彼女――――女性ケンタウロスは名乗りを上げる。
まるで戦場の武将の如く――――
「我こそは、大地を駆ける風より速き! 名前はニクシアだ。この勇姿に震えるがよい」
威圧を込めた名乗り上げ。 戦場を駆けた経験のないユウトには、返す言葉が思い浮かばなかった。
「うむ、我に名乗る名はないと言うことか! その心意気は良し!」
女性ケンタウロス――――ニクシアは武器を手に取り、その先端をユウトに突きつける。
その武器は槍と斧が一体化したような形状。名前はハルバードと言う。
長い柄の先には斧の刃。さらに槍の先端も取り付けられている。
この組み合わせにより、斧や槍の両方の特性を備えた多目的武器とされる。
彼女が身に付けている黄金の鎧と同じ、黄金のハルバードだ。
そのハルバードを頭上にまで持ち上げてブンブンと振り回す。
もしも、ここが戦いの場でなければ、滑稽とも思えた姿となるだろうが……
(これがケンタウロスの威圧――――流石だ。対人間戦に置いて最強の魔物と言う者もいると聞く)
ケンタウロスは強い。
その理由は、頑強な体躯と蹄からの力強い蹴り――――何よりも速度からの一撃。
人馬一体の体は、戦場の猛将たちでも恐れおののく。
その恐怖がユウトを襲う。迎え撃たなければならない彼は――――
「くる!」とユウトは構える。
向かってくるのは人間離れした速度と迫力。
そして筋骨隆々の上半身から繰り出されるハルバードの一撃。
ユウトは盾で防御するが――――
カッキーン
冗談のような金属音が、狭いダンジョンに響いた。
防御したユウトの盾ににハルバードが叩き込まれて、その体は浮かび上がった。
物理的な衝撃と精神的な衝撃に耐えながらも――――
「う、嘘だろ? 俺の体が――――打ち上がられただと!」
彼の兜が、何かに当たる。コツッと音――――その音の正体は、兜が天井に当たった音だった。
「天井にまで! 打ち上がれたのか!?」
ユウトの脳裏に浮かんだのは、前戦の蛇女との戦い。
蛇女のように両足から天井に着地する。
しかし、ユウトは人間。彼女のように天井に張り付いて、逆さに立ち続けることはできない。 ――――だから!
重力に合わせて、地上のケンタウロス――――ニクシアに向かって飛び掛かって来るユウト。
「詠唱 我が手に宿る炎の力よ 今こそ力を見せて焼き払え――――」
これから行うのは一瞬の交差。刹那に等しい攻防を直前にしたユウトは――――
『炎剣』
魔法を唱えた。
それは、彼が得意とする魔法の一撃。 今までの強敵を葬ったそれをニクシアは――――彼女の武器であるハルバードで受けた。
「魔法に反応して防御を間に合わせた!? いや、読まれたのか?」
別に『炎剣』はユウト固有の魔法ではない。
しかし、別の魔法使いが同じ魔法を使っても、まったく同じにはならない。
速度、威力、効果、それぞれは魔法使いの力量によって大きく異なるのだ。
だから――――
「初見のはずの攻撃に完全に対処できるのか……怪物め!」
戦慄するユウトを嘲笑うようにニクシアはハルバードを振るった。
槍のような素早い突きも脅威だが、今は斧のような破壊力がユウトを襲う。
しかし、彼の回避能力は高い。 地面を転がり、その一撃を避けるのだが――――
「……甘いな。我の足元は死線となるぞ?」
前記したようにケンタウロスの武器には、蹄からの力強い蹴りがある。
転がるユウトに蹴りが襲い掛かって来る。
何発かは躱せたが、全てを躱し続けることは不可能だった。
「くっ、しまった…! ぐあぁぁっ…!」
彼女の足元で地面を転がっていたはずユウトは、ニクシアの蹴りを受けた。
それは疾風の如く迫り、大地を揺らすほどの猛威。 たとえ岩でも粉砕する威力が込められているのだ。
その攻撃を受けて、ユウトは弾き飛ばされて、ダンジョンの壁に衝突した。
「……強い。いや、流石に強すぎるんじゃないか? 体は――――不幸にも、まだまだ動くみたいだぜ」
悪態をつきながら、ユウトは立ち上がる。
しかし、ニクシアは攻撃の手を緩めるような気はないようだ。
騎馬の速度をもって、接近。 そして、飛び上がると今度はハルバードの先端――――槍のように突きを放った。
まるで戦場の武将の如く――――
「我こそは、大地を駆ける風より速き! 名前はニクシアだ。この勇姿に震えるがよい」
威圧を込めた名乗り上げ。 戦場を駆けた経験のないユウトには、返す言葉が思い浮かばなかった。
「うむ、我に名乗る名はないと言うことか! その心意気は良し!」
女性ケンタウロス――――ニクシアは武器を手に取り、その先端をユウトに突きつける。
その武器は槍と斧が一体化したような形状。名前はハルバードと言う。
長い柄の先には斧の刃。さらに槍の先端も取り付けられている。
この組み合わせにより、斧や槍の両方の特性を備えた多目的武器とされる。
彼女が身に付けている黄金の鎧と同じ、黄金のハルバードだ。
そのハルバードを頭上にまで持ち上げてブンブンと振り回す。
もしも、ここが戦いの場でなければ、滑稽とも思えた姿となるだろうが……
(これがケンタウロスの威圧――――流石だ。対人間戦に置いて最強の魔物と言う者もいると聞く)
ケンタウロスは強い。
その理由は、頑強な体躯と蹄からの力強い蹴り――――何よりも速度からの一撃。
人馬一体の体は、戦場の猛将たちでも恐れおののく。
その恐怖がユウトを襲う。迎え撃たなければならない彼は――――
「くる!」とユウトは構える。
向かってくるのは人間離れした速度と迫力。
そして筋骨隆々の上半身から繰り出されるハルバードの一撃。
ユウトは盾で防御するが――――
カッキーン
冗談のような金属音が、狭いダンジョンに響いた。
防御したユウトの盾ににハルバードが叩き込まれて、その体は浮かび上がった。
物理的な衝撃と精神的な衝撃に耐えながらも――――
「う、嘘だろ? 俺の体が――――打ち上がられただと!」
彼の兜が、何かに当たる。コツッと音――――その音の正体は、兜が天井に当たった音だった。
「天井にまで! 打ち上がれたのか!?」
ユウトの脳裏に浮かんだのは、前戦の蛇女との戦い。
蛇女のように両足から天井に着地する。
しかし、ユウトは人間。彼女のように天井に張り付いて、逆さに立ち続けることはできない。 ――――だから!
重力に合わせて、地上のケンタウロス――――ニクシアに向かって飛び掛かって来るユウト。
「詠唱 我が手に宿る炎の力よ 今こそ力を見せて焼き払え――――」
これから行うのは一瞬の交差。刹那に等しい攻防を直前にしたユウトは――――
『炎剣』
魔法を唱えた。
それは、彼が得意とする魔法の一撃。 今までの強敵を葬ったそれをニクシアは――――彼女の武器であるハルバードで受けた。
「魔法に反応して防御を間に合わせた!? いや、読まれたのか?」
別に『炎剣』はユウト固有の魔法ではない。
しかし、別の魔法使いが同じ魔法を使っても、まったく同じにはならない。
速度、威力、効果、それぞれは魔法使いの力量によって大きく異なるのだ。
だから――――
「初見のはずの攻撃に完全に対処できるのか……怪物め!」
戦慄するユウトを嘲笑うようにニクシアはハルバードを振るった。
槍のような素早い突きも脅威だが、今は斧のような破壊力がユウトを襲う。
しかし、彼の回避能力は高い。 地面を転がり、その一撃を避けるのだが――――
「……甘いな。我の足元は死線となるぞ?」
前記したようにケンタウロスの武器には、蹄からの力強い蹴りがある。
転がるユウトに蹴りが襲い掛かって来る。
何発かは躱せたが、全てを躱し続けることは不可能だった。
「くっ、しまった…! ぐあぁぁっ…!」
彼女の足元で地面を転がっていたはずユウトは、ニクシアの蹴りを受けた。
それは疾風の如く迫り、大地を揺らすほどの猛威。 たとえ岩でも粉砕する威力が込められているのだ。
その攻撃を受けて、ユウトは弾き飛ばされて、ダンジョンの壁に衝突した。
「……強い。いや、流石に強すぎるんじゃないか? 体は――――不幸にも、まだまだ動くみたいだぜ」
悪態をつきながら、ユウトは立ち上がる。
しかし、ニクシアは攻撃の手を緩めるような気はないようだ。
騎馬の速度をもって、接近。 そして、飛び上がると今度はハルバードの先端――――槍のように突きを放った。