吹き飛ばされたユウトは、ダンジョンに壁に叩きつけられた。
「盾がなければ、やられていた……もう使えないか」
ミカエルの蹴りを防御した盾。 しかし、その蹴りの威力に亀裂が走っている。
改めてミカエルを見る。 彼は追撃を目的に、駆け出していた。
怪物のそれに変化した腕。
それを地面に当てたまま―――― バチッ、バチッと地面に火花を走らせている。
その姿は、まさに異形。
「このっ!」と接近を阻害させるため、使えなくなった盾をミカエルに向けて投げ捨てた。
しかし、そんな物は歯牙にもかけない。
防御はなし。頭部に直撃しても速度を落とさず襲い掛かって来る。
「この――――『炎壁』」と防御壁を出現させて、身を守る。
だが、ミカエルは魔法壁と衝突すると、そのまま素手で強引にこじ開けようとしてくる。
「続けて――――『炎剣』
防御壁に守られ、至近距離で魔法攻撃を放ったユウト。
果して、その効果は――――薄い。
ミカエルは前衛の聖戦士。
聖戦士と言われる職業。 先人に弟子入りとして秘伝とされる特殊な技能を受け継いだ者だけが名乗る事が許されている。
特殊な技能――――接近戦で戦う技術はもちろん、魔法を軽減する防御技術をミカエルは有しているのだ。
「だったら、ミカエル! 吹き飛べよ――――『大地の震え』」
地属性の魔法。 急激な足場の変動にミカエルは吹き飛ぶ。
物理的な衝撃を受けたわけではない。遠距離を有利とする魔法使いが、接近してきた敵を物理的に飛ばして、距離を取る事を目的に使われる魔法だ。
強制的に距離を取らされたミカエル。 こちらを窺うようにゆっくりと歩いてくる。
もしも、攻撃をすれば、この距離であっても素早く反撃をしてくるだろう。
それは、先ほど見せた驚異的な機動力ならば簡単に違いない。
ゆっくりと歩きながら、その構えは極端だった。
ミカエルの腕、まだ人間の方の腕は大剣を持っている。
それを隠すように、体を捻って背中を見せている。
一撃。
人間離れした防御力と耐久力を生かして、強打を狙ってくる。
(前衛の腕力から放たれる強打は厄介だ。何より、回避のタイミングが取りにくい)
そして、それは――――今。
剛腕から放たれた大剣の一撃。もしも、盾で受けても、容易に砕け、切り裂くだろう。
それは当たればの話だ。 身を縮めたユウトは、地面を転がるように回避。
再び振るわれた二撃目も後方に転がり逃げる。
(三撃目は――――来ないか)
自然と距離が生まれる。 だが、それもミカエルの狙いだったのかもしれない。
彼は―――― ユウトに向けて、大剣を投げつけた。
「投擲!? 唯一の武器を!」
その一撃は予想外の投擲。 だが、ユウトは攻撃を躱して、前に出る。
(狙いは切り札。 両手に仕込んだ魔石での爆破魔法――――直線爆破を直接叩き込む!)
しかし、ユウトが狙った決死の一撃はミカエルに届かない。
(風切り音。 それも背後から……だと!)
振り向けば、ミカエルが投げたはず大剣が迫ってきていた。
「っ――――!?」とその場で身を屈めてやり過ごす。
その直後、いつの間にか接近していたミカエル。
背負っていたのだろう。その手には巨大な盾が握られており――――
盾を武器にした一撃――――所謂、シールドバッシュがユウトの体に叩き込まれる。
そのまま、壁際まで押し込まれていく。
シンプルな押し合い。 ならば、聖戦士であるミカエルに、魔法使いであるユウトが腕力で勝てるはずはない。
壁と盾に挟まれて、体力が激しく消耗していく感覚。
(こ、このままだと反撃の機会も失われて、ジリ貧……だったら――――)
ミカエルの盾を押し返そうと両手を備えて――――
『直線爆破』
両腕に受ける激しいダメージを代償に、強烈な爆破を叩き込む魔法。
その威力は、盾もろともミカエルを吹き飛ばした。
「くっ、裂傷を焼かれるような痛み。 もう少し代償を抑える工夫が必要かもな」
吹き飛ばされたミカエルが立ち上がるまで、回復薬を飲み干す。
負傷した両腕を回復させる。
再び対峙する両者。 ならばと再び大剣を投擲してきたミカエル。
ミカエルの手から離れた大剣は、無軌道に見える斬撃を放つ。それは物理法則を無視している。
「魔法で大剣を操っている?」
しかし――――
「いえ違います!」と外部から声が飛ぶ。 声の主はオリビアだった。
「複雑な魔力調整に、連続的な魔力出力……」
彼女は、大魔導士――――魔法の研究者である。
ユウトよりも魔法の理に精通している。 そんな彼女が声を出して断言する。
「単純な魔法による物体操作ではありません。 何か、別の要因を加えて――――鉄を操る魔法。磁場を使っている?」
オリビアの推測。それはユウトを焦りを隠せなかった。
「磁場!? 金属を操っているのか――――だとしたら、まずい!」
ミカエルは、御名答と言わんばかりにユウトに手をかざして、魔力を発動させた。
ユウトの全身は、金属の鎧。 体が浮き上がる感覚と共に、彼の体は吸い寄せられていく。
そして、ミカエルは大剣を構えている。 剣先をユウトに向け、刺突のタイミングを測っている。
「盾がなければ、やられていた……もう使えないか」
ミカエルの蹴りを防御した盾。 しかし、その蹴りの威力に亀裂が走っている。
改めてミカエルを見る。 彼は追撃を目的に、駆け出していた。
怪物のそれに変化した腕。
それを地面に当てたまま―――― バチッ、バチッと地面に火花を走らせている。
その姿は、まさに異形。
「このっ!」と接近を阻害させるため、使えなくなった盾をミカエルに向けて投げ捨てた。
しかし、そんな物は歯牙にもかけない。
防御はなし。頭部に直撃しても速度を落とさず襲い掛かって来る。
「この――――『炎壁』」と防御壁を出現させて、身を守る。
だが、ミカエルは魔法壁と衝突すると、そのまま素手で強引にこじ開けようとしてくる。
「続けて――――『炎剣』
防御壁に守られ、至近距離で魔法攻撃を放ったユウト。
果して、その効果は――――薄い。
ミカエルは前衛の聖戦士。
聖戦士と言われる職業。 先人に弟子入りとして秘伝とされる特殊な技能を受け継いだ者だけが名乗る事が許されている。
特殊な技能――――接近戦で戦う技術はもちろん、魔法を軽減する防御技術をミカエルは有しているのだ。
「だったら、ミカエル! 吹き飛べよ――――『大地の震え』」
地属性の魔法。 急激な足場の変動にミカエルは吹き飛ぶ。
物理的な衝撃を受けたわけではない。遠距離を有利とする魔法使いが、接近してきた敵を物理的に飛ばして、距離を取る事を目的に使われる魔法だ。
強制的に距離を取らされたミカエル。 こちらを窺うようにゆっくりと歩いてくる。
もしも、攻撃をすれば、この距離であっても素早く反撃をしてくるだろう。
それは、先ほど見せた驚異的な機動力ならば簡単に違いない。
ゆっくりと歩きながら、その構えは極端だった。
ミカエルの腕、まだ人間の方の腕は大剣を持っている。
それを隠すように、体を捻って背中を見せている。
一撃。
人間離れした防御力と耐久力を生かして、強打を狙ってくる。
(前衛の腕力から放たれる強打は厄介だ。何より、回避のタイミングが取りにくい)
そして、それは――――今。
剛腕から放たれた大剣の一撃。もしも、盾で受けても、容易に砕け、切り裂くだろう。
それは当たればの話だ。 身を縮めたユウトは、地面を転がるように回避。
再び振るわれた二撃目も後方に転がり逃げる。
(三撃目は――――来ないか)
自然と距離が生まれる。 だが、それもミカエルの狙いだったのかもしれない。
彼は―――― ユウトに向けて、大剣を投げつけた。
「投擲!? 唯一の武器を!」
その一撃は予想外の投擲。 だが、ユウトは攻撃を躱して、前に出る。
(狙いは切り札。 両手に仕込んだ魔石での爆破魔法――――直線爆破を直接叩き込む!)
しかし、ユウトが狙った決死の一撃はミカエルに届かない。
(風切り音。 それも背後から……だと!)
振り向けば、ミカエルが投げたはず大剣が迫ってきていた。
「っ――――!?」とその場で身を屈めてやり過ごす。
その直後、いつの間にか接近していたミカエル。
背負っていたのだろう。その手には巨大な盾が握られており――――
盾を武器にした一撃――――所謂、シールドバッシュがユウトの体に叩き込まれる。
そのまま、壁際まで押し込まれていく。
シンプルな押し合い。 ならば、聖戦士であるミカエルに、魔法使いであるユウトが腕力で勝てるはずはない。
壁と盾に挟まれて、体力が激しく消耗していく感覚。
(こ、このままだと反撃の機会も失われて、ジリ貧……だったら――――)
ミカエルの盾を押し返そうと両手を備えて――――
『直線爆破』
両腕に受ける激しいダメージを代償に、強烈な爆破を叩き込む魔法。
その威力は、盾もろともミカエルを吹き飛ばした。
「くっ、裂傷を焼かれるような痛み。 もう少し代償を抑える工夫が必要かもな」
吹き飛ばされたミカエルが立ち上がるまで、回復薬を飲み干す。
負傷した両腕を回復させる。
再び対峙する両者。 ならばと再び大剣を投擲してきたミカエル。
ミカエルの手から離れた大剣は、無軌道に見える斬撃を放つ。それは物理法則を無視している。
「魔法で大剣を操っている?」
しかし――――
「いえ違います!」と外部から声が飛ぶ。 声の主はオリビアだった。
「複雑な魔力調整に、連続的な魔力出力……」
彼女は、大魔導士――――魔法の研究者である。
ユウトよりも魔法の理に精通している。 そんな彼女が声を出して断言する。
「単純な魔法による物体操作ではありません。 何か、別の要因を加えて――――鉄を操る魔法。磁場を使っている?」
オリビアの推測。それはユウトを焦りを隠せなかった。
「磁場!? 金属を操っているのか――――だとしたら、まずい!」
ミカエルは、御名答と言わんばかりにユウトに手をかざして、魔力を発動させた。
ユウトの全身は、金属の鎧。 体が浮き上がる感覚と共に、彼の体は吸い寄せられていく。
そして、ミカエルは大剣を構えている。 剣先をユウトに向け、刺突のタイミングを測っている。