ダンジョンは奥に進むにつれて蛇系の魔物が跋扈するようになっていった。
「明らかにダンジョンの生態系が乱れている。危険な兆候だ」
「ご主人さま、ご主人さま、生態系が乱れるって具体的にどうなるんですか?」
「それはな、エイム――――」とユウトは説明を始めた。
安定していた魔物の数が乱れれば、弱い魔物はダンジョンから逃げ出す。
ダンジョンを離れた魔物たちは外の世界で繁殖を始めて、人々を襲うようになる。
また、ダンジョンには強い魔物だけが残る。
すると、どうなるのか?
彼等は共食いを始めるのだ。 まるで、蟲毒――――毒虫同士を戦わせて、最強の毒を作るように――――ダンジョンには規格外の魔物が1匹だけ残ることになるのだ。
普通の冒険者が手も足も出ない最強の魔物。
対抗するためには、最強クラスの冒険者をぶつける。あるいは、軍隊を送り込みダンジョンごと爆破させて封じ込むか……
「なるほどです。危険なことはわかりました」とエイムは真剣な顔で答えた。
ただし――――
(最強の魔物ですか。でも、強化を重ねただけの魔物だったら、メイヴとご主人さまで倒せそうな気もしますが……)
彼女は、エルフの聖樹。神に近い神秘の存在だ。どれほど、強い魔物であっても、自分の主人は負ける事などあり得ない。
本気でエイムは、そう考えていた。
「ユウト、ここを見てください」とメイヴが地面を指す。
岩がある。しかし、よく見ると不自然な位置だ。
きっと何者かが、動かして置いたのだろう。 メイヴは、岩を動かした。
「これは……符号か? なんて書いてある?」
「このダンジョンの簡易地図ですね。先行している仲間が残したものです」
「それは助かる」とユウト。 もちろん、このダンジョンの地図はもっている。
しかし、出現する魔物が変わっている。 残された簡易地図には、出現する魔物も記されているようだった。
「どうやら、この先に出現する魔物は、さらに強化種が増えているそうです」
「さらに――――」とユウトは考えた。 例えば、先ほどの多頭蛇……あれが3匹、4匹と同時に出現したら対処できただろうか?
(薄々、気づいてはいるが……これは異常だ。新しい主であるキング・ヒュドラが大量に、無秩序に、魔物を召喚している。過去にそんな例があったのか? 一体、この先では何が――――)
「大丈夫ですよ、ユウト」と肩を叩かれた。
「私と貴方の2人なら、何があっても問題はないはずですよ」
きっと、ユウトの不安に気づいたのだろう。そう言って、不安を取り除こうとしてくれた。
しかし、それは事実だった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
『ナーガ』
その魔物は、滑らかな鱗に覆われた長大な体を持っていた。その全長は数メートルにも及ぶ。
巨大な肉体と言っても良い。――――しかし、体は非常に美しい。
煌めく色彩に彩られ、宝石のように輝いている。
そして最大の特徴は、獰猛なる顔。
鋭い牙と瞳の奥に潜む冷酷な光が見え隠れしている。
蛇系の魔物に共通している存在感。それは――――まるで魂を喰らうかのような存在感を放っている所だ。
瞳の奥――――ナーガの目は冷徹の一言。
冷徹な瞳は、知識と知恵を秘めているかのように見える。
ならば、動きは? その動きは優雅でしなやかであり、同時に驚異的な力強さが感じられる。その美しい体を蛇のように――――いや、蛇そのものなのだが――――くねくねと体をくねらせ、俊敏に動き回る様子はまさに舞踏のようだ。
ならば、強さに疑問はない。
姿は神秘的で、人々に畏敬の念を抱かせる。ナーガの周りには常に力強いオーラが、ゆらりゆらりと漂っている。
その存在感――――王者の風格を持ち合わせている。
しかし、その強い強いナーガは――――
「破っ!」と気合と共に放たれたメイヴの一撃で、あっさりと絶命した。
「さて、危険な魔物でしたね。次に急ぎましょう」
「……」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
『メデューサ』
メデューサは、魔物の中で有名な部類に入るだろう。
魔物は知名度と脅威度が比例する。 ならば、メデューサの脅威度に説明は不要なのかもしれない。しかし、あえて伝えるのならば――――
ソイツは長く太い髪を持つ。その一筋一筋からは蛇のような鱗が浮かび上がっている。蛇のような? ――――いや、髪が蛇そのものではないか?
女性のような曲線を持ちながらも、それでいて蛇のような冷たく滑らかさも持ち合わせている。
背中には尻尾が伸びている――――蛇の尾だ。
なめらかに、しなやかに動く尻尾。地面を這いずりながら妖しく舞い踊っている。
彼女の存在は邪悪なオーラに包まれており、周囲の空気まで凍りつかせるような気配を放っている。
その顔には恐ろしいまでの鋭い牙と、無数の蛇の舌がある。
だが、それらはメデューサを脅威度を現す一片に過ぎない。
誰もが知るメデューサの最大の特徴は――――顔。
その顔には、人を石化させる魔力がある。
顔を直視することは、生命そのものを危険に晒す行為といえるだろう。彼女の視線が目に触れれば、石に変えられてしまう運命に縛られることになるだろう。
だからこそ――――
彼女の存在は人々に恐怖を抱かせ、近づく者たちは一歩も引かずに勇気を持って立ち向かわなければならない。
しかし、その強い強いメデューサは――――
「斬っ!」とメイヴは横薙ぎの一撃。
メデューサは凶悪な石化攻撃を放つ間も許されなかった。
「さて、危険な魔物でしたね。次に急ぎましょう」
「……」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
『ヒドラ』
その姿は恐怖そのものであった。 ヒドラの体は不気味にくねりながら地を這い、その動きはしなやかかつ俊敏――――
――――しかし、その強い強いヒドラは――――
「掃っ!」とメイヴの刺突。
「さて、危険な魔物でしたね。次に急ぎましょう」
「……」
そんな様子を眺めていたエイムは――――
「ご主人さま、もうメイヴ1人で問題ないのでは……」
彼女の言葉にユウトは強く同意した。
「明らかにダンジョンの生態系が乱れている。危険な兆候だ」
「ご主人さま、ご主人さま、生態系が乱れるって具体的にどうなるんですか?」
「それはな、エイム――――」とユウトは説明を始めた。
安定していた魔物の数が乱れれば、弱い魔物はダンジョンから逃げ出す。
ダンジョンを離れた魔物たちは外の世界で繁殖を始めて、人々を襲うようになる。
また、ダンジョンには強い魔物だけが残る。
すると、どうなるのか?
彼等は共食いを始めるのだ。 まるで、蟲毒――――毒虫同士を戦わせて、最強の毒を作るように――――ダンジョンには規格外の魔物が1匹だけ残ることになるのだ。
普通の冒険者が手も足も出ない最強の魔物。
対抗するためには、最強クラスの冒険者をぶつける。あるいは、軍隊を送り込みダンジョンごと爆破させて封じ込むか……
「なるほどです。危険なことはわかりました」とエイムは真剣な顔で答えた。
ただし――――
(最強の魔物ですか。でも、強化を重ねただけの魔物だったら、メイヴとご主人さまで倒せそうな気もしますが……)
彼女は、エルフの聖樹。神に近い神秘の存在だ。どれほど、強い魔物であっても、自分の主人は負ける事などあり得ない。
本気でエイムは、そう考えていた。
「ユウト、ここを見てください」とメイヴが地面を指す。
岩がある。しかし、よく見ると不自然な位置だ。
きっと何者かが、動かして置いたのだろう。 メイヴは、岩を動かした。
「これは……符号か? なんて書いてある?」
「このダンジョンの簡易地図ですね。先行している仲間が残したものです」
「それは助かる」とユウト。 もちろん、このダンジョンの地図はもっている。
しかし、出現する魔物が変わっている。 残された簡易地図には、出現する魔物も記されているようだった。
「どうやら、この先に出現する魔物は、さらに強化種が増えているそうです」
「さらに――――」とユウトは考えた。 例えば、先ほどの多頭蛇……あれが3匹、4匹と同時に出現したら対処できただろうか?
(薄々、気づいてはいるが……これは異常だ。新しい主であるキング・ヒュドラが大量に、無秩序に、魔物を召喚している。過去にそんな例があったのか? 一体、この先では何が――――)
「大丈夫ですよ、ユウト」と肩を叩かれた。
「私と貴方の2人なら、何があっても問題はないはずですよ」
きっと、ユウトの不安に気づいたのだろう。そう言って、不安を取り除こうとしてくれた。
しかし、それは事実だった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
『ナーガ』
その魔物は、滑らかな鱗に覆われた長大な体を持っていた。その全長は数メートルにも及ぶ。
巨大な肉体と言っても良い。――――しかし、体は非常に美しい。
煌めく色彩に彩られ、宝石のように輝いている。
そして最大の特徴は、獰猛なる顔。
鋭い牙と瞳の奥に潜む冷酷な光が見え隠れしている。
蛇系の魔物に共通している存在感。それは――――まるで魂を喰らうかのような存在感を放っている所だ。
瞳の奥――――ナーガの目は冷徹の一言。
冷徹な瞳は、知識と知恵を秘めているかのように見える。
ならば、動きは? その動きは優雅でしなやかであり、同時に驚異的な力強さが感じられる。その美しい体を蛇のように――――いや、蛇そのものなのだが――――くねくねと体をくねらせ、俊敏に動き回る様子はまさに舞踏のようだ。
ならば、強さに疑問はない。
姿は神秘的で、人々に畏敬の念を抱かせる。ナーガの周りには常に力強いオーラが、ゆらりゆらりと漂っている。
その存在感――――王者の風格を持ち合わせている。
しかし、その強い強いナーガは――――
「破っ!」と気合と共に放たれたメイヴの一撃で、あっさりと絶命した。
「さて、危険な魔物でしたね。次に急ぎましょう」
「……」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
『メデューサ』
メデューサは、魔物の中で有名な部類に入るだろう。
魔物は知名度と脅威度が比例する。 ならば、メデューサの脅威度に説明は不要なのかもしれない。しかし、あえて伝えるのならば――――
ソイツは長く太い髪を持つ。その一筋一筋からは蛇のような鱗が浮かび上がっている。蛇のような? ――――いや、髪が蛇そのものではないか?
女性のような曲線を持ちながらも、それでいて蛇のような冷たく滑らかさも持ち合わせている。
背中には尻尾が伸びている――――蛇の尾だ。
なめらかに、しなやかに動く尻尾。地面を這いずりながら妖しく舞い踊っている。
彼女の存在は邪悪なオーラに包まれており、周囲の空気まで凍りつかせるような気配を放っている。
その顔には恐ろしいまでの鋭い牙と、無数の蛇の舌がある。
だが、それらはメデューサを脅威度を現す一片に過ぎない。
誰もが知るメデューサの最大の特徴は――――顔。
その顔には、人を石化させる魔力がある。
顔を直視することは、生命そのものを危険に晒す行為といえるだろう。彼女の視線が目に触れれば、石に変えられてしまう運命に縛られることになるだろう。
だからこそ――――
彼女の存在は人々に恐怖を抱かせ、近づく者たちは一歩も引かずに勇気を持って立ち向かわなければならない。
しかし、その強い強いメデューサは――――
「斬っ!」とメイヴは横薙ぎの一撃。
メデューサは凶悪な石化攻撃を放つ間も許されなかった。
「さて、危険な魔物でしたね。次に急ぎましょう」
「……」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
『ヒドラ』
その姿は恐怖そのものであった。 ヒドラの体は不気味にくねりながら地を這い、その動きはしなやかかつ俊敏――――
――――しかし、その強い強いヒドラは――――
「掃っ!」とメイヴの刺突。
「さて、危険な魔物でしたね。次に急ぎましょう」
「……」
そんな様子を眺めていたエイムは――――
「ご主人さま、もうメイヴ1人で問題ないのでは……」
彼女の言葉にユウトは強く同意した。