1人で鎧の装着するには練習が必要だった。
魔物から危険な液体を吐かれた時、あるは極寒の川や海に落とされた時……
素早く鎧を脱ぎ捨てることが生死を分ける要因になり得る。
まる1日かけて鎧を体に馴染ませていく。
重い鎧の装着と着脱を淡々と繰り返す。それだけでも、慣れぬそれだけでも重労働。
しかし、それが苦にならない。 不思議と楽しいとすら感じられた。
(集中し続ける作業だろうか? 嫌な事を忘れることができる)
汗を拭う。
全身に疲労を纏ったまま、ベッドに倒れ込む。
目を閉じ、再び開いた時には、外はまだ暗い。しかし、薄っすらと青みがかっている。
そこで気づいた。自分の空腹を――――お腹が不機嫌な音を鳴らし始めた。
「よし! 朝飯を食べに行くか!」と勢いよくユウトはベッドから飛び起きた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
(さて、朝飯は何を食すべきか?)
まだ夜から朝になろうとしてる時間帯。ありがたい事に既に開いている飲食店は幾つかある。
目がついた店は喫茶店。まだ珍しい飲料である珈琲を楽しむ店でありながら、食事も提供されている。
何より、朝早く開いているのが嬉しい。
「量が多くて有名な店だな」とユウトはお腹と相談して、「ここにするか」と店に入る。
中に入ると自分以外にも、意外と客が入っている。
メニューを一瞥すると――――
「朝食の専用料理もあるのか……でも、ここは」とユウトはメニューを決め、店員を呼んだ。
「たまごのピザトースト。飲み物は珈琲をお願いします」
「大丈夫ですか? 結構、量ありますよ」
「大丈夫、大丈夫」とユウトは笑みを零した。
「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」と注文を聞いた店員が下がっていった。
(わざわざ量を確認するあたり、食べ残す人が多いのだろう。疲労と空腹の身には嬉しい確認だ)
気がつけば店内に珈琲独特の香りが充満している。きっと、芳醇な香りが鼻をくすぐるなんて表現は、こういう時に使うのだろう。
何気なく店内の様子を見渡す。
外からはレンガ作りの建物に見えたが、内装は木材がふんだんに使用されている。
木々から感じられる安らぎの効果を狙っているのかもしれない。
不意に他の客が食している物が見えた。
「トーストされたパンは、ずいぶんと分厚いな。バターと……あの黒いのは餡か?」
餡――――東洋のお菓子で使われる。
小豆を煮込んで砂糖を加えた物が代表的。さまざまな食材に煮込まれて新しい餡が日々、生まれているとは聞いている。
この国は、東洋との貿易が盛んな地であるが、それでも食べ物となると中々、入ってこない。
珍しい食べ物だ。
「すいません!」とユウトは、再び店員を呼び止めた。
「追加でトーストを、アレと同じ物を」と追加注文。
再び、「本当に大丈夫ですか?」と確認される。
そうしてテーブルに置かれた完成された料理は――――
「大きい!」と思わす口に出るほどの大きさだった。
「たまごのピザトースト……なるほど、こういうことか」
2枚の食パンでたまごをサンドされている。
その上に大量のチーズが敷き詰められ、人参やトマト、玉ねぎといった甘みのある野菜が乗せられている。
さらに焼かれて、とろけきったチーズは液体のように見えた。
「そりゃ、店員さんも量の確認をしてくるわけだ」とユウトは、その量に苦笑する。
「この熱さ。流石に手で持って食べるのは無理か」
彼はフォークを持ち、一口かぶりつく。
カリッ! と焼かれた表面とは裏腹に柔らかなパンの食感。
アツアツのピザトーストの中から、まずは甘みのある野菜の風味が広がる。
なにより、溺れるほどに乗せられたチーズは、まろやかな味わいとチーズ独特の甘さを加速させる。
「――――いや、注目すべきは中のたまご。濃厚な半熟たまごの甘みはは言わずもがな。食べるたびに零れ落ちそうになるほどの量が凄い!」
溢れていく感動を1度落ち着かせるためにユウトは、濃い褐色の珈琲に口づけを交わした。
「よし! これなら――――いくらでも食べれそうだ」
彼の食欲は爆発的に加速されていく。
たまごは人間に活力を与え、活力と共に彼の飢餓感は満足感へと変わって行く。
この頃には、少ない客たちも異常さに気づき始めた。
席に1人で無心に巨大なピザトーストを頬張る男。
その姿は、決して優雅とは言えないけれども、不思議な美しさ――――感動を引き起こす。
なにより、その食べっぷりを見た観客たちは、食欲を感染させられた。
「すまない……おかわりを!」
「お、俺も!」
そして、彼等は口を揃えて同じ物を注文した。
「「「たまごのピザトースト」」」
早朝の喫茶店とは思えない活気が店内を包んでいく。
その最中、彼は――――「ごちそうさま」と1人唱えた。
しかし、このボリュームを食べ終えても、彼の胃袋は満足していなかった。
「何か追加注文を――――」と考えた時だった。
「お待たせしました。追加のトーストです」とテーブルに運ばれた。
皿の上には、厚めのトースト。 それとは別に、バターと餡が置かれている。
どうやら、自分で好みの量を乗せれるらしい。
(すっかり失念していた。これは嬉しい誤算だ)
ユウトは笑みを浮かべながら、口をリセットするに珈琲を――――今度は砂糖と牛乳を混ぜて――――飲み始めた。
魔物から危険な液体を吐かれた時、あるは極寒の川や海に落とされた時……
素早く鎧を脱ぎ捨てることが生死を分ける要因になり得る。
まる1日かけて鎧を体に馴染ませていく。
重い鎧の装着と着脱を淡々と繰り返す。それだけでも、慣れぬそれだけでも重労働。
しかし、それが苦にならない。 不思議と楽しいとすら感じられた。
(集中し続ける作業だろうか? 嫌な事を忘れることができる)
汗を拭う。
全身に疲労を纏ったまま、ベッドに倒れ込む。
目を閉じ、再び開いた時には、外はまだ暗い。しかし、薄っすらと青みがかっている。
そこで気づいた。自分の空腹を――――お腹が不機嫌な音を鳴らし始めた。
「よし! 朝飯を食べに行くか!」と勢いよくユウトはベッドから飛び起きた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
(さて、朝飯は何を食すべきか?)
まだ夜から朝になろうとしてる時間帯。ありがたい事に既に開いている飲食店は幾つかある。
目がついた店は喫茶店。まだ珍しい飲料である珈琲を楽しむ店でありながら、食事も提供されている。
何より、朝早く開いているのが嬉しい。
「量が多くて有名な店だな」とユウトはお腹と相談して、「ここにするか」と店に入る。
中に入ると自分以外にも、意外と客が入っている。
メニューを一瞥すると――――
「朝食の専用料理もあるのか……でも、ここは」とユウトはメニューを決め、店員を呼んだ。
「たまごのピザトースト。飲み物は珈琲をお願いします」
「大丈夫ですか? 結構、量ありますよ」
「大丈夫、大丈夫」とユウトは笑みを零した。
「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」と注文を聞いた店員が下がっていった。
(わざわざ量を確認するあたり、食べ残す人が多いのだろう。疲労と空腹の身には嬉しい確認だ)
気がつけば店内に珈琲独特の香りが充満している。きっと、芳醇な香りが鼻をくすぐるなんて表現は、こういう時に使うのだろう。
何気なく店内の様子を見渡す。
外からはレンガ作りの建物に見えたが、内装は木材がふんだんに使用されている。
木々から感じられる安らぎの効果を狙っているのかもしれない。
不意に他の客が食している物が見えた。
「トーストされたパンは、ずいぶんと分厚いな。バターと……あの黒いのは餡か?」
餡――――東洋のお菓子で使われる。
小豆を煮込んで砂糖を加えた物が代表的。さまざまな食材に煮込まれて新しい餡が日々、生まれているとは聞いている。
この国は、東洋との貿易が盛んな地であるが、それでも食べ物となると中々、入ってこない。
珍しい食べ物だ。
「すいません!」とユウトは、再び店員を呼び止めた。
「追加でトーストを、アレと同じ物を」と追加注文。
再び、「本当に大丈夫ですか?」と確認される。
そうしてテーブルに置かれた完成された料理は――――
「大きい!」と思わす口に出るほどの大きさだった。
「たまごのピザトースト……なるほど、こういうことか」
2枚の食パンでたまごをサンドされている。
その上に大量のチーズが敷き詰められ、人参やトマト、玉ねぎといった甘みのある野菜が乗せられている。
さらに焼かれて、とろけきったチーズは液体のように見えた。
「そりゃ、店員さんも量の確認をしてくるわけだ」とユウトは、その量に苦笑する。
「この熱さ。流石に手で持って食べるのは無理か」
彼はフォークを持ち、一口かぶりつく。
カリッ! と焼かれた表面とは裏腹に柔らかなパンの食感。
アツアツのピザトーストの中から、まずは甘みのある野菜の風味が広がる。
なにより、溺れるほどに乗せられたチーズは、まろやかな味わいとチーズ独特の甘さを加速させる。
「――――いや、注目すべきは中のたまご。濃厚な半熟たまごの甘みはは言わずもがな。食べるたびに零れ落ちそうになるほどの量が凄い!」
溢れていく感動を1度落ち着かせるためにユウトは、濃い褐色の珈琲に口づけを交わした。
「よし! これなら――――いくらでも食べれそうだ」
彼の食欲は爆発的に加速されていく。
たまごは人間に活力を与え、活力と共に彼の飢餓感は満足感へと変わって行く。
この頃には、少ない客たちも異常さに気づき始めた。
席に1人で無心に巨大なピザトーストを頬張る男。
その姿は、決して優雅とは言えないけれども、不思議な美しさ――――感動を引き起こす。
なにより、その食べっぷりを見た観客たちは、食欲を感染させられた。
「すまない……おかわりを!」
「お、俺も!」
そして、彼等は口を揃えて同じ物を注文した。
「「「たまごのピザトースト」」」
早朝の喫茶店とは思えない活気が店内を包んでいく。
その最中、彼は――――「ごちそうさま」と1人唱えた。
しかし、このボリュームを食べ終えても、彼の胃袋は満足していなかった。
「何か追加注文を――――」と考えた時だった。
「お待たせしました。追加のトーストです」とテーブルに運ばれた。
皿の上には、厚めのトースト。 それとは別に、バターと餡が置かれている。
どうやら、自分で好みの量を乗せれるらしい。
(すっかり失念していた。これは嬉しい誤算だ)
ユウトは笑みを浮かべながら、口をリセットするに珈琲を――――今度は砂糖と牛乳を混ぜて――――飲み始めた。