しく振り下ろされ、空気を切り裂く音が響く。
迫力満点と言える過激な攻撃。剛の剣撃――――力強い踏み込みによって地面が震える。
ならば、その剣先はどれほどのものか? 荒々しくも豪快――――
威力も当然ながら凄まじい。荒々しい剣士は凶暴な咆哮を上げながら、敵に向かって突進する。 鮮血をまき散らすために――――
一方のミカエル。 同じ強化の薬を使っているはずだが、ダレスとはまるで違っていた。
どこまで堕ちても、彼は貴族のように優雅を手放していない。
もしかしたら――――
優雅である事が彼の存在証明……なのかもしれない。
そんな優雅な剣士は流れるような動きを見せる。突進してくるダレスの剣に合わせて、自身の剣を舞わせる。
彼の身のこなしは優雅で、まるで風のように軽やかに舞っているかのようだ。その剣技は繊細で精巧でありながら、同時に美しさを持っている。
敵であるダレスの攻撃を巧みにかわし、一瞬の隙を見逃さずに反撃する。
「はっ!」と裂帛の気合ですら優雅。
そのの一刀は、風に乗って敵の身体に刻まれ――――ダレスは複数の傷を受け――――相手の動きを封じる。
二人の戦いは壮絶だ。
その激しさと美しさが空間を支配して行った。
ダレスの力強さとミカエルの巧みさが対照的に交錯。
もしも、この場に両者の戦いを見る観客がいるとしたら、息を飲んでその戦いを見守るだろう。
しかし、この場に観客などいない。 2人の背後に備えている魔導書使いたちも、また――――戦っている最中なのだ。
背後に備える『色欲』のメリス。彼女の魔法――――『蒼き炎』
その効果は、対象の敵意と悪意を操作して操る。
(けど、魔導書によって手に入れた操作系魔法は、魔導書使いには通じない。加えて――――すでに操作系魔導者使いの支配者である従者を操作する事はできない。不利過ぎる戦いだけど――――)
「ダレス! 強化します!」
彼女の魔力が魔導書に光を灯す。 それに応じるようにダレスの体は薄青い光に包まれた。
「何それ? そんな事できたのあなた?」
「そうよ。切り札をあなたに見せて説明するわけないでしょ!」
「ふ~ん、魔法による従者の強化。 ここがあなたの工房だから、必要な魔素が揃ってる……そういうわけね」
「答える必要は――――」
「そりゃないでしょうね。勝つのは私なのだから」
「――――くっ!」
その直後、従者である剣士たちは剣が交わり、火花が散り、戦いの激しさが最高潮に達した。
決着は近い。
ダレスは狂戦士のように荒々しく、獰猛な攻撃を繰り出していた。彼の剣は、その体と同じ青い炎を帯び、風を切り裂きながら敵に襲いかかる。
その攻撃は猛烈の一言。荒々しい剣技と凄まじい力が相まって、ミカエルを圧倒していく。
しかし、圧倒され続けているはずのミカエルは、今も優雅な雰囲気を漂わせながら戦っている。
彼の剣舞はどこまでも美しく、滑らかな動きで相手の攻撃を巧みに受け流す。彼の剣技は洗練されており、優雅さ――――それとほんの少しだけ力強さを有していた。
その攻撃は精確で、相手の隙を突いて的確に切り込んでいく。
一方的に、やはりダレスだけが傷が増えていく。
痛めつけられていくダレス。 彼は獰猛な怒りに駆られ、ますます攻撃に凶暴さも出して一撃を繰り出す。
だが、どこまでも優雅な剣士であるミカエルは冷静さを保ち、相手の攻撃を見切る。紙一重――――されど、絶対に当たらない。
けれども一瞬、優雅であり続けようとした代償だろうか?
ごくわずかな隙をミカエルは見せた。
優雅な剣士が素早く反撃を仕掛ける。
勝機! そう思ったの誰だろう?
ダレス? メリス? それとも――――
それはミカエルの思考。 彼は、攻め続けるも決定打に欠けている事に気づいていた。ならば戦いに勝利するため――――自ら隙を見せて、罠を張ったのだ。
罠に嵌ったダレスは、ミカエルの剣を受ける。
彼の剣がダレスに深く突き刺さっていく。 そのまま彼は血を流しながら倒れ込んだ。
荒々しくも優雅な戦いは終わりを告げ、静寂が戻っていく。
勝利を手にしたミカエル。 薬物によって精神に変調をきたしている彼であったが、その表情には敗北したダレスへの敬意が確かに残っていた。
しかし――――
「さて、メリス……勝敗は決したわ。 やりなさい――――ミカエル」
レインは冷酷にメリスの処刑をミカエルに告げるのだった。
互いに操作系の魔導書使い。
――――とは言え、2人の性質はまるで違う。
レインの『怠惰』は、魔導書に更新される薬物を使い、対象を洗脳しての操作。
一方、メリスの『色欲』は――――
(私の『色欲』は魔法による操作。同じ操作系として純度が低い)
彼女は魔導書に書かれた素材を手に入れ、研究するする事で自身の操作系魔法を強化。
操作するのも、対象の感情――――敵意や悪意を操作する。
だから、2人が真っ向勝負でぶつかれば――――
(でも、ここは私の工房。あのユウト・フィッシャーに負けて魔導書が弱体したばかりの私でも――――レインに勝機はある)
互いに召喚した従者を動かした。
『怠惰』のレインはA級冒険者 ミカエル・シャドウ。
『色欲』のメリスはエルフの剣士 ダレス・ブラックウッド。
2人の剣士は衝突した。
エルフとは思えぬほど荒々しい剣士になったダレス。
魔導書による効果。それに他ならぬ対戦相手『怠惰』のレインが作った強化の薬によるもの……
彼が身に纏うのは野性的な気迫そのもの。
その気迫のままに力強い一撃を繰り出す。
彼の剣は荒々しく振り下ろされ、空気を切り裂く音が響く。
迫力満点と言える過激な攻撃。剛の剣撃――――力強い踏み込みによって地面が震える。
ならば、その剣先はどれほどのものか? 荒々しくも豪快――――
威力も当然ながら凄まじい。荒々しい剣士は凶暴な咆哮を上げながら、敵に向かって突進する。 鮮血をまき散らすために――――
一方のミカエル。 同じ強化の薬を使っているはずだが、ダレスとはまるで違っていた。
どこまで堕ちても、彼は貴族のように優雅を手放していない。
もしかしたら――――
優雅である事が彼の存在証明……なのかもしれない。
そんな優雅な剣士は流れるような動きを見せる。突進してくるダレスの剣に合わせて、自身の剣を舞わせる。
彼の身のこなしは優雅で、まるで風のように軽やかに舞っているかのようだ。その剣技は繊細で精巧でありながら、同時に美しさを持っている。
敵であるダレスの攻撃を巧みにかわし、一瞬の隙を見逃さずに反撃する。
「はっ!」と裂帛の気合ですら優雅。
そのの一刀は、風に乗って敵の身体に刻まれ――――ダレスは複数の傷を受け――――相手の動きを封じる。
二人の戦いは壮絶だ。
その激しさと美しさが空間を支配して行った。
ダレスの力強さとミカエルの巧みさが対照的に交錯。
もしも、この場に両者の戦いを見る観客がいるとしたら、息を飲んでその戦いを見守るだろう。
しかし、この場に観客などいない。 2人の背後に備えている魔導書使いたちも、また――――戦っている最中なのだ。
背後に備える『色欲』のメリス。彼女の魔法――――『蒼き炎』
その効果は、対象の敵意と悪意を操作して操る。
(けど、魔導書によって手に入れた操作系魔法は、魔導書使いには通じない。加えて――――すでに操作系魔導者使いの支配者である従者を操作する事はできない。不利過ぎる戦いだけど――――)
「ダレス! 強化します!」
彼女の魔力が魔導書に光を灯す。 それに応じるようにダレスの体は薄青い光に包まれた。
「何それ? そんな事できたのあなた?」
「そうよ。切り札をあなたに見せて説明するわけないでしょ!」
「ふ~ん、魔法による従者の強化。 ここがあなたの工房だから、必要な魔素が揃ってる……そういうわけね」
「答える必要は――――」
「そりゃないでしょうね。勝つのは私なのだから」
「――――くっ!」
その直後、従者である剣士たちは剣が交わり、火花が散り、戦いの激しさが最高潮に達した。
決着は近い。
ダレスは狂戦士のように荒々しく、獰猛な攻撃を繰り出していた。彼の剣は、その体と同じ青い炎を帯び、風を切り裂きながら敵に襲いかかる。
その攻撃は猛烈の一言。荒々しい剣技と凄まじい力が相まって、ミカエルを圧倒していく。
しかし、圧倒され続けているはずのミカエルは、今も優雅な雰囲気を漂わせながら戦っている。
彼の剣舞はどこまでも美しく、滑らかな動きで相手の攻撃を巧みに受け流す。彼の剣技は洗練されており、優雅さ――――それとほんの少しだけ力強さを有していた。
その攻撃は精確で、相手の隙を突いて的確に切り込んでいく。
一方的に、やはりダレスだけが傷が増えていく。
痛めつけられていくダレス。 彼は獰猛な怒りに駆られ、ますます攻撃に凶暴さも出して一撃を繰り出す。
だが、どこまでも優雅な剣士であるミカエルは冷静さを保ち、相手の攻撃を見切る。紙一重――――されど、絶対に当たらない。
けれども一瞬、優雅であり続けようとした代償だろうか?
ごくわずかな隙をミカエルは見せた。
優雅な剣士が素早く反撃を仕掛ける。
勝機! そう思ったの誰だろう?
ダレス? メリス? それとも――――
それはミカエルの思考。 彼は、攻め続けるも決定打に欠けている事に気づいていた。ならば戦いに勝利するため――――自ら隙を見せて、罠を張ったのだ。
罠に嵌ったダレスは、ミカエルの剣を受ける。
彼の剣がダレスに深く突き刺さっていく。 そのまま彼は血を流しながら倒れ込んだ。
荒々しくも優雅な戦いは終わりを告げ、静寂が戻っていく。
勝利を手にしたミカエル。 薬物によって精神に変調をきたしている彼であったが、その表情には敗北したダレスへの敬意が確かに残っていた。
しかし――――
「さて、メリス……勝敗は決したわ。 やりなさい――――ミカエル」
レインは冷酷にメリスの処刑をミカエルに告げるのだった。