その顔は美しい女のものだった。
だが、命を噛み砕かんと牙を向ける姿はグロテスクとしか表現はできない。
聖職者。その正体は――――蛇女だった。
ユウトはナイフを弾いた盾を、今度は蛇女の顔面に叩き込みこんだ。
その感想は――――「予想より硬いな」
盾を平べったい鉄板と見なして、高速で振ればナイフ以上に切れ味が生まれる。
しかし、大きく仰け反った蛇女は無傷。 その頑丈さがわかる。
正体を現したことで明らかになる大きく長い胴体。
ユウトは思わず、見上げる高さ。
「この高さは――――ヤバい!」
蛇女は背を僅かに反らしたの攻撃に勢いをつけるためだ。
彼女は高さを利用して、ユウトの頭上から攻撃をしてくる。
それは猛攻だった。 身を低くしたユウトは盾で弾き、地面を転がりながら身を守る。
(人間の弱点は頭上を狙った攻撃とは聞いた事があるが……ここまでやり難いとはな!)
もちろん、人間よりも巨大な魔物はたくさんいる。 しかし、頭上を明確な弱点として執拗に狙ってくる知能を持つ魔物との対戦経験は――――皆無とまで断言できるだろう。
「だが、俺は魔法使いだ。相性は悪くない――――『風斬』」
距離感を無視した魔法攻撃。 風の乱撃が蛇女に叩き込まれた。
ユウトは魔法使いだ。接近戦を挑まずとも攻撃が可能。
もしも、剣士などの近距離戦闘に頼るしかない者は大きく苦戦していただろう。
杖を構えて、攻撃を狙うユウト。
相対する蛇女は、何を考えて来るか? ゆっくりと歩きながらも その口から緑色の息を吐き出す。
「蛇系魔物特有の毒攻撃……コイツは厄介になってきた」
ユウトの言う通り、蛇系魔物との戦闘は格闘技戦よりも陣取り合戦に例えられる事が多い。
それは、人間が近づく事のできない毒だらけの空間が生み出しながら戦闘を続けることになるから……毒を設置されていた場所を記憶しながら戦わなければならない。
もちろん、毒は回復薬で解毒できる。しかし、数に限りがある回復薬を毒の中で飲み続けながら戦うのは現実的ではないだろう。
だが――――
『風斬』」
ユウトは、いとも簡単に蛇女の猛毒を風魔法で吹き飛ばし霧散させた。
普段なら表情が読めない魔物であるが、この時ばかりは蛇女の驚きがわかった。
その驚きは苛立ちに変わっていく。
正攻法は通じないと判断したのだろうか?
シンプルな噛み付きと体当たりに攻撃が集中していく。 忘れた頃のナイフ攻撃が行われる程度。
つまり、噛み付き、体当たり、ナイフの連続攻撃
「だったら――――これで終わらせてやる!」
体当たりをやり過ごしたユウトは、蛇女の胴体に飛び乗った。
両足で蛇女の胴体を激しく絞め上げる。 自由になった両腕は首に――――
所謂、掟破り。 蛇女相手に絞め技での攻撃。
蛇女は逃れるために激しく暴れる。 ユウトは、床へ激しく叩きつけられた。
そうかと思えば、次は天井へ、次は壁へ――――だが、彼は締めを解かない。
より、締めを深く、強さを増していく。 ついには――――蛇女の動きが止まった。
動きを止めた蛇女の肉体。 しばらくすると異変が起きた。
彼女の体は、最初から存在していなかったように霧散していく。
「この消え方は、幽霊騎士の時と同じか…… やはり、通常の魔物とは違うようだな」
「――――だとしたら」とユウトは、周辺を探った。 幽霊騎士と同じなら、戦利品が転がっているかもしれない。
(そう言えば、あの時の弓……まだ、売ってなかったな)
そんな事を考えていると発見した。それは蛇女が使っていたナイフが2つ。
「……猛毒のナイフか。触って大丈夫か? 呪われてないよな?」
念のため、慎重に布で包んで保管した。
「布まで毒が染み込んで汚染されることはないだろうが……こればかりは神頼みかな?」
そう呟いて、ユウトが隠し通路に奥へ進む。 その先で彼を待ち受けていた物は――――
「やはり、あの時と――――蜘蛛女の……シルキアの時と同じか」
目前に空間が広がっている。それは――――闘技場。
ユウトの言う通り、アラクネのシルキアと戦った場所と全く同じ構造をしている闘技場だった。
なら、その闘技場の中心で待ち受けているのか?
やはり女性が神に祈りを捧げている。
頭を下げ、閉じている瞳。 突然、瞳は開いた。 そして射抜くような鋭い視線をユウトへ向けた。
「有資格者ですか。それもシルキアを倒した者――――なるほど、次の相手は私と言うことですね」
「――――いや、その有資格者ってのはよくわかないのだが……問答無用で戦わないといけないのだろ?」
「はい、理解が早くて助かります」と彼女は立ち上がると姿を変えていく。
そして、変身を遂げた彼女の姿は――――
「ケンタウロスか」とユウトが呟いた。
彼が言う通り、彼女はケンタウロスへと変質を遂げた。
黄金の鎧に身を包んだ女性ケンタウロス――――
ダンジョンの狭き通路を通り抜ける風。 彼女の髪は風に舞う。
そのたびに黄金の髪は輝きながら軽やかに揺れてる。彼女の目は碧い宝石のように輝き、鋭い眼光を湛えていた
――――彼女の姿は美しい。
まるで太陽そのものが姿を現したかのように圧倒的な輝きを放つ。
ここは地下深いダンジョンの奥地。地上の光なぞ届くはずもなし。
されど、黄金の鎧は陽光を受けているに違いない。
まばゆい輝きは、神々の加護を纏ったかのよう。
だが、命を噛み砕かんと牙を向ける姿はグロテスクとしか表現はできない。
聖職者。その正体は――――蛇女だった。
ユウトはナイフを弾いた盾を、今度は蛇女の顔面に叩き込みこんだ。
その感想は――――「予想より硬いな」
盾を平べったい鉄板と見なして、高速で振ればナイフ以上に切れ味が生まれる。
しかし、大きく仰け反った蛇女は無傷。 その頑丈さがわかる。
正体を現したことで明らかになる大きく長い胴体。
ユウトは思わず、見上げる高さ。
「この高さは――――ヤバい!」
蛇女は背を僅かに反らしたの攻撃に勢いをつけるためだ。
彼女は高さを利用して、ユウトの頭上から攻撃をしてくる。
それは猛攻だった。 身を低くしたユウトは盾で弾き、地面を転がりながら身を守る。
(人間の弱点は頭上を狙った攻撃とは聞いた事があるが……ここまでやり難いとはな!)
もちろん、人間よりも巨大な魔物はたくさんいる。 しかし、頭上を明確な弱点として執拗に狙ってくる知能を持つ魔物との対戦経験は――――皆無とまで断言できるだろう。
「だが、俺は魔法使いだ。相性は悪くない――――『風斬』」
距離感を無視した魔法攻撃。 風の乱撃が蛇女に叩き込まれた。
ユウトは魔法使いだ。接近戦を挑まずとも攻撃が可能。
もしも、剣士などの近距離戦闘に頼るしかない者は大きく苦戦していただろう。
杖を構えて、攻撃を狙うユウト。
相対する蛇女は、何を考えて来るか? ゆっくりと歩きながらも その口から緑色の息を吐き出す。
「蛇系魔物特有の毒攻撃……コイツは厄介になってきた」
ユウトの言う通り、蛇系魔物との戦闘は格闘技戦よりも陣取り合戦に例えられる事が多い。
それは、人間が近づく事のできない毒だらけの空間が生み出しながら戦闘を続けることになるから……毒を設置されていた場所を記憶しながら戦わなければならない。
もちろん、毒は回復薬で解毒できる。しかし、数に限りがある回復薬を毒の中で飲み続けながら戦うのは現実的ではないだろう。
だが――――
『風斬』」
ユウトは、いとも簡単に蛇女の猛毒を風魔法で吹き飛ばし霧散させた。
普段なら表情が読めない魔物であるが、この時ばかりは蛇女の驚きがわかった。
その驚きは苛立ちに変わっていく。
正攻法は通じないと判断したのだろうか?
シンプルな噛み付きと体当たりに攻撃が集中していく。 忘れた頃のナイフ攻撃が行われる程度。
つまり、噛み付き、体当たり、ナイフの連続攻撃
「だったら――――これで終わらせてやる!」
体当たりをやり過ごしたユウトは、蛇女の胴体に飛び乗った。
両足で蛇女の胴体を激しく絞め上げる。 自由になった両腕は首に――――
所謂、掟破り。 蛇女相手に絞め技での攻撃。
蛇女は逃れるために激しく暴れる。 ユウトは、床へ激しく叩きつけられた。
そうかと思えば、次は天井へ、次は壁へ――――だが、彼は締めを解かない。
より、締めを深く、強さを増していく。 ついには――――蛇女の動きが止まった。
動きを止めた蛇女の肉体。 しばらくすると異変が起きた。
彼女の体は、最初から存在していなかったように霧散していく。
「この消え方は、幽霊騎士の時と同じか…… やはり、通常の魔物とは違うようだな」
「――――だとしたら」とユウトは、周辺を探った。 幽霊騎士と同じなら、戦利品が転がっているかもしれない。
(そう言えば、あの時の弓……まだ、売ってなかったな)
そんな事を考えていると発見した。それは蛇女が使っていたナイフが2つ。
「……猛毒のナイフか。触って大丈夫か? 呪われてないよな?」
念のため、慎重に布で包んで保管した。
「布まで毒が染み込んで汚染されることはないだろうが……こればかりは神頼みかな?」
そう呟いて、ユウトが隠し通路に奥へ進む。 その先で彼を待ち受けていた物は――――
「やはり、あの時と――――蜘蛛女の……シルキアの時と同じか」
目前に空間が広がっている。それは――――闘技場。
ユウトの言う通り、アラクネのシルキアと戦った場所と全く同じ構造をしている闘技場だった。
なら、その闘技場の中心で待ち受けているのか?
やはり女性が神に祈りを捧げている。
頭を下げ、閉じている瞳。 突然、瞳は開いた。 そして射抜くような鋭い視線をユウトへ向けた。
「有資格者ですか。それもシルキアを倒した者――――なるほど、次の相手は私と言うことですね」
「――――いや、その有資格者ってのはよくわかないのだが……問答無用で戦わないといけないのだろ?」
「はい、理解が早くて助かります」と彼女は立ち上がると姿を変えていく。
そして、変身を遂げた彼女の姿は――――
「ケンタウロスか」とユウトが呟いた。
彼が言う通り、彼女はケンタウロスへと変質を遂げた。
黄金の鎧に身を包んだ女性ケンタウロス――――
ダンジョンの狭き通路を通り抜ける風。 彼女の髪は風に舞う。
そのたびに黄金の髪は輝きながら軽やかに揺れてる。彼女の目は碧い宝石のように輝き、鋭い眼光を湛えていた
――――彼女の姿は美しい。
まるで太陽そのものが姿を現したかのように圧倒的な輝きを放つ。
ここは地下深いダンジョンの奥地。地上の光なぞ届くはずもなし。
されど、黄金の鎧は陽光を受けているに違いない。
まばゆい輝きは、神々の加護を纏ったかのよう。