「しかし、困ったなぁ……」とユウトは呟いた。
「価値が高すぎて、買い取って貰えないとなると新しい装備が購入できない」
彼には、しばらく生活するには困らない貯蓄があった。
しかし、防具の値段は高い。 加えて魔法使いの装備は特殊素材が使われ加工が難しいため、さらに値段は高めになっている。
命を守るための道具だ。安くないのは当たり前だ。
そんなユウトにミーナは―――――
「どうして、新しい装備が必要なのですか?」と聞いて来た。
「実は――――」と説明をする。
「なるほどですね。その孤高特化型魔法使いっていうのは、よくわかりませんが……魔法剣士に転職するわけですね」
「まぁ、概ねその通りだ。剣を使わず魔法剣士のような立ち回りで戦いたい」
その発言には、本当によくわからないと表情で返すミーナだったが、
「では、こうするのどうでしょう?」
彼女が提案したのは、ユウトの杖を店で預かる事だ。
その代わりに店で購入する金額を貸す。要するに質屋のようなもの。
「本当に構わないのか?」
「いえいえ、こちらこそ。店内の非売品として飾らせていただきます。ユウトさんがお金を返してくれる限り、決して他のお客に流しませんのでご安心してください」
彼女はお客に対して真摯である。しかし、彼女も商売人であることに変わりはない。
一時的であるとは言え、ユウトの杖を所有する経済効果を計算しての提案だった。
早速、ユウトは、
(これで金銭面に妥協することなく防具も武器も購入できる。ありがたい)
そう考え、防具と武器を見て回った。
ユウトが理想とする孤高特化型魔法使いとは、1人で魔物と戦う事を想定している。
つまり、必要なのは――――
身を守るために戦士の鎧と盾。 素早く振れて、使い分けれる短い杖を数本。
そうそう思っていたのだが――――
「大丈夫ですか? 動けます?」
鎧の試着を手伝ってたミーナが心配そうに声をかける。
「こんなにも重いものなのか……なにより、熱い!」
戦士の鎧。それは、ただ鎧を身に付けるだけではない。
衝撃を和らげるために分厚い緩衝着。
鎖を編んで作られたチェインメイル(約10キロ)
その上に胴鎧を身に付ける。 そして背中のマントは飾りではない。
背後からの不意打ちを防ぐため、剛弓からの矢でも簡単に貫けぬように――――
そう! マントは立派な防具なのだ。防具であるため、分厚さと重さはは見た目以上。
最後に鉄の兜を頭に被って――――はい、完成。
「ぜ、前衛の戦士は、こんなにも重い装備で動き回っているのか――――くッ!体力が足りない!」
「そりゃ、冒険者の戦士さんたちは魔物と正面から打ち合うわけですから、いきなり同じ装備をしても簡単に動けませんよ!」
ミーナは呆れたように言う。
しかし、ユウトは軽く盾と杖の素振りをする。
その姿に「あれ?」とミーナは首を傾げる。
(初めて装備した人なら、一歩も動けなくてもおかしくない重さなのに……妙に様になっていますね)
彼は魔法使いであるが、それでもA級冒険者。
舗装されていない山道や森を駆け、不意を突かれて魔物に組み付かれる事もある。
体力も筋力も常人とは比べものにならないほどに鍛えこまれているのだ。
「――――うん、悪くない。なんとか慣れてきたぞ」
ユウトの素振りも徐々に速度が上がり、ミーナの目には捉えられないほどの動きになっていた。
「ひぇ……ユウトさんって本当にA級冒険者だったですね」
1流冒険者の動き。自然と彼女からは称賛の声が漏れた。
しかし、ユウト本人は――――
「え? 俺って、そんなに弱く見えてたの?」と苦笑した。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「最後に確認ですが、本当に購入するのですね」
「あぁ、これで頼む」
結局、ユウトは重装備と言える鎧と盾。そして数本の杖を新調した。
「……今更なのですが、ユウトさんなら無理に戦い方を変えなくても、歓迎して仲間に入れて来る人たちがたくさんいると思うのですが?」
「――――っ そうかもしれないね。でも、暫くは1人で自分を鍛え直したいって気持ちが強いんだ」
「そう……ですか。それじゃ頑張ってくださいね。主に返済の方を!」
「ぐっぐぐ、頑張ります」とユウトは、店を後にした。
ミーナは彼から預かった杖を、間違っても盗まれないように店の奥に展示した。
「これでよし!」と納得した彼女。時間を確認すると店を閉める時間が近づいていた。
「もう、こんな時間ですか! 閉店の準備をしないと!」
彼女が杖に背中を見せて離れていくと――――
ガタガタ……
ガタガタ……
誰も触れていないにも関わらず、ひとりでにユウトの杖が動き出す。
やがて、眩い光に包まれると――――
「ご、御主人さまに捨てられた……」
その杖は、少女の姿に変身していた。
彼女の正体――――
エルフの聖樹から生まれ、武器として育てられたことにより、
杖に宿った精霊であるが……ユウトも、ミーナも、その事に気づくことはなかった。
「価値が高すぎて、買い取って貰えないとなると新しい装備が購入できない」
彼には、しばらく生活するには困らない貯蓄があった。
しかし、防具の値段は高い。 加えて魔法使いの装備は特殊素材が使われ加工が難しいため、さらに値段は高めになっている。
命を守るための道具だ。安くないのは当たり前だ。
そんなユウトにミーナは―――――
「どうして、新しい装備が必要なのですか?」と聞いて来た。
「実は――――」と説明をする。
「なるほどですね。その孤高特化型魔法使いっていうのは、よくわかりませんが……魔法剣士に転職するわけですね」
「まぁ、概ねその通りだ。剣を使わず魔法剣士のような立ち回りで戦いたい」
その発言には、本当によくわからないと表情で返すミーナだったが、
「では、こうするのどうでしょう?」
彼女が提案したのは、ユウトの杖を店で預かる事だ。
その代わりに店で購入する金額を貸す。要するに質屋のようなもの。
「本当に構わないのか?」
「いえいえ、こちらこそ。店内の非売品として飾らせていただきます。ユウトさんがお金を返してくれる限り、決して他のお客に流しませんのでご安心してください」
彼女はお客に対して真摯である。しかし、彼女も商売人であることに変わりはない。
一時的であるとは言え、ユウトの杖を所有する経済効果を計算しての提案だった。
早速、ユウトは、
(これで金銭面に妥協することなく防具も武器も購入できる。ありがたい)
そう考え、防具と武器を見て回った。
ユウトが理想とする孤高特化型魔法使いとは、1人で魔物と戦う事を想定している。
つまり、必要なのは――――
身を守るために戦士の鎧と盾。 素早く振れて、使い分けれる短い杖を数本。
そうそう思っていたのだが――――
「大丈夫ですか? 動けます?」
鎧の試着を手伝ってたミーナが心配そうに声をかける。
「こんなにも重いものなのか……なにより、熱い!」
戦士の鎧。それは、ただ鎧を身に付けるだけではない。
衝撃を和らげるために分厚い緩衝着。
鎖を編んで作られたチェインメイル(約10キロ)
その上に胴鎧を身に付ける。 そして背中のマントは飾りではない。
背後からの不意打ちを防ぐため、剛弓からの矢でも簡単に貫けぬように――――
そう! マントは立派な防具なのだ。防具であるため、分厚さと重さはは見た目以上。
最後に鉄の兜を頭に被って――――はい、完成。
「ぜ、前衛の戦士は、こんなにも重い装備で動き回っているのか――――くッ!体力が足りない!」
「そりゃ、冒険者の戦士さんたちは魔物と正面から打ち合うわけですから、いきなり同じ装備をしても簡単に動けませんよ!」
ミーナは呆れたように言う。
しかし、ユウトは軽く盾と杖の素振りをする。
その姿に「あれ?」とミーナは首を傾げる。
(初めて装備した人なら、一歩も動けなくてもおかしくない重さなのに……妙に様になっていますね)
彼は魔法使いであるが、それでもA級冒険者。
舗装されていない山道や森を駆け、不意を突かれて魔物に組み付かれる事もある。
体力も筋力も常人とは比べものにならないほどに鍛えこまれているのだ。
「――――うん、悪くない。なんとか慣れてきたぞ」
ユウトの素振りも徐々に速度が上がり、ミーナの目には捉えられないほどの動きになっていた。
「ひぇ……ユウトさんって本当にA級冒険者だったですね」
1流冒険者の動き。自然と彼女からは称賛の声が漏れた。
しかし、ユウト本人は――――
「え? 俺って、そんなに弱く見えてたの?」と苦笑した。
・・・
・・・・・・
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「最後に確認ですが、本当に購入するのですね」
「あぁ、これで頼む」
結局、ユウトは重装備と言える鎧と盾。そして数本の杖を新調した。
「……今更なのですが、ユウトさんなら無理に戦い方を変えなくても、歓迎して仲間に入れて来る人たちがたくさんいると思うのですが?」
「――――っ そうかもしれないね。でも、暫くは1人で自分を鍛え直したいって気持ちが強いんだ」
「そう……ですか。それじゃ頑張ってくださいね。主に返済の方を!」
「ぐっぐぐ、頑張ります」とユウトは、店を後にした。
ミーナは彼から預かった杖を、間違っても盗まれないように店の奥に展示した。
「これでよし!」と納得した彼女。時間を確認すると店を閉める時間が近づいていた。
「もう、こんな時間ですか! 閉店の準備をしないと!」
彼女が杖に背中を見せて離れていくと――――
ガタガタ……
ガタガタ……
誰も触れていないにも関わらず、ひとりでにユウトの杖が動き出す。
やがて、眩い光に包まれると――――
「ご、御主人さまに捨てられた……」
その杖は、少女の姿に変身していた。
彼女の正体――――
エルフの聖樹から生まれ、武器として育てられたことにより、
杖に宿った精霊であるが……ユウトも、ミーナも、その事に気づくことはなかった。