ユウトは反撃に移る。
両手に魔力を込め、地面に触れた瞬間に激しい衝撃波を放つ。
『大地の震え』
それは巨大ワニの足元を揺さぶり、その巨体はバランスを崩していく。
ユウトはその隙を逃さない。素早く巨大ワニの背中に飛び乗り、両手に宿った魔力を解放する。
「詠唱 我が手に宿る炎の力よ 今こそ力を見せて焼き払え――――『炎剣』」
その手から炎が燃え上がり、敵の体を包み込む。
巨大ワニは苦痛に身をよじりながらも、凶暴な咆哮を上げる。
しかし、暴れ狂う巨大ワニの上。ユウトは振り落とされないようにしっかりと巨大ワニの体にしがみつき、魔力の炎をさらに強める。
「喰らえ! もう一発だ――――『炎剣』」
炎に身を焼かれていく巨大ワニの姿――――必死に抵抗。
身体をくねらせ、あるいは全身を振るわせるように暴れ続けるが、魔法使いの炎によって次第に弱まっていく。
「まだまだ、これで終わりじゃないぞ! ――――『炎剣』」
再び魔力の炎を集中させると、一気に巨大ワニの体内に放出した。
直後――――激しい爆発が起こり、炎と煙が巨体の周りを包み込む。
炎が収まり、煙が晴れる。 ユウトは巨大ワニの倒れた姿を見る。
敵は力尽き、その脅威は消え去ったのだ。息をつきながら、戦いの終わりを迎えた。
――――そう思われた。 しかし、間違えてはいけない。
魔物『トレント』は巨大ワニの名前ではない。
巨大ワニを覆い包む植物の鎧。 生物に憑りついて操る寄生植物こそが『トレント』の正体だ。
寄生主である巨大ワニが倒れた事でトレントが出現。
勝敗を決して油断しただろう魔法使いに襲い掛かる。
巨大ワニの肉体から突如として飛び出すと、その巨大な蔓を振り回しながらユウトに向かって飛び掛かって来る。
だが、ユウトには奇襲は通用しなかった。なぜなら――――
「それは、もう経験済だ!」
あっさりとユウトが放った火炎魔法の直撃を浴びたトレント。
全身が炎に包まれ、苦しみから暴れ狂うも――――すぐに動きを止めて、燃え尽きた。
それを見届けたユウトは――――
「……もしかして、俺は強くなっているのか?」
この場所は、得意の『火剣』が通じにくい場所のはずだった。
しかし、それを物ともしない自身の火力――――
(いつの間にか、魔法の威力が上がっている。 炎の付加性、魔力の凝縮性、魔法発動までの速度……以前、戦った相手だからこそ、違いがわかる。やはり―――)
ユウトは雑囊の奥に仕舞われた魔導書に目をやる。
「やっぱり、魔導書の効果……書かれている料理のレシピの効果か?」
改めて口にすると不思議な感覚だ。
(料理を食べて強くなる……あり得るのか? いや、食事で体が良好になる事は否定できない。 しかし、魔法の効果が向上するってなんだ? 一度、本格的に調べてみるか?)
そんな事を考えながら、先に進む。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
いつもの通り、隠しダンジョンの最奥。
光が漏れているのが見えた。 きっと、あの光の先には闘技場があるのだろう。
「さて、今回は……いや、この臭い」
ユウトは足を止めた。 この先から血の臭いが漂っていた。
反射的に探知魔法を発動する。 返って来る情報量――――
(この奥には、やはり闘技場が…… 2人いる!? いや、1人が魔物を倒している最中だ。おそらく、魔物がここの主だとしたら――――)
ユウトは、自身が気づくよりも早く駆けだしていた。
そして光の先、闘技場で広がる光景は――――
エルフの少女が立っていた。
彼女の足元には、倒れた女性――――おそらく半妖の魔物。
狐のような耳を持っていて、どこか神聖さを纏っている。
それを遊ぶように、いたぶっていたエルフの少女は、ユウトに気づいた。
「遅かったね 『暴食』の魔導書使い」
「――――誰だ?」
「私? 私は、メリス・ウィンドウィスパー……『色欲』の魔導書使いメリスよ」
「何をしている?」
「ん? 何に怒っているの? 私、怒られるような事をした?」
「彼女から、足をどけろ。そう言っているんだ」
エルフの少女、メリスが踏みつけている女性。 このダンジョンの主だろう。
ユウトは、その行為に不思議な怒りが湧き上がっていた。
「……これ、魔物よ? もしかして、人間みたいな見た目だから、感情移入をしてる? まぁ、良いわ」
そう言うと、彼女は踏み飛ばしている狐耳の女性を蹴り飛ばした。
「おまえ!」と感情を露わにしたユウトは、駆け出す。
両手に魔力を込め、地面に触れた瞬間に激しい衝撃波を放つ。
『大地の震え』
それは巨大ワニの足元を揺さぶり、その巨体はバランスを崩していく。
ユウトはその隙を逃さない。素早く巨大ワニの背中に飛び乗り、両手に宿った魔力を解放する。
「詠唱 我が手に宿る炎の力よ 今こそ力を見せて焼き払え――――『炎剣』」
その手から炎が燃え上がり、敵の体を包み込む。
巨大ワニは苦痛に身をよじりながらも、凶暴な咆哮を上げる。
しかし、暴れ狂う巨大ワニの上。ユウトは振り落とされないようにしっかりと巨大ワニの体にしがみつき、魔力の炎をさらに強める。
「喰らえ! もう一発だ――――『炎剣』」
炎に身を焼かれていく巨大ワニの姿――――必死に抵抗。
身体をくねらせ、あるいは全身を振るわせるように暴れ続けるが、魔法使いの炎によって次第に弱まっていく。
「まだまだ、これで終わりじゃないぞ! ――――『炎剣』」
再び魔力の炎を集中させると、一気に巨大ワニの体内に放出した。
直後――――激しい爆発が起こり、炎と煙が巨体の周りを包み込む。
炎が収まり、煙が晴れる。 ユウトは巨大ワニの倒れた姿を見る。
敵は力尽き、その脅威は消え去ったのだ。息をつきながら、戦いの終わりを迎えた。
――――そう思われた。 しかし、間違えてはいけない。
魔物『トレント』は巨大ワニの名前ではない。
巨大ワニを覆い包む植物の鎧。 生物に憑りついて操る寄生植物こそが『トレント』の正体だ。
寄生主である巨大ワニが倒れた事でトレントが出現。
勝敗を決して油断しただろう魔法使いに襲い掛かる。
巨大ワニの肉体から突如として飛び出すと、その巨大な蔓を振り回しながらユウトに向かって飛び掛かって来る。
だが、ユウトには奇襲は通用しなかった。なぜなら――――
「それは、もう経験済だ!」
あっさりとユウトが放った火炎魔法の直撃を浴びたトレント。
全身が炎に包まれ、苦しみから暴れ狂うも――――すぐに動きを止めて、燃え尽きた。
それを見届けたユウトは――――
「……もしかして、俺は強くなっているのか?」
この場所は、得意の『火剣』が通じにくい場所のはずだった。
しかし、それを物ともしない自身の火力――――
(いつの間にか、魔法の威力が上がっている。 炎の付加性、魔力の凝縮性、魔法発動までの速度……以前、戦った相手だからこそ、違いがわかる。やはり―――)
ユウトは雑囊の奥に仕舞われた魔導書に目をやる。
「やっぱり、魔導書の効果……書かれている料理のレシピの効果か?」
改めて口にすると不思議な感覚だ。
(料理を食べて強くなる……あり得るのか? いや、食事で体が良好になる事は否定できない。 しかし、魔法の効果が向上するってなんだ? 一度、本格的に調べてみるか?)
そんな事を考えながら、先に進む。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
いつもの通り、隠しダンジョンの最奥。
光が漏れているのが見えた。 きっと、あの光の先には闘技場があるのだろう。
「さて、今回は……いや、この臭い」
ユウトは足を止めた。 この先から血の臭いが漂っていた。
反射的に探知魔法を発動する。 返って来る情報量――――
(この奥には、やはり闘技場が…… 2人いる!? いや、1人が魔物を倒している最中だ。おそらく、魔物がここの主だとしたら――――)
ユウトは、自身が気づくよりも早く駆けだしていた。
そして光の先、闘技場で広がる光景は――――
エルフの少女が立っていた。
彼女の足元には、倒れた女性――――おそらく半妖の魔物。
狐のような耳を持っていて、どこか神聖さを纏っている。
それを遊ぶように、いたぶっていたエルフの少女は、ユウトに気づいた。
「遅かったね 『暴食』の魔導書使い」
「――――誰だ?」
「私? 私は、メリス・ウィンドウィスパー……『色欲』の魔導書使いメリスよ」
「何をしている?」
「ん? 何に怒っているの? 私、怒られるような事をした?」
「彼女から、足をどけろ。そう言っているんだ」
エルフの少女、メリスが踏みつけている女性。 このダンジョンの主だろう。
ユウトは、その行為に不思議な怒りが湧き上がっていた。
「……これ、魔物よ? もしかして、人間みたいな見た目だから、感情移入をしてる? まぁ、良いわ」
そう言うと、彼女は踏み飛ばしている狐耳の女性を蹴り飛ばした。
「おまえ!」と感情を露わにしたユウトは、駆け出す。