ダンジョンの最奥には、ダンジョンの主がいる。
主が倒されたダンジョンでは、内部に住まう魔物たちも沈静化する。
しかし、時間と共に新たな主が生まれる。 それが元居た主を倒してから2、3日後になるか? 数か月、あるいは年単位になるのか? その規則性はわかっていない。
「――――とは言え、主を倒した直後に、新しい主が誕生するなんて話は聞いた事がない」
ユウトは、先ほどまで戦っていた幽霊騎士が消滅した場所を見る。
「あの強さで主じゃなかったのか? あるいは、例外的な要因で無類の強さを発揮していたのか?」
彼は幽霊騎士との戦いを思いでした。
(確かに違和感はあった。アイツは弓兵……前衛の魔物を召喚する魔道具を持っていたのは妙な気がする)
経験上、魔物を召喚する魔物は共通点がある。
人でありながら外法に落ちて魔物になった魔法使い。
捕えた魔法使いを吸収して、知恵と魔力を手に入れた魔物。
あるいは、何らかの要因で魔法使いの力を再現してたもの……
(弓兵が、前衛で足止めをして遠距離攻撃を行う。それはまるで、冒険者の戦い方じゃないか……そのな知恵と力を幽霊騎士に与えた存在が、このダンジョンの主だとすると――――)
「嫌な予感がする。けど、ここで引き返す選択肢はない」
ここの地形を確認する。ここは、弓兵が陣取るには相応しい広い空間。
探せば、隠し通路や隠し部屋があるかもしれない。
ユウトは迷わず探索魔法を使用した。 空間に広がる彼の魔力は、蝙蝠の超音波のように跳ね返り、周辺の異変を知らせる。
「本当にあるのかよ……隠し通路」と壁に近づいて、杖で叩く。
「なるほど、ダンジョン入口を隠していた隠蔽魔法と同質の物か。魔法に深く精通した者以外は拒む仕掛けになっているのか」
冒険者にとって、己のカンを信じるものだ。
なぜなら、嫌な予感とは、培った経験則や観測眼から来るもの――――自身でも言語化できない警告そのものだ。
しかし――――
『冒険せずとて、何が冒険者か?』
冒険者ギルドの広間に飾られた書を思い出した。
だから、ユウトは自然と歩を進めるのだ。 危険だと分かり切った場所に――――
隠し通路を進む。その最奥は意外と近かった。
静かに通路の先へ顔の覗かせると――――
「闘技場? こんな場所に?」
多くの観客席。 数百? 数千人は座れる多さだ。
全ての観客が見えるように計算されている大きな道。
いわゆる花道――――これから戦う戦士が通る道だ。
そして2つの道が重なる場所に、砂を均された地面。
奇妙な事に、闘技場の真ん中に――――
「人がいる? それも――――女性か?」
彼の言う通り、女性がいた。美しい女性だ。
両膝を地面に突いて、祈っているように見える。
もちろん、このような場所に普通の女性がいるはずはない。 罠――――それ以外あり得ない。
彼女の瞳が開く。 それと同時に、瞳は隠れているユウトを捉えた。
「――――ッ!(間違い。この圧力――――女性に化けているコイツがダンジョンの主だ)」
しかし、謎の女性はユウトに向かって深々と頭を下げた。
「ようこそおいでになされました。こちらにおいでください」
もしも、魔物が化けているなら、相当に知能が高い魔物なのだろう。
この場所でなければ、高級な施設で接客を担当してる女性で通じる。
ユウトは動揺する。
(どうする? このまま、出ていくか? それとも――――)
「攻撃は止めておいた方がよろしいかと」
まるで心を読まれたような感覚だった。 奇襲をする気は失われた。
「けど――――」と彼は杖を手にした。
「あえて、攻撃させてもらうぜ! 『炎剣』」
炎の魔法が彼女に直撃する。しかし――――いや、想像通りと言うべきか?
「無傷。この程度の攻撃は通用しないってわけか?」
ユウトの言う通り、女性は無傷だった。
それどころか、衣服に焦げすら入っていない。どういう仕掛けだろうか?
「攻撃するためには条件があります。この闘技場に入っていただけなければ私を痛めつける事は叶わないでしょう」
「不可視の結界魔法か。しかし……ここまで結界が張られている事に気づかせないとは」
「その技術、知りたくはありませんか? 例えは、こういった物にご興味はありませんか?」
気づけば、彼女の手の中に本が握られていた。
隠し持っていた様子もなければ、服に収納できる箇所もなし。
もはや、そんな程度で驚くこともなくなったユウトであったが――――その本は別だった。
「魔導書……それも初めて見る年代のもの」
「流石、有資格者さま。ご理解は早うございます。こちらの品は、およそ1000年前の品物となっております」
「1000年前!? まさか暗黒期の!」
それは魔法の黎明期。 まだ、未知の技術である魔法を使わう者を断罪することが当然だった時代。
魔法を生み出したと言われる何人もの天才たちがギロチンの露と消えた。
だから、こそ――――その時代の魔導書は、貴重であり、過激であり、血と怨念が染み込んでいる。
魔法使いならば、魔物の罠と分かっていても……
読みたいという欲望を抑えきれないほどに……
主が倒されたダンジョンでは、内部に住まう魔物たちも沈静化する。
しかし、時間と共に新たな主が生まれる。 それが元居た主を倒してから2、3日後になるか? 数か月、あるいは年単位になるのか? その規則性はわかっていない。
「――――とは言え、主を倒した直後に、新しい主が誕生するなんて話は聞いた事がない」
ユウトは、先ほどまで戦っていた幽霊騎士が消滅した場所を見る。
「あの強さで主じゃなかったのか? あるいは、例外的な要因で無類の強さを発揮していたのか?」
彼は幽霊騎士との戦いを思いでした。
(確かに違和感はあった。アイツは弓兵……前衛の魔物を召喚する魔道具を持っていたのは妙な気がする)
経験上、魔物を召喚する魔物は共通点がある。
人でありながら外法に落ちて魔物になった魔法使い。
捕えた魔法使いを吸収して、知恵と魔力を手に入れた魔物。
あるいは、何らかの要因で魔法使いの力を再現してたもの……
(弓兵が、前衛で足止めをして遠距離攻撃を行う。それはまるで、冒険者の戦い方じゃないか……そのな知恵と力を幽霊騎士に与えた存在が、このダンジョンの主だとすると――――)
「嫌な予感がする。けど、ここで引き返す選択肢はない」
ここの地形を確認する。ここは、弓兵が陣取るには相応しい広い空間。
探せば、隠し通路や隠し部屋があるかもしれない。
ユウトは迷わず探索魔法を使用した。 空間に広がる彼の魔力は、蝙蝠の超音波のように跳ね返り、周辺の異変を知らせる。
「本当にあるのかよ……隠し通路」と壁に近づいて、杖で叩く。
「なるほど、ダンジョン入口を隠していた隠蔽魔法と同質の物か。魔法に深く精通した者以外は拒む仕掛けになっているのか」
冒険者にとって、己のカンを信じるものだ。
なぜなら、嫌な予感とは、培った経験則や観測眼から来るもの――――自身でも言語化できない警告そのものだ。
しかし――――
『冒険せずとて、何が冒険者か?』
冒険者ギルドの広間に飾られた書を思い出した。
だから、ユウトは自然と歩を進めるのだ。 危険だと分かり切った場所に――――
隠し通路を進む。その最奥は意外と近かった。
静かに通路の先へ顔の覗かせると――――
「闘技場? こんな場所に?」
多くの観客席。 数百? 数千人は座れる多さだ。
全ての観客が見えるように計算されている大きな道。
いわゆる花道――――これから戦う戦士が通る道だ。
そして2つの道が重なる場所に、砂を均された地面。
奇妙な事に、闘技場の真ん中に――――
「人がいる? それも――――女性か?」
彼の言う通り、女性がいた。美しい女性だ。
両膝を地面に突いて、祈っているように見える。
もちろん、このような場所に普通の女性がいるはずはない。 罠――――それ以外あり得ない。
彼女の瞳が開く。 それと同時に、瞳は隠れているユウトを捉えた。
「――――ッ!(間違い。この圧力――――女性に化けているコイツがダンジョンの主だ)」
しかし、謎の女性はユウトに向かって深々と頭を下げた。
「ようこそおいでになされました。こちらにおいでください」
もしも、魔物が化けているなら、相当に知能が高い魔物なのだろう。
この場所でなければ、高級な施設で接客を担当してる女性で通じる。
ユウトは動揺する。
(どうする? このまま、出ていくか? それとも――――)
「攻撃は止めておいた方がよろしいかと」
まるで心を読まれたような感覚だった。 奇襲をする気は失われた。
「けど――――」と彼は杖を手にした。
「あえて、攻撃させてもらうぜ! 『炎剣』」
炎の魔法が彼女に直撃する。しかし――――いや、想像通りと言うべきか?
「無傷。この程度の攻撃は通用しないってわけか?」
ユウトの言う通り、女性は無傷だった。
それどころか、衣服に焦げすら入っていない。どういう仕掛けだろうか?
「攻撃するためには条件があります。この闘技場に入っていただけなければ私を痛めつける事は叶わないでしょう」
「不可視の結界魔法か。しかし……ここまで結界が張られている事に気づかせないとは」
「その技術、知りたくはありませんか? 例えは、こういった物にご興味はありませんか?」
気づけば、彼女の手の中に本が握られていた。
隠し持っていた様子もなければ、服に収納できる箇所もなし。
もはや、そんな程度で驚くこともなくなったユウトであったが――――その本は別だった。
「魔導書……それも初めて見る年代のもの」
「流石、有資格者さま。ご理解は早うございます。こちらの品は、およそ1000年前の品物となっております」
「1000年前!? まさか暗黒期の!」
それは魔法の黎明期。 まだ、未知の技術である魔法を使わう者を断罪することが当然だった時代。
魔法を生み出したと言われる何人もの天才たちがギロチンの露と消えた。
だから、こそ――――その時代の魔導書は、貴重であり、過激であり、血と怨念が染み込んでいる。
魔法使いならば、魔物の罠と分かっていても……
読みたいという欲望を抑えきれないほどに……