「では……」とギルドマスターが前に出る。
「ミカエルの救出作戦は明日の早朝から開始する。ダンジョンに入る者はA級冒険者以上に限る。他の者は補助に動いて貰う」
それから、
「なお、しばらくは他のダンジョンへは立ち入りを禁止とする」
宣言は終わり、解散することになった。
隣のメイヴがユウトを見つめてきた。
「ユウト、貴方は私の仲間に入っても貰ってもよろしいか?」
「――――でも、俺は……」とそれ以上の言葉がでなかった。
追放されたA級冒険者。 かつての仲間であるミカエルを助けたい気持ちはある。
(本当に?)
自分の声が頭の中で反芻されていく。
(本当に俺は、ミカエルを助けたい気持ちがあるのか? あんなにも一方的に俺を――――)
「いや、助けを求めている者の手を拒むなら――――そいつは、もう冒険者ではない。そして、俺は――――いつだって冒険者でいるつもりだ」
メイヴの表情を見て、うっかりユウトは気持ちを口にしていたことに気づいた。
「頼む、メイヴ。俺をアイツ等の場所に連れて行ってくれ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
――― 翌日 ―――
完全武装したユウトはメイヴと合流する。
「私が勧めた魔法剣士の話を、そう解釈しましたか」
初めて、ユウトの新調した装備を見たメイヴは呆れたように言う。
「でしたら、せめて魔剣の部類を手に入れたらどうですか?」
「魔剣かぁ……」と彼は考えた。
確かに、杖の代わりに魔剣で魔法攻撃をして、接近してきた敵には剣をして斬り倒す。
「悪くないけど、魔剣は簡単には購入できないからね。暫くは、このスタイルでやっていくよ」
「そうですか…… もしも、剣の手ほどきを受けたい時はいつでもおっしゃってくださいね。すぐに駆けつけますので」
「あははは……S級冒険者に、そんな時間の余裕はないでしょ?」
「……それもそうですね」と彼女の表情が曇った事にユウトは気づかなかった。しかし――――
「どうした、エイム?」とユウトは振り向く。
背中に憑りついているかのようにぶら下がっているエイムが彼の兜を叩いたのだ。
「失礼ながらご主人さまは、女性の気持ちがわかっていません! 女性というものは、いつだって慕っている男性の元に駆けつけて……もぐもぐ!?」
最後まで言葉にならなかったのは、メイヴが慌てた様子でエイムの口を塞いだからだ。
「だ、大丈夫か? エイムって、エルフ族にとって信仰対象って話だったと思うけど?」
「はっ! つい慌てて! し、失礼いたしました」と正気になったように彼女はエイムから離れた。
「そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。特に、ご主人さまの親しい方なら」とエイムはニッコリと笑みを見せた。
「そう言えば、装備の話だけど、メイヴは前衛の魔法剣士だったと思うけど、思っていたよりも軽装だな」
確かにメイヴの装備は軽装だった。
兜どころか、頭部を守る武装はなし。 胴体も胸部を保護する程度の鎧だった。
マントもユウトのそれと違って薄い。
背後を防御するためのマントではなく、強い日光に弱いエルフの白肌を守る目的ではないか? そう思ってしまうほどの軽装だった。
「うむ、私の場合は回避職ですから。それに、致命傷を受けても、回復薬を飲み続けれる限り戦い続けるわけです」
「なるほど、そういう考えもあるのか……」とユウトは全身武装の自分を確認した。
(まぁ、俺はこれで良いか。正直に言うと、これがカッコいいと思ってる)
「うんうん」と納得するようにユウトは頷いた。
「装備と言えば……エイム、本当についてくるつもりか?」
今日はダンジョンだ。 それも、異変が起きたダンジョン。
ミカエルたちA級冒険者の集団ですら瓦解して破れている。
「何が起きるかわからない。相当、危険な事になるんだぞ?」
「何度も言っていますが、わたしはご主人さまと何年も一緒に冒険をしてきたじゃありませんか?」
「そうですよ。どうして、今さらユウトは気にしているのですか?」とメイヴもエイムと同じように首を傾げる。
エルフ独特の価値観だろうか?
「でもなぁ……」と納得できないユウトだ。
「わたしの姿が人間に見えているのは、ご主人さまたちだけですよ。実体のわたしは、杖としてご主人さまの背後に装備されている状態なのです」
ユウトは戦闘中に、魔物からの攻撃で地面に叩きつけられたり、避けるために転がったりする。 背中にしがみ付かれると危険な感じがするのだ。
「私の重さは感じないと思うのですが、心理的要因でやり難さを感じるのなら慣れてもらわないといけませんね」
そんな会話を交えていると、ダンジョンの入り口に到着した。
ダンジョン名 『炎氷の地下牢』
本来なら、高難易度の部類されるダンジョン。 と言っても、A級冒険者なら攻略できるほどの難易度だ。
しかし、今の難易度は不明――――もはや、別ダンジョン。
未知の迷宮に等しい。
「では行きますか、ユウト?」とメイヴは微笑んだ。
「? いや、待てくれ。お前の仲間は? 待たないのか?」と辺りを見渡す。
ユウトは、メイヴの仲間として、ダンジョンに行く話になった。
だが、到着してみると彼女の仲間らしい人物がいない。
(他の冒険者に突入準備をしている者や、補助として後方支援に徹する冒険者はいるが……)
その疑問にメイヴは当然の如く――――
「私たちの仲間は単独行動が基本ですね。目的地は同じなので、主の部屋の前で待ち合わせるのが決まりです」
「――――なッ!」とユウトは絶句した。 自分がA級冒険者として仲間たちと連携して進んだダンジョンを各々が1人で主の直前まで攻略していく。
「……それがS級冒険者か」と呟く。 しかし、彼が驚くのはダンジョンに入ってからだ。
「ミカエルの救出作戦は明日の早朝から開始する。ダンジョンに入る者はA級冒険者以上に限る。他の者は補助に動いて貰う」
それから、
「なお、しばらくは他のダンジョンへは立ち入りを禁止とする」
宣言は終わり、解散することになった。
隣のメイヴがユウトを見つめてきた。
「ユウト、貴方は私の仲間に入っても貰ってもよろしいか?」
「――――でも、俺は……」とそれ以上の言葉がでなかった。
追放されたA級冒険者。 かつての仲間であるミカエルを助けたい気持ちはある。
(本当に?)
自分の声が頭の中で反芻されていく。
(本当に俺は、ミカエルを助けたい気持ちがあるのか? あんなにも一方的に俺を――――)
「いや、助けを求めている者の手を拒むなら――――そいつは、もう冒険者ではない。そして、俺は――――いつだって冒険者でいるつもりだ」
メイヴの表情を見て、うっかりユウトは気持ちを口にしていたことに気づいた。
「頼む、メイヴ。俺をアイツ等の場所に連れて行ってくれ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
――― 翌日 ―――
完全武装したユウトはメイヴと合流する。
「私が勧めた魔法剣士の話を、そう解釈しましたか」
初めて、ユウトの新調した装備を見たメイヴは呆れたように言う。
「でしたら、せめて魔剣の部類を手に入れたらどうですか?」
「魔剣かぁ……」と彼は考えた。
確かに、杖の代わりに魔剣で魔法攻撃をして、接近してきた敵には剣をして斬り倒す。
「悪くないけど、魔剣は簡単には購入できないからね。暫くは、このスタイルでやっていくよ」
「そうですか…… もしも、剣の手ほどきを受けたい時はいつでもおっしゃってくださいね。すぐに駆けつけますので」
「あははは……S級冒険者に、そんな時間の余裕はないでしょ?」
「……それもそうですね」と彼女の表情が曇った事にユウトは気づかなかった。しかし――――
「どうした、エイム?」とユウトは振り向く。
背中に憑りついているかのようにぶら下がっているエイムが彼の兜を叩いたのだ。
「失礼ながらご主人さまは、女性の気持ちがわかっていません! 女性というものは、いつだって慕っている男性の元に駆けつけて……もぐもぐ!?」
最後まで言葉にならなかったのは、メイヴが慌てた様子でエイムの口を塞いだからだ。
「だ、大丈夫か? エイムって、エルフ族にとって信仰対象って話だったと思うけど?」
「はっ! つい慌てて! し、失礼いたしました」と正気になったように彼女はエイムから離れた。
「そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。特に、ご主人さまの親しい方なら」とエイムはニッコリと笑みを見せた。
「そう言えば、装備の話だけど、メイヴは前衛の魔法剣士だったと思うけど、思っていたよりも軽装だな」
確かにメイヴの装備は軽装だった。
兜どころか、頭部を守る武装はなし。 胴体も胸部を保護する程度の鎧だった。
マントもユウトのそれと違って薄い。
背後を防御するためのマントではなく、強い日光に弱いエルフの白肌を守る目的ではないか? そう思ってしまうほどの軽装だった。
「うむ、私の場合は回避職ですから。それに、致命傷を受けても、回復薬を飲み続けれる限り戦い続けるわけです」
「なるほど、そういう考えもあるのか……」とユウトは全身武装の自分を確認した。
(まぁ、俺はこれで良いか。正直に言うと、これがカッコいいと思ってる)
「うんうん」と納得するようにユウトは頷いた。
「装備と言えば……エイム、本当についてくるつもりか?」
今日はダンジョンだ。 それも、異変が起きたダンジョン。
ミカエルたちA級冒険者の集団ですら瓦解して破れている。
「何が起きるかわからない。相当、危険な事になるんだぞ?」
「何度も言っていますが、わたしはご主人さまと何年も一緒に冒険をしてきたじゃありませんか?」
「そうですよ。どうして、今さらユウトは気にしているのですか?」とメイヴもエイムと同じように首を傾げる。
エルフ独特の価値観だろうか?
「でもなぁ……」と納得できないユウトだ。
「わたしの姿が人間に見えているのは、ご主人さまたちだけですよ。実体のわたしは、杖としてご主人さまの背後に装備されている状態なのです」
ユウトは戦闘中に、魔物からの攻撃で地面に叩きつけられたり、避けるために転がったりする。 背中にしがみ付かれると危険な感じがするのだ。
「私の重さは感じないと思うのですが、心理的要因でやり難さを感じるのなら慣れてもらわないといけませんね」
そんな会話を交えていると、ダンジョンの入り口に到着した。
ダンジョン名 『炎氷の地下牢』
本来なら、高難易度の部類されるダンジョン。 と言っても、A級冒険者なら攻略できるほどの難易度だ。
しかし、今の難易度は不明――――もはや、別ダンジョン。
未知の迷宮に等しい。
「では行きますか、ユウト?」とメイヴは微笑んだ。
「? いや、待てくれ。お前の仲間は? 待たないのか?」と辺りを見渡す。
ユウトは、メイヴの仲間として、ダンジョンに行く話になった。
だが、到着してみると彼女の仲間らしい人物がいない。
(他の冒険者に突入準備をしている者や、補助として後方支援に徹する冒険者はいるが……)
その疑問にメイヴは当然の如く――――
「私たちの仲間は単独行動が基本ですね。目的地は同じなので、主の部屋の前で待ち合わせるのが決まりです」
「――――なッ!」とユウトは絶句した。 自分がA級冒険者として仲間たちと連携して進んだダンジョンを各々が1人で主の直前まで攻略していく。
「……それがS級冒険者か」と呟く。 しかし、彼が驚くのはダンジョンに入ってからだ。