「もう気づいている者もいるじゃろう。ダンジョンに異変が起きておる。
魔物どもが異常な強さを手にしておる。それだけではなく、ダンジョンの主が2匹同時に出現した場合も把握した」
冒険者たちは、大きくざわめく。
この中には初心者も入る。それに生活のためだけに決まった場所で素材の採取している者もいる。
ダンジョンの力関係が変われば、安定した報酬は得られない。
初心者たちも、比較的安全なダンジョンで経験を積むこともできなくなるだろう。
「――――鎮まれ!」とギルドマスターは杖で床を叩いた。
「貴様らも、不安はあるじゃろう。緊急なダンジョンの調査も必要になるじゃろう……しかし、今は不安定なダンジョンに閉ざされ、帰還できない者もいる。諸君らには救出に向かってもらいたい」
「ここへ」とギルドマスターは呼び寄せた。2人の冒険者がギルドマスターの横に立つ。
その姿にユウトは――――
「まさか」と呟く。
かつての仲間であった。
『剣聖』ケイデン・ライト
『大神官』 エリザ・ホワイト
しかし、仲間であったユウトですら、信じられないほどにボロボロの姿になっていた。
「知ってる者も多いみたいじゃなぁ」とギルドマスターは続けた。
「彼等は『聖戦士』ミカエルを代表とした冒険者たち。しかし、ミカエル本人を含めて3人が取り残されて脱出できない状態である。諸君らには彼等を救出に向かってもらいたい」
その言葉に冒険者たちは動揺を見せた。多くはギルドマスターの言葉に逆らうものだった。
「ミカエル……A級冒険者だろ? 何があったら、脱出不可能な状態まで追い込まれるだろ?」
「救出するならS級冒険者じゃないと危険すぎる。俺たちは抜けさせてもらうぜ」
「行きたい奴らだけ行けばいいだろ? 元貴族さまだから媚びてた連中も多かったはずだぜ?」
再びギルドマスターは杖で地面を叩く。 しかし、ミカエルに良い印象を持っていなかった彼等の声は止まらない。 だから――――
「……鎮まれと言っているじゃろ」
静かに怒気を込められたギルドマスターの声。 いや、声だけではない。
体が震えるほどの怒りは殺意となり、膨大な魔力が漏れている。
一瞬で冒険者たちは口を閉じた。
「これは冒険者ギルドからの依頼ではない。
繰り返すぞ、ミカエル救出は依頼ではない。これは――――強制指令になる」
冒険者ギルドが発動する強制指令
これに冒険者たちは拒否権はない。
免除される者は、
遠征に出ている者 怪我や病気で復帰できない者
この2種類くらいだろうか? 場合によっては、引退した元冒険者すら参加させられることすらある。
それほどに冒険者ギルドが有する『強制指令』の力は強い。
「うむ、ようやく話を聞く覚悟ができたか……それでは、ミカエルたちがどういう状況か説明を聞け。できるな、ケイデン? エリザ?」
2人は頷いて、ギルドマスターの前に立った。
説明は始めたのは、意外な事にケイデンだった。
ユウトですら、彼が喋っているのを見るのは久しぶりだった。
無口な彼が、これだけの人前で喋るのは初めてではないか?
「今、ミカエルたちが閉じ込められているダンジョンは、東にあるダンジョン――――通称『炎氷の地下牢』だ」
淡々と話すケイデンに質問の手が上がった。
「そこは、確かに高難易度の場所。しかし、ミカエルたちはA級冒険者のはず、実力的には苦戦しないはずだ。何が起きた?」
「俺たちは新しい仲間を入れたため、新体制の実戦練習として『炎氷の地下牢』を選択した。そこで主であるキング・ヒュドラと遭遇した」
「……遭遇した? それは、どういう意味だ? キング・ヒュドラは主、ダンジョンの奥にいるはずだ」
「我々がキング・ヒュドラと遭遇したのはダンジョンの序盤だ。奴は逃げていたのだ、新しい主に追いかけまわされてな!」
「────っ!?」と声にならない声が聞こえてくる。
冒険者として聞き逃せない事が2つあった。
ダンジョンの原則として、
ダンジョンの主は奥に鎮座している。
ダンジョンの主は1つのダンジョンに1匹のみ出現する。
事前に、ギルドマスターから、それらしき言葉は出ていたとは言え────
彼の言葉は、その原則が崩れた事をが事実であると示していた。 しかし、それだけでは終わらなかった。
「諸君らの動揺はわかる。しかし、今は俺たちの頭目であるミカエル救出に尽力してくれ」
「頼む」とケイデンは頭は深く下げると、控えていたエリザも頭を下げた。
魔物どもが異常な強さを手にしておる。それだけではなく、ダンジョンの主が2匹同時に出現した場合も把握した」
冒険者たちは、大きくざわめく。
この中には初心者も入る。それに生活のためだけに決まった場所で素材の採取している者もいる。
ダンジョンの力関係が変われば、安定した報酬は得られない。
初心者たちも、比較的安全なダンジョンで経験を積むこともできなくなるだろう。
「――――鎮まれ!」とギルドマスターは杖で床を叩いた。
「貴様らも、不安はあるじゃろう。緊急なダンジョンの調査も必要になるじゃろう……しかし、今は不安定なダンジョンに閉ざされ、帰還できない者もいる。諸君らには救出に向かってもらいたい」
「ここへ」とギルドマスターは呼び寄せた。2人の冒険者がギルドマスターの横に立つ。
その姿にユウトは――――
「まさか」と呟く。
かつての仲間であった。
『剣聖』ケイデン・ライト
『大神官』 エリザ・ホワイト
しかし、仲間であったユウトですら、信じられないほどにボロボロの姿になっていた。
「知ってる者も多いみたいじゃなぁ」とギルドマスターは続けた。
「彼等は『聖戦士』ミカエルを代表とした冒険者たち。しかし、ミカエル本人を含めて3人が取り残されて脱出できない状態である。諸君らには彼等を救出に向かってもらいたい」
その言葉に冒険者たちは動揺を見せた。多くはギルドマスターの言葉に逆らうものだった。
「ミカエル……A級冒険者だろ? 何があったら、脱出不可能な状態まで追い込まれるだろ?」
「救出するならS級冒険者じゃないと危険すぎる。俺たちは抜けさせてもらうぜ」
「行きたい奴らだけ行けばいいだろ? 元貴族さまだから媚びてた連中も多かったはずだぜ?」
再びギルドマスターは杖で地面を叩く。 しかし、ミカエルに良い印象を持っていなかった彼等の声は止まらない。 だから――――
「……鎮まれと言っているじゃろ」
静かに怒気を込められたギルドマスターの声。 いや、声だけではない。
体が震えるほどの怒りは殺意となり、膨大な魔力が漏れている。
一瞬で冒険者たちは口を閉じた。
「これは冒険者ギルドからの依頼ではない。
繰り返すぞ、ミカエル救出は依頼ではない。これは――――強制指令になる」
冒険者ギルドが発動する強制指令
これに冒険者たちは拒否権はない。
免除される者は、
遠征に出ている者 怪我や病気で復帰できない者
この2種類くらいだろうか? 場合によっては、引退した元冒険者すら参加させられることすらある。
それほどに冒険者ギルドが有する『強制指令』の力は強い。
「うむ、ようやく話を聞く覚悟ができたか……それでは、ミカエルたちがどういう状況か説明を聞け。できるな、ケイデン? エリザ?」
2人は頷いて、ギルドマスターの前に立った。
説明は始めたのは、意外な事にケイデンだった。
ユウトですら、彼が喋っているのを見るのは久しぶりだった。
無口な彼が、これだけの人前で喋るのは初めてではないか?
「今、ミカエルたちが閉じ込められているダンジョンは、東にあるダンジョン――――通称『炎氷の地下牢』だ」
淡々と話すケイデンに質問の手が上がった。
「そこは、確かに高難易度の場所。しかし、ミカエルたちはA級冒険者のはず、実力的には苦戦しないはずだ。何が起きた?」
「俺たちは新しい仲間を入れたため、新体制の実戦練習として『炎氷の地下牢』を選択した。そこで主であるキング・ヒュドラと遭遇した」
「……遭遇した? それは、どういう意味だ? キング・ヒュドラは主、ダンジョンの奥にいるはずだ」
「我々がキング・ヒュドラと遭遇したのはダンジョンの序盤だ。奴は逃げていたのだ、新しい主に追いかけまわされてな!」
「────っ!?」と声にならない声が聞こえてくる。
冒険者として聞き逃せない事が2つあった。
ダンジョンの原則として、
ダンジョンの主は奥に鎮座している。
ダンジョンの主は1つのダンジョンに1匹のみ出現する。
事前に、ギルドマスターから、それらしき言葉は出ていたとは言え────
彼の言葉は、その原則が崩れた事をが事実であると示していた。 しかし、それだけでは終わらなかった。
「諸君らの動揺はわかる。しかし、今は俺たちの頭目であるミカエル救出に尽力してくれ」
「頼む」とケイデンは頭は深く下げると、控えていたエリザも頭を下げた。