その日、ユウトは1人で町を歩いていた。

 彼にしては、珍しく重苦しい足取りであり「はぁ~」なんて、ため息をついている。

「気が重いなぁ……」

 そんな様子を見かけたのだろう。

「どうしましたか?」と声をかけられた。

 声の主はメイヴだった。彼女は、たまたまユウトを見かけたらしい。

「あぁメイヴか。気づかなかったよ。ちょっと、前の仲間に呼び出されてね」

 その言葉で彼女も、いろいろと察した。

 ユウト・フィッシャーは追放者である。

 A級冒険者であるミカエル・シャドウを中心とした仲間たちから追放を命じられた。

 しかし、現在は、ミカエルは引退して町を去った。

 他のメンバーでも、レイン・アーチャーは消息不明。どうやら、ミカエルを追いかけて行った……そんな噂だ。

 そのされた2人……いや、新人の大魔導士(アークメイジ)オリビアを入れれば3人か?

『剣聖』 ケイデン・ライト

『大神官』 エリザ・ホワイト

 頭目(リーダー)のミカエルと彼等との間にどのような話合いが行われたのかユウトは知らない。

 しかし、不満は残っているのだろう。 彼等の生活基盤がひっくり変える出来事だ。

「――――もし、良ければ私も御一緒しましょうか?」とメイヴは提案してくれた。

「そんなに不安そうな顔してるかい? 大丈夫だよ、今さら戻ってこいなんて言わないだろうし……嫌な提案とかしてこない……と思う」

「本当の本当に大丈夫ですか? もしも、何かあったら言ってください。私も後ろ盾として動けるようにします」

「そんな大げさな」とユウトは笑ったが、メイヴには、不安がぬぐえなかった。

 彼女と別れたユウトは、集合場所に到着した。

「せめて、呼び出された場所が通い慣れた所なのは、精神的に楽になるぜ。ほんの少しだけだが……」

 集合場所はユウトが常連として食事をする店。 冒険者ギルドの向いの食堂だ。

 店に入ると、すぐにケイデンの姿はあった。 オリビアもいる。しかし――――

「久しぶりだな。 エリザはいないのか?」

「……」と相変わらず、ケイデンは喋らない。

「彼女は呼んでいない? それじゃ……なんで、この3人なんだ?」

 ユウトの疑問ももっともだろう。 旧ミカエル勢力の今後の話なら、エリザを呼んでいないのはおかしい。なら――――

「魔法関連か? ケイデンが個人的に魔法関係の依頼をしたい。しかし、個人的な依頼のために冒険者ギルド使えない?」

「……」とケイデンは頷いた。

 その横で――――「あの……」とオリビアが遠慮気味に声を出した。

「ん? どうかしたのか?」

「どうして、ケイデンさんは、声を出さないのでしょうか? それにユウトさんは、ケイデンさんの考えが、どうしてわかるのでしょうか?」

「あぁ」とユウトは彼女の質問に答えた。

「コイツは恥ずかしがり屋なんだ。 注目を浴びたり、気分が向上すると、勢いで声を発するけど、基本的には喋らない。 だから、表情を読んで意思疎通をした方がいい」

「表情で意思疎通……」とオリビアは意味が分からないと言いたくなった。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

「なるほど……依頼内容は人探しか」

「……」とケイデンは頷いた。

「町で財布を盗んでいる悪漢を捕まえた女性。彼女の手助けに悪漢を捕まえたが、何も言わずに立ち去ったのを悔やんでいる……と」

「……その通りだ」とケイデンが言葉を発した。

「あの時の俺は、スリを追いかける彼女の正義感に魅かれる物を感じた。何より彼女の華麗な技々は武人として驚くほどに華麗であった。
 しかし、それを俺自身が理解するのが遅れた。せめて、あの時に名前を聞いておけば――――

 正直に言おう。俺は彼女に魅力されている。だから、再び会い、礼と共に結婚を申し込もうと思っている。頼む、ユウト、オリビア……お前たちの魔法を使って彼女を見つけ出す事は出来ないだろうか!」

 その迫力にオリビアは「ひぃ」と怯えてるようだった。

 気分が向上したらケイデンは勢いで喋り出す。その意味は伝わっただろう。

 しかし――――

「町中で、一度あっただけの女性を探し出す。難しい依頼だな……何か、特徴はないのか?」

「……」

「何? 流れるように長く美しい金髪とそれに見合う顔。何より……露出が多い衣服
?」

 その特徴なら、簡単に見つかりそうだ。 ユウトはそう思った。

 事実、すぐに見つかる事になる。