『色欲』のメリスとの戦い。そして、勝利。
残されたユウトは「大丈夫か?」と闘技場の端で避難していた少女に話しかける。
人間の少女ではない。その耳が証左だろう。
妖狐
彼女には狐の耳が生えていた。
「はい、ありがとうございます」と頭を下げる。それもペコリと音が聞こえてくるように可愛らしく。
ユウトは「……」となんと切り出して良いのか悩んで無言になる。
少女も「……?」と無言で首を傾げた。
「……えっと、俺はユウト・フィッシャー。この魔導書に導かれて、ここに来た……のだけど」
「あっ! はい! では戦いますか?」
「いや、さっきまでメリスと戦っていたみたいだけど」
それも負けていた。 その状態で戦うと選択肢が、浮かばないユウトだった。
「それじゃ、見逃してくれます? 勝った事にして差し上げるので」
「勝った事に……できるのか?」
「はい、簡単です! それではいきますよ」
「えい!」とかけ声と共に、ユウトの魔導書に変化が――――輝きを生み出した。
「魔導書が更新された。そう言えば……」と思い出す。
「さっきの戦い、あのメリスに勝った後に魔導書に変化があったのだけど……あれってなに?」
「え? えっと……シルキアやニクシアから説明を受けてませんか?」
「なんにも説明された記憶はないけど……」
いや、説明と言うと……
神が王を選ぶための儀式ってのは、ニクシアから聞いた覚えはある。
逆に言えば、そのくらいしかユウトは知らない。
「それは……えっと……サボりですね」
「……」
「では、代わりに私が説明いたしましょう。まず、魔導書は王になるための必須品です。王の候補に選ばれた者を有資格者と私たち使徒は呼んでます」
「有資格者……確かにあの2人――――シルキアとニクシアから、そう呼ばれているな」
「王になる資格を持つ者……だから、有資格者です。まず有資格者は7人います。ここまではご存知でしょうか?」
「――――いや、確かに聞いたことある。 7人も魔導書をもってる奴がいるってのは」
「よかったです。そこまで教えてないとしたら、2人にはお仕置きをしなければならないところでした」
「もしかして、あの2人よりも強いのか?」
「……さて」と妖狐は誤魔化すように舌をだした。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
彼女、妖狐の説明では、こうだ。
神が王を認めるために作った魔導書。 それは7冊の魔導書だ。
それぞれ――――『傲慢』 『嫉妬 』『憤怒』『強欲』『怠惰』『暴食』『色欲』
魔導書の保有者には、特殊な能力が与えられる。
例えば、ユウトの『暴食』なら自己強化。 魔導書に書かれた料理を食べる事で、身体能力、魔力などの戦闘能力が強化されていく。
他の魔導書にも、それぞれ強化する方法が書かれているらしい。
魔導書に浮き出た地図は、隠しダンジョンがあり、そこを攻略する事で強化手段の追加――――つまり、ユウトの場合は料理が増えるということだ。
そして、王に近づくために、一番効率的な方法は――――魔導書使い同士の直接戦闘。
原則1対1で行われる決闘(ただし操作系能力の影響を受けた者は、その対象ではない)。
勝者は敗者から、魔導書を強化するため使った資源を奪い取る事ができる。
「なるほど……凄い重要な情報じゃないか。なんでシルキアやニクシアは教えてくれなかったんだよ!」
「あの2人は使徒の中でも、ちょっと……」と苦笑する妖狐。
「今の説明だと、その魔導書使いを倒さなくても王になる事は可能って事でいいんだよな?」
「はい、魔導書で示される地図を使って、隠しダンジョンを攻略していけば不可能ではありませんね」
「う~ん、ところで隠しダンジョンって全部で幾つあるんだ?」
「全部ですか? 確か――――
1万4038カ所ありますね」
「……え? なに?」
「ですから、1万4038カ所の隠しダンジョンがあります」
「……」と絶句したユウト。 頭は左右に振って、冷静さを取り戻す。
「それを全部攻略しないと王とやらになれないわけじゃないよな?」
「それは……」
「それは?」
「わかりません」
「え?」
「私は保有している情報では、具体的に幾つのダンジョンを攻略したら神から王として認められるのか……詳細はありません」
「あ~ そりゃ、魔導書を持ってる連中はダンジョン攻略をやるよりも、他の連中を襲う事を優先するだろうなぁ……」
「そうですね」と彼女は再び苦笑いを見せた。
「魔導書が7冊。7人の魔導書使いがいるとして……まだ、誰もリタイアしてないのか?」
少し期待している。何人か脱落者がいる事を――――しかし、彼女の答えは、
「いませんね。幸いにも全員が健やかに戦っています」
「健やかに戦っている……ね。なんか矛盾を感じる表現だ。面白い」
それから、ユウトは最後に妖狐へ質問をした。
「最後に聞くのは失礼かもしれないけど……」
「はい、なんですか?」
「名前を聞いてなかった。」
「え? 私の名前ですか?」と妖狐は、驚いた表情になり、それから――――
「私の名前は、コノハです」と照れ臭そうに自分の名前を言った。
残されたユウトは「大丈夫か?」と闘技場の端で避難していた少女に話しかける。
人間の少女ではない。その耳が証左だろう。
妖狐
彼女には狐の耳が生えていた。
「はい、ありがとうございます」と頭を下げる。それもペコリと音が聞こえてくるように可愛らしく。
ユウトは「……」となんと切り出して良いのか悩んで無言になる。
少女も「……?」と無言で首を傾げた。
「……えっと、俺はユウト・フィッシャー。この魔導書に導かれて、ここに来た……のだけど」
「あっ! はい! では戦いますか?」
「いや、さっきまでメリスと戦っていたみたいだけど」
それも負けていた。 その状態で戦うと選択肢が、浮かばないユウトだった。
「それじゃ、見逃してくれます? 勝った事にして差し上げるので」
「勝った事に……できるのか?」
「はい、簡単です! それではいきますよ」
「えい!」とかけ声と共に、ユウトの魔導書に変化が――――輝きを生み出した。
「魔導書が更新された。そう言えば……」と思い出す。
「さっきの戦い、あのメリスに勝った後に魔導書に変化があったのだけど……あれってなに?」
「え? えっと……シルキアやニクシアから説明を受けてませんか?」
「なんにも説明された記憶はないけど……」
いや、説明と言うと……
神が王を選ぶための儀式ってのは、ニクシアから聞いた覚えはある。
逆に言えば、そのくらいしかユウトは知らない。
「それは……えっと……サボりですね」
「……」
「では、代わりに私が説明いたしましょう。まず、魔導書は王になるための必須品です。王の候補に選ばれた者を有資格者と私たち使徒は呼んでます」
「有資格者……確かにあの2人――――シルキアとニクシアから、そう呼ばれているな」
「王になる資格を持つ者……だから、有資格者です。まず有資格者は7人います。ここまではご存知でしょうか?」
「――――いや、確かに聞いたことある。 7人も魔導書をもってる奴がいるってのは」
「よかったです。そこまで教えてないとしたら、2人にはお仕置きをしなければならないところでした」
「もしかして、あの2人よりも強いのか?」
「……さて」と妖狐は誤魔化すように舌をだした。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
彼女、妖狐の説明では、こうだ。
神が王を認めるために作った魔導書。 それは7冊の魔導書だ。
それぞれ――――『傲慢』 『嫉妬 』『憤怒』『強欲』『怠惰』『暴食』『色欲』
魔導書の保有者には、特殊な能力が与えられる。
例えば、ユウトの『暴食』なら自己強化。 魔導書に書かれた料理を食べる事で、身体能力、魔力などの戦闘能力が強化されていく。
他の魔導書にも、それぞれ強化する方法が書かれているらしい。
魔導書に浮き出た地図は、隠しダンジョンがあり、そこを攻略する事で強化手段の追加――――つまり、ユウトの場合は料理が増えるということだ。
そして、王に近づくために、一番効率的な方法は――――魔導書使い同士の直接戦闘。
原則1対1で行われる決闘(ただし操作系能力の影響を受けた者は、その対象ではない)。
勝者は敗者から、魔導書を強化するため使った資源を奪い取る事ができる。
「なるほど……凄い重要な情報じゃないか。なんでシルキアやニクシアは教えてくれなかったんだよ!」
「あの2人は使徒の中でも、ちょっと……」と苦笑する妖狐。
「今の説明だと、その魔導書使いを倒さなくても王になる事は可能って事でいいんだよな?」
「はい、魔導書で示される地図を使って、隠しダンジョンを攻略していけば不可能ではありませんね」
「う~ん、ところで隠しダンジョンって全部で幾つあるんだ?」
「全部ですか? 確か――――
1万4038カ所ありますね」
「……え? なに?」
「ですから、1万4038カ所の隠しダンジョンがあります」
「……」と絶句したユウト。 頭は左右に振って、冷静さを取り戻す。
「それを全部攻略しないと王とやらになれないわけじゃないよな?」
「それは……」
「それは?」
「わかりません」
「え?」
「私は保有している情報では、具体的に幾つのダンジョンを攻略したら神から王として認められるのか……詳細はありません」
「あ~ そりゃ、魔導書を持ってる連中はダンジョン攻略をやるよりも、他の連中を襲う事を優先するだろうなぁ……」
「そうですね」と彼女は再び苦笑いを見せた。
「魔導書が7冊。7人の魔導書使いがいるとして……まだ、誰もリタイアしてないのか?」
少し期待している。何人か脱落者がいる事を――――しかし、彼女の答えは、
「いませんね。幸いにも全員が健やかに戦っています」
「健やかに戦っている……ね。なんか矛盾を感じる表現だ。面白い」
それから、ユウトは最後に妖狐へ質問をした。
「最後に聞くのは失礼かもしれないけど……」
「はい、なんですか?」
「名前を聞いてなかった。」
「え? 私の名前ですか?」と妖狐は、驚いた表情になり、それから――――
「私の名前は、コノハです」と照れ臭そうに自分の名前を言った。